ここでは音楽ナタリーでこれまでに紹介したCreepy Nutsの記事の中から、近年の重大ニュースをピックアップ。彼らに4つの出来事を振り返ってもらい、クリーピーのめざましい活躍を掘り下げていく。
──優勝後の反響はどうでした?
R-指定 これをきっかけに仕事の幅も増えましたね。何しろ世界王者ですから。しかし2019年の過密スケジュールの中でよう勝てたなと思いますね。
DJ 松永 今挑戦したら絶対無理だね。やっぱり「DMC」出る人って、みんな鬱っぽくなるんですよ。生活のすべてをターンテーブルに費やすんで。そういうメンタルや体力の部分と、仕事やライブは決まっているっていう時間的な制約、そしてもし負けたらクリーピーの看板を傷つけることになるというプレッシャーで、ジャパンファイナルの前は特に鬱っぽくなってましたね。
──「DMC」に出る人って、本戦前はみんな本当にナーバスになってますね。
DJ 松永 ターンテーブリズムって本当にしんどい作業なんですよ。途方もない時間を掛けてルーティンを作り、その後もひたすら反復練習。作ったルーティンが正解かどうかは誰にもわからないし、それでもそのルーティンを1人でターンテーブルに向かって研ぎ澄ましていかなきゃいけないのは、本当に出口の見えない迷路。しかもその結果大抵勝てない上に、また何度も挑み続けてしまうというループ。そりゃ病みますよ(笑)。
R-指定 クリエイトしたものを“研ぐ作業”ってめちゃめちゃ大変だと思うんですけど、それをほかの仕事をやりながらこなしていって、それで世界王者になったのは本当にすごいと思う。もともとDJがめちゃくちゃうまいってことはリスナーや音楽シーンの人らは知ってたと思うんですけど、ちゃんと実力で称号を得たことで、より多くの人にその実力が伝わったと思いますね。
DJ 松永 めちゃくちゃしんどかったですけど、ジャパンファイナルからワールドファイナルまでの1カ月は、人生の中で一番生きてるという実感がありましたね。今まではジャパンファイナルに出ても決勝で負けてたんで、「DMC」は呪いだったんです。でもその呪いが優勝したことで解けて、ワールドファイナルまでの期間はボーナスステージにずっといた感じですね。ぶっちぎりで「生きてる!」という感覚があったし、来年以降は「DMC」に挑戦しないとも決めてたから、この1カ月はもう人生の中で二度と訪れないんだなって、不思議な気持ちになりましたね。
R-指定 普通に松永さんの「DMC」談義とか聞きたいけどな。
DJ 松永 めっちゃしたい。DJ FUMMYやDJ YUTOを迎えたターンテーブリスト対談とかどうですか? ナタリーさん(笑)。
──「オールナイトニッポン」の公開収録が中野サンプラザホールで行われました。その舞台上でのZeebraさんに対する傍若無人なふるまいは、アルバムと同時にリリースされるDVD「Creepy Nutsのオールナイトニッポン0 『THE LIVE 2020』 ~改編突破 行くぜ HIP HOPPER~」をご覧いただければ。
DJ 松永 日本のヒップホップ史上、初のことばっかりやってますからね。中野サンプラザの舞台でイジられるZeebraさんの姿は、もうあのときしか観られないんじゃないかと思います。特に諸先輩方を無邪気にイジるっていうのは、あのラジオしか許されないんじゃないかなって。
──宇多丸さんが「オールナイトニッポン」に出演して、しかも歌うっていうのはやっぱり衝撃でしたね。
DJ 松永 あれは本人が歌いたいと言ったんですよ。歌いたい曲も俺たちが選んだのを断って、自分で「『桜坂』が歌いたい」と言い出したんだから。
R-指定 しかも「俺と福山雅治はほぼ同一人物だ」とか言い出して、最後は松山千春さんの「長い夜」を歌ってましたから。わけわからん(笑)。
DJ 松永 イカれてますよ(笑)。でも、日本のヒップホップシーンではZeebraさんやRHYMESTERからすると俺たちは孫世代だから、いろいろ許していただいいてるのもあるかもしれませんね。先輩方にいつも本当にご迷惑おかけしてます(笑)。
──「オールナイトニッポン」を始めたことによってファン層にも変化が起きたと思います。
R-指定 ヒップホップの楽しみ方も広げられたと思いますね。番組を通して、俺とか松永さん、俺の大阪の仲間である梅田サイファーのやつらが楽しんでるように、みんなにもヒップホップを楽しんでほしいって気持ちがあって。ヒップホップにはもちろんカッコいい部分やクールな部分があるんだけど、一方でファニーな側面も当然ある。そのファニーな側面は楽曲にも反映されたり、ラッパーやDJ自身から生まれたりもするんですよね。そういう部分をあえてピックアップすると“イジってる”って捉えられてしまうけど、やっぱり俺らにとって諸先輩方はその部分も含めてアイドルだし、その魅力を多くの人に伝えたいんですよね。
DJ 松永 それは今までは不可能だと思ってたんだけど、「オールナイトニッポン」っていう番組を通せば可能なんだなと思えてきてましたね。
「IPPONグランプリ」ゲストにCreepy Nuts、JO1、青山テルマ、Chuning Candy
記事を見る──「IPPONグランプリ」にゲストとして呼ばれるなんて、一流ミュージシャンの証ではないでしょうか?
DJ 松永 すごい話ですよね。
──本編ではカットされていましたが、「写真で一言」を急に振られたRくんは、ずいぶんとおスベりあそばされたようで。
R-指定 なんすか、その言い方! 悪意しかないわ(笑)。
DJ 松永 ただ、これは言っておきたいんですが、Rの回答は本当だったら10本中7本は入ってた。
R-指定 もうええて!
DJ 松永 素人が急に振られて7本取るって相当すごいじゃないですか。
R-指定 取ってないっちゅうねん。
DJ 松永 「写真で一言」って、お題の写真が出てから考える時間と答える時間の“間”が大切だと思うんですけど、その間をちゃんとRはつかむことができてたし、俺の中では「7票はいく!」と思いました。だから問題点があったとしたら、生々しかったんですよ。スベるわけでもなく、爆笑でもない、生々しい回答だったと(笑)。
R-指定 ああいうときは100でスベらんとな。
DJ 松永 だから「お! おお……」みたいな(笑)。
R-指定 ……新手のいじりか? それは。新手のいじりやったら手出るで(笑)。
DJ 松永 コンビ組んで初めての武力行使(笑)。あの日は収録後無視されたもんね。
R-指定 ははは! 落ち込みすぎて(笑)。
DJ 松永 Rには今まで2回無視されたことがあるんですよね。1回目は「FUJI ROCK」の本番前で、緊張しすぎて無視。2回目は「IPPONグランプリ」で落ち込みすぎて無視(笑)。
──あ、Rくんの顔がマジで険しくなってる……。もうこの話題は止めましょう(笑)。
「フリースタイルダンジョン」今夜放送で終了、約5年の歴史に幕
記事を見る──「フリースタイルダンジョン」が6月をもって約5年にわたる放送に幕を閉じました。Rくんは放送開始よりチャレンジャーの侵攻を阻止する“モンスター”として登場し、般若からラスボスを受け継いで2代目モンスターとしても参加しましたね。
R-指定 「終わってもうた」というより、「5年も続いたのがヤバない?」と思いますね。
──正直なところ、「フリースタイルバトルの番組がテレビで始まる」と聞いたときは、もって半年、早ければ3カ月かなと思いましたね。
R-指定 俺も企画について相談を受けたときは、これはどうなんやろう……とは思いました。だけどほかにモンスターとして参加する般若さん、漢 a.k.a. GAMIさん、サイプレス上野さん、T-Pablowっていうメンツ、そしてオーガナイザーとしてZeebraさんが関わることを聞いたときに、この船なら一緒に沈んでも悔いはないな、と思ったんですよね。ラップシーンの総力戦やと思ったし、そこに俺が呼んでもらえるなら、そんな光栄なことはないと。放送開始当時はまだメディアとラップの食い合わせは悪いと思ってたし、番組自体手探りで進んでいったと思うんですね。シーン的にも番組に対する毀誉褒貶があったし、どのぐらい続くか見当もつかなかったから、クリーピーとしても「ダンジョン」ブームが去ったあとの俺らについてつづった「未来予想図」という曲を作って。でも、その番組が5年間続いて、そこで基本的にはポジティブな波及効果を起こしたと思う。だから俺が言うのも変やけど、皆さん本当にようがんばったと思うし、思い出深い番組になりましたね。
ライブ情報
- One Man Tour 2020-2021(仮)
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2020年11月12日(木) 東京都 日本武道館
OPEN 18:00 / START 19:00
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2020年11月12日(木) 東京都 日本武道館