ナタリー PowerPush - クリープハイプ

2人はライバル!? 尾崎世界観×松居大悟対談

「映画公開されても全然モテねえ」

──ところで、尾崎さんは松居さんが監督された映画「アフロ田中」は観ましたか?

尾崎 はい。すごく良かったです。観る前はちょっと心配になったんですけどね、世間で知られてるマンガが原作だし。どういう気持ちで撮ったのか?みたいな話をしないまま観に行ったんですけど、松居くんの映画になってたというか、面白かったですね。映画っていろんな人が関わってるから、どこまでが監督の力かはわからないですけど。ただ映画って、映像がイマイチでも、役者の演技がイマイチでも監督のせいになるし。そういう責任を全部背負って、結果を出したっていうのは素晴らしいと思います。

──なるほど。個人的にはすごく男の子の映画だなって思ったんです。原作の雰囲気もちろんありますけど。

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松居 僕は女性が全く理解できないんで。

尾崎 理解しようとしてるの?

松居 理解しようとはしてるんですけどね、怖いんですよね……。

尾崎 (笑)。それ最初に会ったときにも言ってたよね、「女の人が怖い」って。

松居 だから、自分の生活範囲内でしか作品を作れなくて。結局そういう話になっちゃうというか。でも早くモテて、「男の子の作品」じゃないものも書けるようになりたい。

尾崎 このあいだも「映画公開されても全然モテねえ」って言ってましたよ(笑)。

松居 映画監督ってモテるって聞いてたんだけど……。

──でも、モテるって大事なモチベーションですよね。

尾崎 そうですよ、僕も……。

松居 モテたい?

尾崎 カッコいいと思われたくてやってますよ。だってさ、27にもなって必死でバンドなんてやらないですよ、普通。

──そうですか?

尾崎 やっぱり自分の価値を人に認めてもらいたいっていう気持ちは強いですね。ボーカルで、しかも曲を作ったりする人は特に。まあ、実際に松居くんよりはモテるかもしれない。

松居 おい! でも確かにカッコイイですよ、ライブ中の尾崎世界観は。

メジャーでもやりたいことをやらせてもらえた

──今回のクリープハイプのアルバムはメジャーレーベルからリリースされますが、尾崎さんはメジャーに対する思い入れは?

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尾崎 これまでメジャーに行けなかったし、メジャーな人に相手にされないし、すごいコンプレックスがあったんです。でも、前回出した「待ちくたびれて朝がくる」ってアルバムで開き直ることができて。それは自分の納得できる作品が作れて、ちゃんと聴いてくれる人も増えて、この環境で勝負していけるって確信が持てたからなんですけど……その矢先になぜか話がきたんですよ(笑)。

──メジャーレーベルに移ってみて変わったことはありましたか?

尾崎 うーん。特になんの規制もなく、一番やりたいことをやらせてもらったし。言葉が大事だったんで、そこに制限をかけられたら怖いなと思ってたけど、逆にちゃんと僕の言葉を守ってくれた上で作品を出させてくれたんで。クリープハイプをすごく理解してくれてるし。長くやってて良かったなっていうのはありますね。良くも悪くも音楽性が固まってたから、レーベルの人もそこを受け入れてくれたんだと思います。

──松居さんはいかがですか、今回のアルバムは。

松居 いや、その……最高だなと思って(笑)。

尾崎 感想なんか聞いたの初めてですよ。言わないから、この人。

松居 だから耳閉じといて! あのー……インディーズからメジャーに行ったバンドの音を聴いたときに「あー、うー」ってもどかしくなることがあるんですけど、このアルバムはすごく攻めてるし。1曲目の「愛の標識」が素晴らしいなと思って。「身も蓋もない水槽」の攻めてる感じも好きだし、ショートフィルムを作った「イノチミジカシコイセヨオトメ」も入ってて。僕、「チロルとポルノ」って曲が大好きなんだけど、それが最後に入ってるし。なんかすげえ売れる気がして……。

尾崎 フフフ。

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松居 いろんな人にちゃんと「良い」って言ってもらえると思うし、そう言ってる人は審美眼があるし、全然間違ってないと思って。あとはアガるけど泣こうと思ったら泣けるし、いろんな気持ちが含まれてるところが素敵だなと。聴いて救われるって思う人も絶対いるだろうし、楽しいなって思う人もいるだろうし、切なくなる人もいるだろうし。いろんな側面を持ってるのがいいと思いますね。

──しかも、過去の楽曲と新曲が混在しているのにまとまっていて。

尾崎 自分でもそこはびっくりしたんですけど。でも考えてみたら、10年ぐらい前から作りたい曲って変わってないんですよね。それしかできないし、ほかに興味もないし。だからこのアルバムを作ってすっきりしたというか、やっぱ今の方向でいいんだと思いました。

ニューアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」2012年4月18日発売 Victor Entertainment

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CD収録曲
  1. 愛の標識
  2. イノチミジカシコイセヨオトメ
  3. 手と手
  4. オレンジ
  5. バイト バイト バイト
  6. ミルクリスピー
  7. 身も蓋もない水槽
  8. ABCDC
  9. 火まつり
  10. 蜂蜜と風呂場
  11. チロルとポルノ
  12. exダーリン (初回ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
  • ショートフィルム『イノチミジカシコイセヨオトメ』
  • ミュージックビデオ『オレンジ』
クリープハイプ(くりーぷはいぷ)

尾崎世界観(Vo, G)、小川幸慈(G)、長谷川カオナシ(B)、小泉拓(Dr)の4人からなるロックバンド。2001年に結成され、2009年11月に小川、長谷川、小泉が正式メンバーとなり、精力的に活動を展開。2010年に発売した1stフルアルバム「踊り場から愛を込めて」がCDショップを中心に話題となり、一気に名前を全国区に広めた。2011年7月にミニアルバム「待ちくたびれて朝がくる」を発表し、同年10月の渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブはソールドアウトとなった。2012年4月にビクターエンタテインメント第1弾作品としてアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」をリリース。

松居大悟(まつい だいご)

1985年生まれ。慶應義塾大学入学とともに演劇サークル「創像工房 in front of.」に入団し、俳優として活動したのちに2006年に演劇ユニット「ゴジゲン」を旗揚げする。2009年にNHKドラマ「ふたつのスピカ」で脚本家デビューを飾り、その後、活動の幅を広げ、テレビドラマ、ラジオドラマ、短編映画などで脚本や監督を担当。2012年2月には映画「アフロ田中」で初めて長編映画の監督を務め、大きな注目を集めた。