08. The Spell of a Vanishing Loveliness
──「The Spell of a Vanishing Loveliness」では、Lushのミキ・ベレーニが歌詞を提供してデュエットしています。どういった経緯で彼女に頼むことになったんですか。
去年Lushが再結成して、そのときにリミックスを頼まれたんだけど、「じゃあ、僕もなんかお願いします」ってトレードでお願いしたんです。あと、彼女は僕の“はとこ”で。
──これまで親戚付き合いされてきたんですか。
ミキちゃんのお母さんはロスに住んでて、もともと仲良しでしょっちゅう会ってたんだけど、10年前に僕の父親が死ぬまでミキちゃんが親戚って知らなくて。Lushのことは知ってたから、わかったときはビックリ。それで「Sensuous」のツアーでイギリスに行ったときに彼女が観に来てくれて、そこで知り合った。それから彼女が日本に来たときは、一緒に遊んだりするようになって。
──女性の声が入ることで、アルバムのいいアクセントになってますね。
前作ではKings of Convenienceに歌ってもらったんだけど、アルバムがずっと同じ人の声だとちょっと飽きるかなと思って。最初はばっちり2人でデュエットしようかな、と思ったんだけど、ミキちゃんのソロパートがあったほうがいいかな、と思って、こういう割合に落ち着いた。
──彼女の声の魅力はどんなところですか?
フラットで素朴なとこかな。
──Lushのときとは、またちょっと違う雰囲気ですよね。
違うね。彼女もほどよく、おばさんになって……。
──メロウになって(笑)。
そう、メロウになって(笑)、いい感じのテンションになった。最近のLushを聴くと、こういう雰囲気の声もあるけどね。
09. The Rain Song ~ 10. Crepuscule
──「The Rain Song」はどういう経緯で生まれた曲ですか?
辻川くんがスペシャ(スペースシャワーTV)のジングルか何かの映像を作ることになって、それ用に「歌モノの曲を作って」って頼まれて。それで短いサイズの曲を作ったんだけど、そこに展開を加えて仕上げた曲。
──曲の最後のほうでキラキラした音が出てきますが、それが窓を叩く雨粒みたいな感じで効果的ですね。あれは何の音ですか?
あれはサンプラーに入ってた音。ハンマーダルシマー的な民族楽器で、弦がたくさん張ってあって、そこに物を落とすみたい。
──不思議な音ですね。夢の中で鳴ってるような。
聴いたことない音だよね。音が飛び跳ねてるみたいで、すごく気持ちいい。
──最後の曲「Crepuscule」はアコースティックギターの音色が美しいですね。
この曲にはエレピバージョンがあって。「Constellations Of Music」っていうコンピ(2015年発売)に入っている「Tokyo Twilight」っていう曲なんだけど、それをギターで弾いたのがこの曲。
──叙情的でメロウな味わいがありますね。
この曲のギタープレイに関しては、「メロディを弾く」というのがポイントだった。ちゃんとギターを弾こうと。まあ、自分がちゃんと演奏できるのはギターだけだけど(笑)。
──クレプスキュールというと、Pale FountainsやAntenaが在籍したベルギー・ブリュッセルのレーベル(Les Disques Du Crépuscule)を連想させます。
「Tokyo Twilight」って、クレプスキュールにいたバンドの曲名から取ってるんだよね。確かクレプスキュールのコンピに入ってたと思う。この曲名を考えるときに、“Twilight感”を出す言葉が何かないかな、と思って探してて。「Crepuscule」の意味を調べたら「夕暮れ」だったから、これでいいやと。
2050年にポルトガルの中古盤屋でこのアルバムを聴く“未来の人”へ
──なるほど。こうして通して聴くと、やはりメロディが前に出ている曲が多いですね。これまでは、曲作りの過程の最後にメロディを作っていたそうですが、今回もそうだったんでしょうか。
うん。メロディはあとだったね。
──メロディに対する意識やアプローチの仕方で、これまでと違ったことはありました?
線としての流れを意識したというのと、引っかかったり、詰まったり、伸ばしたりする譜割をわりと意識して作った。あんまりない譜割っていうか、「あなたがいるなら」の譜割とかはかなり独特だと思う。あと、メロディが発生しているところはほかの音がないとか、鳴っている音とハモってるとか、そういうことはやってるね。
──歌声も印象的でした。親密さがあって、感情というより空気感が伝わってくるような。歌入れに関して意識したことはありますか。
楽に歌える音域で楽に歌うっていうこと。あとは、機械でピッチとかリズムをある程度いじれるようになったんで、ニュアンスを重視して歌を入れることが楽にできるようになったのは大きいかも。
──リラックスして歌えるように環境作りをしたりはしましたか?
特に何も。ただ力を入れないで歌っただけ。
──最後にアートワークについて教えてください。銅板画家の中林忠良さんの作品が使われていますが、この方も親戚だとか。
叔父さんなんだけど、父親の妹の旦那さんだから血はつながってないんだよ。中林さんのことは子供の頃から知ってたけど、作品はちゃんと観たことなくて。それで、10年前に中林さんが芸大の先生を辞めたときに展覧会があって、それを観に行ったらすごくよくて。いつか何かに一緒にできたらいいなって思ってた。
──今回のアルバムのイメージと合っていた?
うん。中林さんの作品を見たときから、そのイメージが頭の中に残ってたんで、それに引っ張られたところもあるかも。
──中林さんの作品のどういったところに惹かれます?
夢と現実の間みたいなシュールな感じ。あと、モノクロなんだけど、異常に階層が深くてディテールが細かい。中林さんの作品はだいたい1960年代後半から70年代ぐらいの作品が多いけど、その時代の雰囲気がすごいあるんだよね。自分が子供の頃の記憶と重なったりもして。
──確かに不思議な懐かしさもありますね。レトロというより、時間を超越しているような。
うん。いつの時代かわからないし、どこの国かもわからない。何がなんだか全然わからない(笑)。もし、このアルバムのことを知らない人が中古盤屋で見つけたら、「一体どんな音楽なんだろう?」って思うよね。
──いつか“未来の人”が見つけるかもしれないと思うと楽しいですね。
そうそう。2050年くらいに、このアルバムがポルトガルの中古盤屋に流れ着いて、誰かが聴くかもしれない。
──で、聴いてみたら……。
意外とよかった、みたいな(笑)。だったりすると楽しいよね。
- Cornelius「Mellow Waves」
- 2017年6月28日発売 / ワーナーミュージック・ジャパン
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[CD]
3024円 / WPCL-12660
- 収録曲
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- あなたがいるなら [If You're Here]
- いつか / どこか [Sometime / Someplace]
- 未来の人へ [Dear Future Person]
- Surfing on Mind Wave pt 2
- 夢の中で [In a Dream]
- Helix/Spiral
- Mellow Yellow Feel
- The Spell of a Vanishing Loveliness
- The Rain Song
- Crépuscule
- Cornelius Mellow Waves Tour 2017
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- 2017年10月9日(月・祝)新潟県 新潟LOTS
- 2017年10月11日(水)宮城県 Rensa
- 2017年10月13日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年10月14日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年10月19日(木)香川県 高松festhalle
- 2017年10月21日(土)大阪府 なんばHatch
- 2017年10月22日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年10月25日(水)東京都 新木場STUDIO COAST
- 2017年10月26日(木)東京都 新木場STUDIO COAST
- 2017年10月28日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
- 2017年11月3日(金・祝)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2017年11月4日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- Cornelius(コーネリアス)
- 小山田圭吾によるソロユニット。1991年のフリッパーズ・ギター解散後、1993年からCornelius名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21カ国でリリースされ、バンドThe Cornelius Groupを率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「Sensuous」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広いフィールドで活動を続けている。2016年1月には、高橋幸宏、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井と共に結成したバンド・METAFIVEが初のアルバム「META」をリリース。2017年6月には、Corneliusとしての10年半ぶりのオリジナルアルバム「Mellow Waves」を発表した。