ナタリー PowerPush - CORNELIUS

もしこの曲をリミックスするなら? 架空のリミックス 会議を実況中継

脱臼したみたいなシンセベースに燃える

──じゃあ次はイギリスのARCHITEQ。生ドラム+ラップトップ+小鳥ファンク(笑)。

ARCHITEQ / Birds of Prey◎ARCHITEQ「Birds Of Prey」
(from the single「Birds of Prey」)

わ、これもカッコいい。この脱臼したみたいなシンセベースは燃えるね。編集意欲をくすぐられる。こういうバンドはいくつか出てきてると思うんだけど、CORNELIUSの海外ツアーのフロントアクトをやってくれたHOLY FUCKなんかにも通じる部分があったりして、ちょっと親近感がある。ただ、この曲のリミックスとなるとね……。(小鳥の鳴き声のサンプルが聴こえて)あ! これは鳥ネタにしようかな(笑)。とにかくいろんな鳥の鳴き声を入れていく「鳥類図鑑リミックス」にしよう(笑)。

──ビートメイキングの部分ではCORNELIUSに通じるところもあるから、そこはあえて素材をもらうこともないと。

……と思ったんだけど、一応このシンセベースはもらっておきたい。原曲とリンクする要素が鳥だけっていうのも寂しいし、こういう、楽曲の中心がなんだかわからない曲のリミックスっていうのは、とにかく素材の取捨択一が重要なんだよね。お題が完全に消えてしまうと、自分の新曲を作るって作業と変わらないし……(小鳥の鳴き声のサンプルが 聴こえて)ただ、それでもこの曲は鳥かな。この鳥がないと、自分が入る余地っていうのはなかったかも。

必然性があれば「新曲」を「リミックス」と呼んでしまってもいい

──それではさらに余地のないものを。ベルリンのミニマルテクノ、1996年の名曲。基本的には最初から最後までずっとこれ。とにもかくにも色というものがまったくない曲で。

SUBSTANCE / Relish◎SUBSTANCE「Relish」
(from the single「Relish」)

これも好きだけど難しい。ここまで機能的なダンスミュージックのリミックスっていうのはやったことないからなぁ……。

──それがテーマです。ここまで素材がゼロに近いと、まさに新曲の制作と変わらないと思うので、これをネタに、「コンマ何秒のビートに宿るオリジナリティ&著作権とはなんぞや」という話をしたいと思っていて(笑)。

たぶんこの、スタン、スタン、っていうシンセがこの曲っぽさを出してるんだよね。……というか、それしかないんだけど(笑)。う~ん……じゃあ、歌ってみようかな。

──アハハハハ(笑)。声をバラして乗せていく?

それもアリかな。あと、曲名の「Relish」ってどういう意味?(MacBookの辞書を調べて)あぁ「味わう」か。なるほどね。この音にこのタイトルっていうのは すごくイメージが伝わるね。最初は無味無臭なんだけど、よく噛んでるとじんわり味がしてくる、みたいなところがこの曲の魅力なわけじゃない?

──まさに。

ループなようでいてそうじゃないし、ずっと一緒のようでいて、微妙に音がモワレていったりするし。あ、やっぱり歌うのはやめて、クチの中の音をたくさん使おうかな。何かモノを食べてるときの「ニチャッ」とか「ムチャムチャッ」みたいな音を思いっきり増幅して、それを刻んでリズムにしていく。

──素晴らしい! その場合、原曲からの素材は?

なし。

──CORNELIUSの新曲を、SUBSTANCEのリミックスとして発表する?

インタビュー写真

でも、その新曲というのも、この曲名がなければ成立しなかったわけだから、それでもリミックスにはなると思うな。

──リミックスの定義を根底から揺るがす発言が出ました。

その定義というのも、今の時代はよくわからなくなってるよね。レコード業界に12インチの文化が始まったときに、何か原曲に手を加えるって意味での「リミックス」というものに価値が産まれたんだと思うんだけど、その初期段階っていうのは、いわゆる「Extended Mix」って呼ばれるようなもので、単純にイントロとか間奏を長くしたりってい うものだったと思うのね。でもそこにだんだんとビートを組み替えたり強くしたりっていう人が出てきて、かつ、今はもう、それだけだとリミックスとすら呼んでもらえない時代になってる じゃない? 曲のサイズを変えるだけじゃなくて、新しい音を加えるっていうのが最低限必要になってる。で、そこを突き詰めていくと、リミックスとリアレンジの境界線っていうのも曖昧になってきて……。

──さらにCORNELIUSの場合は、リアレンジとニューソングの境界も曖昧になっていると。

(笑)うん。だからすべては解釈なんだと思うんだよね。もしそこに必然性があるんだったら、タイトルだけにインスパイアされた「新曲」っていうのも、リミックスと呼んでしまってもいい時期にきてるのかもしれない。

──言葉の意味から音のイメージを広げていくというのは、CORNELIUSの手法のひとつでもあるわけだし。

「Fit Song」とかはそうやって煮詰められた曲だしね。

ニューアルバム『CM3』 / 2009年5月13>日発売 / 2520円(税込) / Warner Music Japan / WPCL-10658

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CD収録曲
  1. SKETCH SHOW / chronograph
  2. KINGS OF CONVENIENCE / I'd Rather Dance With You
  3. BLOC PARTY / Banquet
  4. IF BY YES / You Feel Right
  5. 電気グルーヴ×スチャダラパー / Twilight
  6. THE GO! TEAM / Universal Speech
  7. JAMES BROWN / Call Me Super Bad
  8. MONDO GROSSO / Everything Needs Love feat. BoA
  9. STING / Moon Over Bourbon Street
  10. 坂本龍一 / War&Peace
  11. Crystal Kay / ONE
  12. SKETCH SHOW / ekot

ライブDVD『Sensuous Synchronized Show』 / 2009年5月13日発売 / 5900円(税込) / Warner Music Japan / WPBL-90122

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DISC1
  1. Breezin'
  2. Wataridori
  3. Gum
  4. Toner
  5. Smoke
  6. Tone Twilight Zone
  7. Drop
  8. Point Of View Point
  9. Count Five Or Six
  10. I Hate Hate
  11. Scum
  12. Omstart
  13. Beep It
  14. Monkey
  15. Star Fruits Surf Rider
  16. Fit Song
  17. Like a Rolling Stone
  18. Music
  19. Sensuous
  20. Eyes
  21. E
  22. Sleep Warm
DISC2
  • 「中目黒テレビ(CORNELIUS 第1回新曲披露演)」 from Space Shower TV
  • 「Yo Gabba Gabba!」 from Nick Jr.
  • 「Geo Sessions」 from National Geographic Channel
  • 「中目黒テレビ(コーネリアス・ワールド・ツアー 2006-2008)」 from NHK
CORNELIUS(こーねりあす)

プロフィール

小山田圭吾によるソロユニット。1991年のFlipper's Guitar解散後、1993年からCORNELIUS名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21ヵ国でリリースされ、バン ド「The Cornelius Group」を率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「Sensuous」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グ ラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広 いフィールドで活動を続けている。