音楽ナタリー Power Push - Cornelius
“頼まれ仕事”から浮き上がる小山田圭吾の本質
年取って声が低くなってきました
──「幽霊の気分で(Cornelius Mix)」(2013年)は、「攻殻機動隊」やsalyu×salyuで組んだ坂本慎太郎さんの曲です。
これはsalyu×salyuをやったあとぐらいかな。もともとサンレコ(サウンド&レコーディング・マガジン)の企画で作ったんですけど、僕が坂本くんに頼むことが多かったんで、やっと恩返しができてほっとしたという(笑)。坂本くんのボーカルを少なめにして、女性ボーカル……中村(宗一郎)さんっていう坂本くんのエンジニアをずっとやってる人の娘さんなんですけど、彼女の木訥としたボーカルを使ったら、それがすごくよかったって坂本くんが褒めてくれました。
──「Heart Throbs And Apple Seeds」(2008年)は、The Bird And The Bee and Corneliusという名義になってます。
これは「Sensuous」をリリースした直後ぐらいだったんで、「Sensuous」で使ったような手法がいくつか入ってる。リミックスじゃなくてコラボ的な感じでやってます。車のCMかなんかの企画で、プロダクションはほとんどこっちでやってるんですけど、The Bird And The Beeに楽器を弾いてもらったりメロディを作ってもらったりして。でも一度も会ってない(笑)。
──「Night People」(2011年)は、LITTLE CREATURESのトリビュートアルバム「Re:TTLE CREATURES」にも収録された、彼らの楽曲のカバーバージョンです。
これだけ唯一、僕が歌ってるんですけど(笑)。
──そうですね。以前YMOの「CUE」のカバーを発表されてますが、カバーとかトリビュートってあまりやらないですよね。
そうですね。LITTLE CREATURESはすごく好きだったので。あと学校が一緒なんですよ。
──あ、和光?
そう。学年は彼らが3つ下なのかな。僕が高3の時に彼らが中3なんですよ。彼らも中・高が和光で。あの山の中(東京都町田市)に通ってたんだなあと思うと、親近感が湧いて(笑)。
──どういう学校なんですか。
校則があまりないんですよ。休みが多くて。わりと自由な学校。
──そういう自由な校風はCorneliusやLITTLE CREATURESの音楽に反映している?
どうかな(笑)。わりと音楽やってる人が多いんですよ。音楽を特別に教えてるわけじゃないんだけど、バンドやってる人とか意外に多くて。
──この曲は小山田圭吾のボーカルのよさがよく出ていると思います。
あ、そうですか(笑)。これはけっこう青柳(拓次)くんの歌を聴きながら歌いましたね。全然声が違うから、ああいうふうにはならないんですけど。
──自分のボーカルの特徴はどこにあると思いますか
うーん、どうだろう……。倍音が低いほうにあまりない気がしますね。しゃべってるときの声と歌うときの声がだいぶ違う。音域もそんなになくて……年取って声が低くなってきましたね。
“中心”がないインストのリミックスは難しい
──なるほど。Penguin Cafe「Solaris(Cornelius Mix)」(2015年)はCorneliusらしい素晴らしいリミックスでした。
salyu×salyuで1回Penguin Cafeとライブをやったんですよ。そのときにすごく気に入ってもらえて。そのあと日本に来たときに、一緒に何かやりたいって言ってくれて。彼ら、ライブでCorneliusのカバーをやってるんですよ。「POINT」に入ってる「Bird Watching At Inner Forest」という曲なんですけど、それを録音してシングルで出したんです。そのカップリング用にリミックスしたのが「Solaris」です。今のPenguin Cafeって、80年代にPenguin Cafe Orchestraをやってたサイモン・ジェフスの息子さん(アーサー・ジェフス)がリーダーで。サイモン・ジェフスはもう亡くなってて、ほとんど新しいメンバーでなんだけど、やってることが変わらないんです。まったく同じイメージでやってて、クオリティも落ちてなくて、新曲をやってるのがすごいなと(笑)。ああいう音楽だからこそできるっていうかね。ボーカリストがはっきりいるようなロックバンドみたいなものだと違和感があると思うんだけど、Penguin Cafeって、そういう意味での「顔」がないじゃないですか。ペンギンっていうアイコンがあれば、そこでやってる人が代替わりして変わってもまったく違和感なくやれてるのが、すごい面白いなと思って。
──そういうはっきりと中心になるものがない音楽というのは、リミックスはやりやすいものですか。
うーん。ホントはやりにくいんですよ。ボーカルがあるものは真ん中がはっきりしてますよね。でもインストの場合、特にはっきりとしたメロディがあるわけじゃなく音の組み合わせで曲ができてるような音楽の場合は、中心がないから、それを残して周りを構築するんじゃなく、雰囲気を残しつつ新たな要素を加えることになるんです。だからインストをリミックスするのって、やりやすいかやりにくいかって言えば、けっこう難しいんですよ。でもまあ、今回はいい案配に落とし込めたかなと思っています。
──ゴティエの「Eyes Wide Open(Cornelius Remix)」(2012年)は?
ゴティエはね、昔から連絡をくれるんです。Corneliusがツアーでオーストラリアに何回か行ったとき、いつも来てたみたいで。「Somebody That I Used To Know」が大ヒットする直前ぐらいに、オーストラリアツアーを一緒に回ってくれって言われたのね。でも突如大ブレイクしてそのツアー自体がなくなっちゃって。その後日本に来たときにリミックスを頼まれたんです。2~3年前かな。
──Penguin Cafeとは対照的に、ボーカルという「中心」がはっきりしてますね。
そうだね。声がスティングに似てるんだよなあ……。
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- ニューアルバム「Constellations Of Music」
- 2015年8月19日発売 / 2700円 / Warner Music Japan / WPCL-12154
収録曲
- Escalator Step / 大野由美子
- 幽霊の気分で(Cornelius Mix)/ 坂本慎太郎 feat. Fuko Nakamura
- Heart Throbs And Apple Seeds / The Bird And The Bee and Cornelius
- Hammond Song / salyu×salyu
- Holiday Hymn / Cornelius
- Try Anything Once(with Cornelius)/ Korallreven
- Night People / Cornelius
- Solaris(Cornelius Mix)/ Penguin Cafe
- Eyes Wide Open(Cornelius Remix)/ Gotye
- Plastic Sex / The End
- Music(Cornelius Remix)/ サカナクション
- Tokyo Twilight / Cornelius
- May You Always / salyu×salyu
Cornelius(コーネリアス)
小山田圭吾によるソロユニット。1991年のフリッパーズ・ギター解散後、1993年からCornelius名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21カ国でリリースされ、バンド「The Cornelius Group」を率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「Sensuous」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広いフィールドで活動を続けている。2015年8月には、近年手がけた楽曲を自身のセレクトで厳選収録した編集盤「Constellations Of Music」をリリース。