ナタリー PowerPush - CORNELIUS
もしこの曲をリミックスするなら? 架空のリミックス 会議を実況中継
録音している自分を客観的に観察して、新しい無意識を降ろしてくる
──今回こうして7曲ぶんのアイデアを聞かせてもらったわけだけど、そういう「飛躍の面白さ」を重要視しているっていうのはメチャクチャ伝わっ てきました。
やっぱり人に頼んでもらったからには、自分にしかできないものに仕上げたいっていうのがあるしね。
──今までその狙いが外れたものっていうのはある? うまく自分に寄せられなかった、みたいな。
ジェームス・ブラウンは苦労したかな。原曲のイメージが強すぎて大変だった。
──ずっとこの臭いが消えない! っていう?
(笑)そうそう。なんとかあの声を自分の表現に取り込むように頑張って、なるべく「J.B.帝国」の支配下に置かれることを拒んでみたんだけど、結局はそうなっちゃったかな。ただ単に帝国への回り道をしただけだったという(笑)。まぁ、それは狙いが外れたっていうことではないんだけど。
──今回の7曲で、いちばんやってみたかったのはどの曲?
SUBSTANCEと……あとはSMITHSかな(笑)。
──SUBSTANCEは口内環境を使った新曲を提供。かたやSMITHSはSMITHSっぽさを追求するっていう、まったく逆のアプローチなわけだけど。
そう言われてみればそうだね(笑)。だから、やっぱり何かの基準に則って曲を選んでるわけじゃないんだろうね。あくまでその曲ごとに「取りつく島」を見つけていくって感じで。
──たとえば小山田くんが、ふだん新譜を聴くときの耳っていうのはどういう耳なんだろう? 自然とその中に自分の音楽のアイデアを探していたり、「自分ならこう仕上げるだろうな」みたいなシミュレーションを日常的にしていたりするのかな?
耳にしてもいろんな耳があるからね。そのときによっても曲によっても違うかな。ただ、制作中も制作中じゃないときも音楽は日常として聴いてるから、自然とそれが自分の中にプールされて、直接的ではないにしてもなんらかの形で作品に反映されるっていうのはあると思う。あとは自分自身の経験からも影響されたりするし。
──そういった生活のなかに、スタジオという定位置があると。
うん。いろんな蓄積がミックスされたものが出やすい環境ではあるよね。
──今回の企画は、小山田くんの連想ゲームから、CORNELIUSのアイデアの種がどこから産まれるのかということを探ったものだったわけだけど、あ る楽曲をお題に、どれだけ自分自身を引っぱってこれるかの筋力というのは、当然自分の出した音に対しても働くわけだよね。
そうだね。自分が無意識に出した音から、どれだけ次の音を想像できるかっていう部分は重要だと思う。録音している自分自身を客観的に観察してみて、そのときの自分が、何を思ってその音を出したのかっていうのを理解してみたところに、さらに新しい無意識を降ろしてくる、みたいなことなのかな。それは思い込みみたいなものを含めてね。
──いわば、火曜日の自分が月曜日の自分をリミックスし続ける感覚というか。
それが5年ぐらい続いて、ようやくアルバムになってるのかもね。自分自身の録音をプレイバックして、そこになにかを加えていくっていう作業は、リミックス をやるときの意識にも通じるはずだし、それは音楽だけじゃなくて、ふだんの会話とか、こういうインタビューにしてもそうだと思う。ここで自分がしゃべったことをあとで思い出して、そ こでまた何かを考えて、その考えから、また新しい意識が産まれる。そうやって少しずつ変わっていく中で、自分は音楽をやってるんだと思う。いまだに自分でもよくわからないからね、自 分のことは。
CD収録曲
- SKETCH SHOW / chronograph
- KINGS OF CONVENIENCE / I'd Rather Dance With You
- BLOC PARTY / Banquet
- IF BY YES / You Feel Right
- 電気グルーヴ×スチャダラパー / Twilight
- THE GO! TEAM / Universal Speech
- JAMES BROWN / Call Me Super Bad
- MONDO GROSSO / Everything Needs Love feat. BoA
- STING / Moon Over Bourbon Street
- 坂本龍一 / War&Peace
- Crystal Kay / ONE
- SKETCH SHOW / ekot
DISC1
- Breezin'
- Wataridori
- Gum
- Toner
- Smoke
- Tone Twilight Zone
- Drop
- Point Of View Point
- Count Five Or Six
- I Hate Hate
- Scum
- Omstart
- Beep It
- Monkey
- Star Fruits Surf Rider
- Fit Song
- Like a Rolling Stone
- Music
- Sensuous
- Eyes
- E
- Sleep Warm
DISC2
- 「中目黒テレビ(CORNELIUS 第1回新曲披露演)」 from Space Shower TV
- 「Yo Gabba Gabba!」 from Nick Jr.
- 「Geo Sessions」 from National Geographic Channel
- 「中目黒テレビ(コーネリアス・ワールド・ツアー 2006-2008)」 from NHK
CORNELIUS(こーねりあす)
小山田圭吾によるソロユニット。1991年のFlipper's Guitar解散後、1993年からCORNELIUS名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21ヵ国でリリースされ、バン ド「The Cornelius Group」を率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「Sensuous」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グ ラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広 いフィールドで活動を続けている。