ナタリー PowerPush - カラーボトル

新章突入への意思表明アルバム「生きる」

セルフタイトルアルバム「COLOR BOTTLE」から約1年、カラーボトルがニューアルバム「生きる」を完成させた。今作は、常に全力で音楽と向き合い、オーディエンスと対峙する彼らの分身のような作品で、バンドの持ち味である熱っぽさや泥臭さも全開。聴けば生きる力が自然と湧いてくる、生命力の宿った1枚に仕上がっている。バンド初のカバーやインディーズ楽曲のセルフカバー、他アーティストとのコラボなど、新たな挑戦も多い今作について、3人にじっくり話を訊いた。

取材・文 / 川倉由起子 撮影 / 佐藤類

好評だった前作の勢いや流れを止めたくなかった

──ニューアルバム「生きる」は、その名の通り、とても生命力にあふれた作品だなと思いました。制作はどういうところから始まったんですか?

左から大川“Z”純司(Dr)、竹森マサユキ(Vo, G)、渡辺アキラ(G)

竹森マサユキ(Vo, G) 実質的なアルバムの作業は6月に出したシングル「魂ドライブ」の制作からになるんですけど、それが一昨年の末だったかな。アニメ「遊☆戯☆王ZEXAL」のタイアップのお話をいただいて、まだ全く何もない状態の中、「年明け1月中旬くらいまでに音を上げよう。俺たちならできる、じゃあ解散!」っていう感じで。

──え、解散!?(笑)

竹森 ちょうど年末だったので、それぞれ「俺、実家帰るね」みたいなのがあったんですよ(笑)。でもその間も密に連絡を取り合うことになってて、僕はとにかくがむしゃらに、まだ今回のアルバムが出るかもわからない段階だったけど、「魂ドライブ」も含めデモをいっぱい作ったんです。前のアルバム「COLOR BOTTLE」がすごく好評で、そこで新しく僕らを知ってくれた人もいますし、その勢いや流れを止めたくなかったというか。

──前回のインタビューでも「今、バンドの状態がすごくいい」とおっしゃってましたが、それはその後もずっと止まってなかったんですね。

竹森 そうですね。(渡辺に)止まってないよね?

渡辺アキラ(G) うん。一緒にいる中で「あ、今の空気感いいな」って思うことも結構あったし、ライブでもみんなの感覚が揃ってるというか、同じ方向を向いてやれてるなっていうのは感じてましたね。

希望はもっと泥臭くて、泥まみれでもいい

──「魂ドライブ」の完成後、最初にできたオリジナル曲はどれだったんですか?

竹森 がっちり1曲できたっていうのは「やぁ、野良犬。」ですね。これも映画(「名無しの十字架」)の主題歌のお話をきっかけに作り始めて。

──「やぁ、野良犬。」は私もすごく好きな曲なんですが、耳なじみのいいサビのメロディと、温かな希望を内包した歌詞が素晴らしいです。

竹森 この曲は結構苦労したんですけど、最初に映画の原作や台本を読ませてもらって作った歌詞が浅はかというか、薄っぺらい希望ばっかりだなーって思って。もちろんそういう歌詞はボツになるんですけど、そんなときに「希望を歌いたいのに、もしかしたら『COLOR BOTTLE』で全力出し切っちゃたのかな」って思ってしまって。

──前作は、愛と希望と勇気がテーマのアルバムでしたからね。

竹森 はい。で、これはちょっと休みが必要かなってスタッフさんに泣きついたりしたんですが「そんな余裕ありません」って言われて(笑)。俺、このまま何もひらめかなかったらどうしよう……と思ってるときに、早朝の渋谷のマクドナルドで家出をしてる女の子を見かけたんです。彼女はたくさん荷物を置いたまま寝てて、ちょっと臭いもしてたから、その周りのテーブルだけが空いてて。でもみんな何事もないように過ぎ去っていくのを見て、いろんなことを思ったんです。

竹森マサユキ(Vo, G)

──なるほど。

竹森 で、その子が寝ながら聴いてるiPodは外の音を塞いでるのか、何か救いを探してるのかはわからないけど、その曲のメッセージがこういう感じだったらいいな……っていうのを書こうと思って。僕も路上で歌ってた頃、家に帰りたくないときがあったなーとか思い出したら、それってまるで野良犬のようだなって。映画の台本ともそこがリンクしたので、結果、「希望っていうのはもっと泥臭くて、泥まみれでもいいじゃないか!」っていう歌になりました。

──「泥臭さ」っていうのは、カラーボトルの楽曲の大きなキーワードでもありますよね。

竹森 うん、どうしても土っぽさは出ちゃいますね。路上時代から元々持ってたものですから(笑)。でもメジャーデビューして何年か、きれいにまとめなきゃとか思って、それを見失ってたときもあったんです。説得力がなくなるのはわかるけどそれがメジャーってもんだろって、変な思い込みをしてたり。そしたらいつの間にか本当の自分の思いを書くのが怖くなって、スタッフさんにも「きれいにまとまりすぎてるよ。もっと本当の言葉で書いてごらん?」って言われたり。そうやって導かれながら、今やっと失いかけたものを取り戻した感はあるんですけど……。やっぱり命削ってリフを考えたりレコーディングしてる中で、そんな中途半端な歌詞は乗っけられない。今回そこは本気で勝負したし、挑みきれたなっていう感触はあります。

ニューアルバム「生きる」 / 2013年1月16日発売 / 2500円 Dreamusic MUCD-1271
ニューアルバム「生きる」
収録曲
  1. ロックンロールドッグ
  2. ファイター / カラーボトルと我武者羅應援團
  3. 太陽
  4. やぁ、野良犬。
  5. 魂ドライブ
  6. 希望のバトン
  7. アーミ・アミーコ!アーミ・アムージ!
  8. モンスター / カラーボトルと鶴
  9. 地元賛歌
  10. あぜ道
ワンマンライブツアー「COLOR BOTTLE IS HERE!!2013~自分全開!人間全開!生きる!生きる!生きろ!~」
  • 2013年3月1日(金)
    宮城県 仙台CLUB JUNK BOX
  • 2013年3月3日(日)
    大阪府 梅田Shangri-La
  • 2013年3月10日(日)
    福岡県 福岡DRUM Be-1
  • 2013年3月16日(土)
    北海道 札幌COLONY
  • 2013年3月20日(水・祝)
    愛知県 名古屋APOLLO THEATER
  • 2013年4月21日(日)
    東京都 赤坂BLITZ
カラーボトル

竹森マサユキ(Vo, G)、渡辺アキラ(G)、大川“Z”純司(Dr)の3名からなるロックバンド。2004年1月、仙台にて結成。同年12月にバンドオーディション全国大会に北海道・東北代表として出場し、準グランプリを獲得する。2007年6月に「彩色メモリー」でメジャーデビュー。2011年2月、自らのレーベル「SUPER SOUL COMPANY」を発足し、ミニアルバム「情熱のうた」をリリース。表題曲である「情熱のうた」はプロバスケットボールのbjリーグ復興支援ゲームのテーマソングに、同アルバムの収録曲「走る人」は味の素のCMソングに起用された。2012年2月にはアルバム「COLOR BOTTLE」を発表し、2013年1月にはアルバム「生きる」をリリース。竹森の絞り出すような歌声が、多くのロックファンの支持を受けている。