ナタリー PowerPush - Crustacea×茅原実里
大先生&みのりん コラボの歴史
室屋光一郎(Violin)、向井航(Cello)、阿部篤志(Piano)の3人からなるインストゥルメンタルユニット「Crustacea(クラスタシア)」が、茅原実里の楽曲をカバーしたアルバム「Unification」シリーズの第3弾「Unification3 Melody feat. Minori Chihara」を完成させた。
室屋は2007年1月に発売された茅原の歌手活動再開シングル「純白サンクチュアリィ」への参加以降、彼女の作品やライブステージにおいて欠かせない存在となっており、ファンからも愛称である“大先生”の名で親しまれるほど。今回のインタビューでは室屋と茅原の2人に、出会った当時のエピソードから今作のレコーディング秘話まで幅広く話を訊いた。
取材・文 / 臼杵成晃 インタビュー撮影 / 上山陽介
似顔絵を描いてもらったり
──お2人の共演は茅原さんのランティス第1弾シングル「純白サンクチュアリィ」(2007年1月発売)が最初かと思いますが、これはどのようなきっかけで?
室屋光一郎 このときはレコーディングのお仕事のひとつ、という感じでしたね。
茅原実里 質問でーす! 大先生(室屋の愛称)はランティスさんとずっとお仕事されてたんですか?
室屋 やってましたね。だからきっとその流れで話が来たんじゃないかと。
──そのときのレコーディングの様子は覚えてますか?
室屋 覚えてますよ。「純白」を作曲した菊田(大介)くんは今でこそ茅原さんのシングルでは表題曲をたくさん書いてますけど、これは本当に初期の曲で、彼はそのとき弦を録るのが初めてだったんです。プロデューサーの斎藤(滋)さんに手ほどきを受けながらのレコーディングみたいな。
茅原 私、レコーディングで大先生に会ったのを覚えているのですが……「純白」のときは私いました?
室屋 後ろにチョコンといた気がするよ。定かではないけど。
茅原 そうかなあ。……覚えてるのはそんなボヤッとしてる感じなんですけど(笑)。でもそこから大先生にはいっぱいお世話になっていて。レコーディングも数えきれないほど関わってくださってますもんね。
室屋 そうだね。似顔絵を描いてもらったりもしたね。
──似顔絵?
茅原 レコーディングの最中に大先生の似顔絵を描いたんですけど、すごい上手だったよね?
室屋 ある意味あの似顔絵を描いてくれたから「あ、この子が茅原さんだ」って認識できたというか(笑)。
譜面のページ数が極端に多い
──室屋さんはいろんなアーティストの楽曲に参加されていますけど、茅原さんの楽曲をほかと比べたときに違いはありますか?
室屋 (即答で)やたら難しい、展開が多い、譜面のページ数が極端に多い(笑)。
茅原 あはははは(笑)。すいません。
室屋 音数もテンポも、とにかく全部が大変。そんな印象でしたね、最初は。
──では茅原さんの、ほかの方とは違うボーカルとしての魅力を挙げるとしたら?
茅原 あるの?
室屋 うーん……なんとなく、考えていそうで考えていないところ。
茅原 なにそれー!
室屋 なんだろう、歌うときのカッコつけ方とかが素直な感じがするんですよ。そのまんまな感じが強いというか、昔「歌手になりたい!」って強く願っていた女の子そのまんまで歌ってる感じというか。つまり表現力が……。
茅原 ない?
室屋 違う違う(笑)。だけど今回のアルバムについては、そこをもう一段、いつもよりも深く掘り下げるしかなくなるようなものを作りたいと考えてましたね。
- ニューアルバム「Unification3 Melody feat. Minori Chihara」 / 2012年12月26日発売 / 3000円 Lantis LACA-15266
- ニューアルバム「Unification3 Melody feat. Minori Chihara」
収録曲
- TERMINATED
- Dream Wonder Formation
- Celestial Diva
- Melty tale storage
- 純白サンクチュアリィ
- Lush march!!
- everlasting...
- 蒼い孤島
- Say you?
- 枯れない花
Crustacea(くらすたしあ)
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校で出会った室屋光一郎(Violin)と向井航(Cello)が2006年に結成したインストゥルメンタルユニット。クラシックをベースとした新たなサウンドアプローチを得意とし、2006年6月に1stアルバム「偉大な芸術家への挑戦」、2009年9月にはアルバム「未だ降りつもる雪」を発表。のちに阿部篤志(Piano)を迎えた3人編成となった。室屋は声優アーティスト茅原実里の作品やライブにも多く参加しており、2010年4月には茅原の楽曲をCrustaceaがカバーしたアルバム「Unification ~Melody from Minori Chihara~」、2011年2月にはその第2弾「Unification2 Melody from Minori Chihara~nostalgia~」を発表。2012年12月26日にリリースされた第3弾アルバム「Unification3 feat. Minori Chihara」には茅原本人もボーカリストとして参加している。
茅原実里(ちはらみのり)
2004年4月にテレビアニメ「天上天下」棗亜夜役で声優としての活動を始め、同年12月にはアルバム「HEROINE」で歌手デビュー。2006年4月より放送されたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門有希役で一躍注目を浴び、平野綾、後藤邑子と共に歌った同アニメのエンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」は大ヒットによりゴールドディスクに認定された。2007年1月にはLantisより発売されたシングル「純白サンクチュアリィ」を契機に、本人名義による音楽活動を再開。以降、アニメソングを中心とした楽曲を数多く発表し、声優アーティストとして高い評価を集める。2010年5月には初の日本武道館ワンマンライブを大成功に収め、2011年3月には「第5回声優アワード」歌唱賞を受賞した。2012年2月にはアルバム「D-Formation」を発表。10月24日にシングル「SELF PRODUCER」をリリースした。2004年にオープンしたオフィシャルブログ「minorhythm(ミノリズム)」は、現在までほぼ休むことなく毎日更新中。