03. 未来の人へ
──「未来の人へ」の歌詞を坂本さんに依頼したのはどうしてなんですか。
坂本くんに合いそうだなと思って。で、自分で書くのは大変そうだなと(笑)。
──それはどういうところが?
こういうマイナー進行のメロディって、これまで作ったことがあんまりないんですよ。ちょっと、おセンチな感じというか。作ってはみたものの、自分でやるのはどうかな?と思って坂本くんに頼んだらバッチリだった。
──上がってきた歌詞について、どんな感想を持たれました?
中古盤屋に行く人の気持ちがすごい込められてるなって(笑)。中古盤を買うと、(ライナーやジャケットに記載されている曲目の)好きな曲に○が書かれていたりするでしょ。それを見てる感じがする。自分はもうこの世にいないんだけど、自分が売ったレコードをどこかの誰かが買って、「これ、いいなあ」って思いながら聴いてたりする。そういう曲だなって。
──中古レコードを通じて悠久の時の流れを感じている(笑)。サウンド面では何かポイントはありますか?
アルペジオっぽいミニマルなギターかな。全体的にはThe Smithsを意識してるんです。ジョニー・マーっぽい哀愁のメロディとか。でも、あまりThe Smithsっぽいって言われないんだよね。
──言われてみればって感じですね。坂本慎太郎 meets The Smithsっていうのがすごい。
坂本くん、The Smiths聴いてないかな? これまでThe Smithsの話はしたことがないけど、僕は大好きなんだよね。超リアルタイムだから。高校のとき、コピーバンドやってたし。
──そうなんですか。ということは、ジョニー・マーみたいなギターを弾いてた?
うん。「Hand in Glove」とかやってた。そういえば去年、モリッシーが日本に来てて。端っこだけど最前列の席が取れたから観に行ったら、その席までモリッシーが来て握手してくれたんだよね。生で「How Soon Is Now?」を聴きながら。もう大感動!
──その喜びも「未来の人へ」に入ってるわけですね。
すごい入ってる(笑)。モリッシーのライブって、最前列の真ん中へんで観てる人たちは世界中付いて回っている親衛隊なの。だから普段は親衛隊としか握手しないんだけど、その日は端っこまで来てくれて。
──「お、Corneliusだ!」って気付いてたりして。
いや、それはないでしょ。暗かったし、こっちのことなんて知らないよ、きっと。
04. Surfing on Mind Wave pt.2 ~ 05. 夢の中で
──でもモリッシーとCorneliusが握手したなんて貴重な瞬間ですね。で、話をアルバムに戻すと「Surfing on Mind Wave pt.2」は唯一のインスト曲ですね。
アルバムのタイトルが「Mellow Waves」に決まったときに、“Wave”って言うと波だから、グリッドも構成もなく常に動いている波のような曲がないといけないなって思って。そしたら「攻殻機動隊ARISE」のサントラに「Surfing on Mind Wave」っていう曲があったことを思い出して、「あ、あるじゃないか」と(笑)。そっちは攻殻の世界観だからダークな和音構成だったんだけど、それを明るくも暗くもないような和音構成にして、展開も変えてこの曲を作ったんです。
──人の声や海鳥の鳴き声、波の音なんかが入っていて、妄想のサーフミュージックみたいですね。
「Surfing on Mind Wave pt.2」はマインドトリップする曲だから、そこから次の「夢の中で」につながる流れもいいな、と思って。
──「夢の中で」の曲作りで意識したことはありますか。
この曲は「普通の曲を作ろう」というのがテーマ(笑)。それって、自分にとっては大きなテーマなんだよね。本当に普通の、よくある曲だと困るから、“普通だけどいい曲”にしなきゃいけない。そのへんのバランスが難しい。
──確かに曲の構成はスタンダードですね。
普通にAメロ、Bメロ、サビ、間奏みたいな。ドラムもキック、スネア、キック、スネアのパターンで、ちゃんとしたメロディがあって……っていう普通でいい曲にしようと思ってたんだけど、やっているうちに途中から何が普通かわからなくなってきて。結局変になってるかも(笑)。
06. Helix/Spiral ~ 07. Mellow Yellow Feel
──「Helix/Spiral」は、声にエフェクトをかけたり、フレーズが反復していく展開がテクノっぽくもあります。「Helix」と「Spiral」は、どちらも「螺旋」という意味ですね。
曲がループする感じが螺旋っぽいなと。あと、この2つの言葉は語呂が合うし、響きがミニマルっぽい。
──ここまでの曲と比べると異質な感じがします。
ちょっとこのあたりで場面を変えて……みたいなイメージ。曲の途中で波っぽい展開があったりするけどね。
──「Mellow Yellow Feel」は、アルバムの中でも古い曲ということですが、確かに「Sensuous」のときのサウンドに近いものがありますね。
そうだね。声をグラデーションで重ねてコーラスを作っていくやり方とかね。たぶん、salyu × salyuをやってた頃に作った曲だと思う。salyu × salyuで声を使ってやっていたことを、ここではギターを使ってやってる。ちょっとスティーヴ・ライヒ的な音作り。この曲を作り始めた頃、いつもビデオを作ってくれている辻川(幸一郎)くんに頼まれて、彼がEテレの番組用に作っている映像に、この曲のショートバージョンを使ったんだよね。それを膨らませてできた曲。
- Cornelius「Mellow Waves」
- 2017年6月28日発売 / ワーナーミュージック・ジャパン
-
[CD]
3024円 / WPCL-12660
- 収録曲
-
- あなたがいるなら [If You're Here]
- いつか / どこか [Sometime / Someplace]
- 未来の人へ [Dear Future Person]
- Surfing on Mind Wave pt 2
- 夢の中で [In a Dream]
- Helix/Spiral
- Mellow Yellow Feel
- The Spell of a Vanishing Loveliness
- The Rain Song
- Crépuscule
- Cornelius Mellow Waves Tour 2017
-
- 2017年10月9日(月・祝)新潟県 新潟LOTS
- 2017年10月11日(水)宮城県 Rensa
- 2017年10月13日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年10月14日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年10月19日(木)香川県 高松festhalle
- 2017年10月21日(土)大阪府 なんばHatch
- 2017年10月22日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年10月25日(水)東京都 新木場STUDIO COAST
- 2017年10月26日(木)東京都 新木場STUDIO COAST
- 2017年10月28日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
- 2017年11月3日(金・祝)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2017年11月4日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- Cornelius(コーネリアス)
- 小山田圭吾によるソロユニット。1991年のフリッパーズ・ギター解散後、1993年からCornelius名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21カ国でリリースされ、バンドThe Cornelius Groupを率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「Sensuous」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広いフィールドで活動を続けている。2016年1月には、高橋幸宏、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井と共に結成したバンド・METAFIVEが初のアルバム「META」をリリース。2017年6月には、Corneliusとしての10年半ぶりのオリジナルアルバム「Mellow Waves」を発表した。