ナタリー PowerPush - カラーボトル

僕らにあるのは雑草魂 震災を経て「COLOR BOTTLE」完成

避難所の体育館がすごく盛り上がった

──被災地訪問後、アルバム制作面で何か変化はありましたか?

インタビュー風景

竹森 まず気仙沼の避難所ライブの後、近くに車を停めてみんなで感じたことを話し合ったんです。「本当に励まされたね」とか「音楽で希望や進むべき道を提示していけたらいいね」とか。一度止まっていた曲作りにしても、キラキラした希望にあふれてる未来を予想できるような曲を作ろう、っていう、メッセ-ジの核になるものを見つけることができて。

──一旦ストップした制作が、その瞬間からまた動き出したわけですね。

竹森 はい。あと、福島の新知町の体育館でライブをしたとき、Zくん(大川)は普段MCとかしないんですけど、最後に「俺は隣町の山元町で実家が流されたんですけど、一緒にがんばっていきましょう!」って大声で言って。そのとき会場が「うおおおおー!!」って、ものすごい盛り上がりを見せたんです。その瞬間「みんな仲間なんだ。だから一緒に進んでいくんだっていう思いを絶対に届ける!」って僕は決意しました。

──その後、今回のアルバムの中で最初に書いた曲はどれになるんでしょう?

竹森 リード曲でもある「アゲハ蝶」です。この曲は、まさにZくんの実感のある山元町が舞台になっていて。4月に行ったときは周りに瓦礫しかなかったんですけど、6月に再び行くと少しずつ草が生えてて、そこに1匹のアゲハ蝶が飛んでたんです。

──たくましい生命力を感じる風景ですね。

竹森 はい。僕もそれまで、アゲハ蝶って可憐にひらひら舞う美しいイメージしかなかったんですけど、そのときばかりはなぜか汗水流して力強く飛んでいるように見えて。それが、自分たちの力で一歩ずつ困難を乗り越えていこうとしてる被災地の姿とリンクして、よし、これをテーマにしよう!と思ったんです。その後、実際に歌詞を書くときは、そういう力強さに加えて、悲しいことも一緒に抱き締めて前へ進もうという気持ちを込めました。

1曲あたりノート1冊分を費やした

──とはいえ今回のアルバムを通して聴くと、全体的には震災のみをテーマに作られたものではなくて。全12曲、バラエティ豊かな曲が入っていますし、1曲目「SHOW」からライブはこうなるんだろうなってイメージできる作品だと思いました。

インタビュー風景

渡辺 今回はわりと、ライブを想定して曲を作っていったところが大きいと思います。特にレコーディングの後半はそうだったんですが、「セットリストのここにこういう曲があったらいいよね」とか話しながら。アッパーな曲は、そこからトラックを作ったり、ギターリフができていったものも多いですね。

竹森 1曲目の「SHOW」は、まさに「このアルバムのショーが始まるよ」っていう感じもあるし、その先にある希望や愛を表現してて。ライブが始まる瞬間のワクワク感、開演前のテンションの高いときをイメージしながら作りました。

──今作の歌詞については、先日竹森さんがブログで「どれだけその言葉を信じて放てるか」にこだわったと書かれていて。それは具体的にはどういったところでしょうか?

竹森 最後に歌詞ができた7曲目「残心」なんかは、新たな挑戦でしたね。この曲は失恋がテーマなんですが、今までの僕だと、どこかすっきりして前に進み出そうとしてる曲とか、ありがとうっていう感謝の気持ちが入ってるような失恋の歌を書いてたんです。というのも、元々の性格が少しグチっぽいというかウジウジしてるので(笑)、それをそのまま出すことに躊躇してて。

──そうなんですか(笑)。

竹森 でも、そうやって綺麗にまとめないで、憎らしい気持ちや自分の汚い部分も出してみたら?ってマネージャー兼ディレクターの方に言われて。それで、愛してるっていう気持ちを「愛してる」って言葉を使わずに表現してみたり、おまえなんかに出会わなければ良かった、出会ったことで俺はこんなめちゃくちゃになってしまった!っていうような表現も初めて使ってみたんです。

──今まで出してなかった自分の隠し扉をひとつ開けた、みたいな?

竹森 そう。だからこれが書けたことで、また次につながる可能性が僕の中で広がったと思いましたね。

──その他の曲も、だいぶ試行錯誤を繰り返しました?

竹森 そうですね。思い出したくないくらい書き直した曲もあります。今はそれで最高の作品ができたからいいじゃんって思えますけど(笑)。大体1曲あたりキャンパスノート1冊分くらい費やしてますね。

ニューアルバム「COLOR BOTTLE」 / 2011年2月8日発売 / 2800円(税込) / Dreamusic / MUCD-1259

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CD収録曲
  1. SHOW
  2. アゲハ蝶
  3. トライアゲイン~何度でも熱くなれ~
  4. オリオン
  5. ルララ
  6. 愛こそが全て
  7. 残心
  8. もう一度、君に会いたい
  9. 雪の日に
  10. 18才
  11. ひまわり
  12. 旅に出よう
カラーボトル

2004年1月、仙台にて結成。同年12月にバンドオーディション全国大会に北海道・東北代表として出場し、準グランプリを獲得する。2007年6月に「彩色メモリー」でメジャーデビュー。2011年2月、自らのレーベル「SUPER SOUL COMPANY」を発足し、ミニアルバム「情熱のうた」をリリース。表題曲である「情熱のうた」はbjリーグ復興支援ゲームのテーマソングに。同アルバムの収録曲「走る人」は味の素(R)TV-CFソングに現在も使用されている。ボーカル竹森マサユキの絞り出すような歌声が、多くのロックファンの支持を受けている。2012年2月にはセルフタイトルアルバム「COLOR BOTTLE」を発表。東日本大震災を経て得た経験と、音楽への思いが詰まった作品に仕上がっている。