Koiちゃんのシャウトがテレビから聞こえる
──「Dead or Alive」は、タイアップの話を聞いたときどんな心境でしたか?
Teru 「『ONE PIECE』とのコラボや!」って、めっちゃテンション上がりました。この正月に、「Dead or Alive」が使われたCMが地上波でもちょっと流れたんですよ。俺も普通にテレビを観ていたら、Koiちゃんのシャウトがテレビから聞こえてきて「やべえ!」みたいな、やってやった感がありましたね(笑)。シャウトが地上波のCMで流れるのは、バリ熱いよな。
Koie そうやな。
Teru しかも、その人気投票の動画を作っているチームがHelixesという会社で、俺たちのミュージックビデオも作ってくれたことがある昔からの知り合いで。「ONE PIECE」ってあまりにもデカすぎるんで、場合によってはマイナスに捉える俺らのファンもいるかもしれないと思いましたけど、Hellixesが制作するというある種の信頼もあったし、映像と俺たちの音もしっかりかけ算になっていましたね。
──「ONE PIECE」という前提がありながらも、曲が始まった瞬間に「いつものCrossfaithだ!」と安心するという。
Kazuki そこでCrossfaithらしさがなくなると、コラボする意味がなくなっちゃうので。どこまでやれるかみたいなところも探りつつ、楽しみながらやれました。
Teru しかもさ、俺らってメンバーやほかのバンド仲間が大切やし、ライブで大暴れするし、ステージ上でも酒を飲み散らかすし。
Kazuki やってることは海賊やんな(笑)。
──世界を股にかけて旅しているところも一緒ですし。
Teru 本当ですね(笑)。作品の大ファンでもあるし、俺ら自身と共鳴する部分もたくさんあるんじゃないかなと思うんです。
Kazuki 「ONE PIECE」の登場人物の多くはめちゃくちゃピュアで前向き、目標に向かってひたすら進んでいくじゃないですか。今はバンド活動がなかなかできないとか暗いムードがある中で、そういうキャラクターたちの自分らの目標に対してがっつり進んでいくぞという意思がすごく刺さって。このタイミングだからよりよかったなというのはありましたね。
海賊もバンドも一緒
──「Dead or Alive」というタイトルにはどういう思いが込められているんですか?
Koie 「ONE PIECE」に出てくる“指名手配書”に書かれた文言からとりました。あとは先方からの「『ONE PIECE』のバトルという側面を意識して楽曲を制作してほしい」という要望があったので、戦いを通してつなぐ仲間との絆をすごく重視していて。暗闇でも背中を預けられる仲間が俺たちにはいるという意味では海賊もバンドも一緒で、俺自身も自分1人だけじゃ前に進めないけど、助けてくれる仲間がいればどんどん前に進んでいける。いろんなものを背負っているからこそ責任が生まれてくるし、背負っているからには立ち止まることはできない。「自分らしさを証明するために生身で生きろ」みたいなポジティブなメッセージも込めてタイトルを付けました。
──2曲ともバトルをモチーフにしつつも、そこだけでは語りきれない深さがあると。この曲で初めてCrossfaithに触れた各タイトルのファンにも響くものがありそうですね。
Teru ああ、絶対にいますよね。
Kazuki のちのち、ライブにも来てもらいたいですよね。
──このシングルはCrossfaithにとって新たなチャレンジであると同時に、今まで出会わなかった人たちにも届く新たな扉にもなりそうですね。
Teru そうなったら最高ですね。
Koie 「ガンダム」や「ONE PIECE」に携わる方にとっては、俺たちCrossfaithを選んだことは勇気ある決断だったと思うんです。個人的には今回のタイアップは俺たちが着実に活動を重ねてきたからこそ身を結んだところもあると思っていて、同じように日本のメインストリームではない音楽と共鳴するような作品との面白いコラボレーションがどんどん増えていけば、今の音楽業界がもっと面白くなるんじゃないかと思います。
Teru で、このシングルで初めてCrossfaithに触れた人が、去年の8月にやった配信ライブ「SPECIES VIRTUAL WORLD TOUR - OPEN THE DIMENSIONS」の映像(「RedZone / Dead or Alive」に付属するDVDに収録)を観て既成概念をぶっ壊されてくれたら、それこそライブタイトルの“OPEN THE DIMENSIONS”みたいに新たな扉を開くきっかけになるんじゃないかなと思っています。
Teru 「OPEN THE DIMENSIONS」は俺らにとっても本当に特別なライブになりました。
Kazuki 練りに練ったしね。
Teru 向き合ってライブしたしな。
Koie 普通のライブだったら入れないような曲もセットリストに含んだりと、だいぶこだわっていて。「RedZone」や「Dead or Alive」で新しくCrossfaithを知った人が観たら、「何事や!」と驚くと思いますよ(笑)。
Kazuki やっぱり「配信しかできないことってなんやろう?」と考えたし、有観客ライブができひんからしょうがなく配信ライブをする、ということにはしたくなくて。
Teru 「Endorphin」(2020年5月にリリースされた作品「SPECIES EP」の収録曲)のミュージックビデオに出演してくれたダンサーを呼んだり、「None of Your Business」(「SPECIES EP」の収録曲)ではJin Doggがライブハウスの前に車を付けて入場するみたいな、ああいう演出も配信じゃないとできないですし。プラットフォームもTOKYO SESSIONSという新しく立ち上げたところだったので、一緒にアイデアを出し合ってベストを尽くした感じです。
Kazuki そういう意味では、配信ライブというよりも映像作品という気持ちで向き合っていたのかもしれないですね。
──個人的には、Jin Doggさんが登場する場面から「None of Your Business」へと続くシーンはアガりました。
Teru 有観客ではまだ一緒にあの曲をやったことがなくて。本当だったら去年の夏、Jin Doggという異なるシーンの狂犬を日本のフェスにぶっ込みまくろうかなと思っていたんですよ。今年はできたらいいなって感じですね。
──初めて観た人はビビるでしょうね。
Koie デカいですからね。「なんか来た!」みたいな(笑)。
──それこそ「ガンダム」「ONE PIECE」を通じてCrossfaithを知った人には、衝撃以外の何ものでもないと思います。
Teru そうなんですよ。ちょっと劇薬かもしれないですけど。
──劇薬ほど中毒性が高いですから(笑)。
Teru 生半可なものじゃ変化が起きないですからね、何事も。
葛藤しているアーティストの手助けをしたい
──2021年もまだまだ難しい日々が続いていますが、Crossfaithはこの先、今の状況とどう向き合って活動していくのでしょうか。
Teru ちょうど今、「Endorphin」のリミックスコンテストを開催していて(参照:Crossfaithが「Endorphin」リミックスコンテスト開催「ルールはありません」)。バンドとしてはこれまでもリミックス作品を何枚か出しているんですが、「Endorphin」というハードテクノやダンスミュージックの影響が濃い楽曲でリミックス作品を募ってみたいという思いが以前からあったんです。それと、このコロナ禍でライブができなかったことで自分を見失ったり、ネガティブな思考になりがちだったけど、去年の年末にライブをしたときに「ここが俺の生きる場所なんだ!」と、当たり前だったものがこんなにも自分を形成していたんだってことに改めて気付かされて。もし俺と同じように葛藤しているアーティストがいたら手助けをしたいし、この状況下でしか生まれない芸術というのも絶対あると思うので、今直面しているネガティブなことは創造性で絶対に乗り切れるという意味も込めて、コンテストを開催しています。
──「Species Inc.」立ち上げを発表した際、「新たな価値を創造していき、その種を繁栄させる事を目的として立ち上げました」というコメントもあったように、才能あるアーティストと交流を深めることで“その種を繁栄させる”わけですね。
Teru まさにそうです。それに、俺たち自身も「Endorphin」のアナザーストーリーを聴かせてもらうことができるし、この記事を読んでいる方でDTMをやっている人はもちろん、やっていない人も新しく始めるきっかけになればいいなとも思うし。俺たちが「Endorphin」のためにレコーディングした音をサイトからダウンロードできて、「Endorphin」というプラモデルを好きなパーツを使って組み立てることができるので、そういう意味でも楽しめるんじゃないかな。説明書もルールもないので、感性のまま作ってほしいですね。
Koie あとは、Crossfaithは今年結成15周年を迎えるので、それに伴って何かできたらなと。徐々にですけどライブの規制も緩和されてきているので、何かしらのライブをしたいなと強く思っています。ライブというもの自体がみんなの日常から遠ざかっているけど、この状況下やからこそライブで感じられるものもあると思うので、今年はそういう場所を作って提供できるようにしたいですね。