ころん(すとぷり)が1stソロアルバム「アスター」をリリースした。
動画配信サイトを中心に活動し、若い世代から多くの支持を集めている6人組の“エンタメユニット”すとぷり。水色担当のころんはグループでの活動のほか、登録者数が84万人を超える自身のYouTubeチャンネルでゲーム実況をはじめとする動画を毎日公開するなど、個人での活動も積極的に展開している。ソロでの音楽活動もここ数年彼が力を入れている表現方法の1つで、2019年より自身の誕生日に公開しているソロ曲の歌詞を自ら手がけているほか、昨年1月には愛知・Zepp Nagoyaで単独公演を成功させた。音楽ナタリーでは「アスター」の発売に合わせてころんにインタビューを行い、みきとP、蝶々P、ピノキオピーら多彩な作家陣が参加したアルバムの収録曲や、歌手活動に対する思いを聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦
活動しているときが一番の休憩
──ころんさんは、すとぷりの中でもゲーム実況者としての側面が強いメンバーだと思います。ご自身の中で歌を歌うこと、歌手活動はどういう位置付けなんでしょうか?
僕の活動はシンプルに「自分がやりたいものを楽しんでもらう」というものなんです。例えばゲーム。僕は幼稚園の頃からゲームが大好きだったから、今でもゲーム実況という形でみんなと楽しんでいるんです。歌に関してもそれと一緒で、小中学生のときから歌うことが大好きで、例えば昔からカラオケに行ってみんなと一緒にワイワイやるのが僕の楽しみの1つだったんです。ゲーム実況で僕のことを知ってくれる人もいますし、すとぷりの歌から僕のことを知ってくれる人もいますけど、どちらも僕にとって大好きなことなので、活動しているときが一番の休憩だと思っています(笑)。それぐらい大好きなことしかやってないです。
──動画でオリジナル曲やカバー曲を投稿することはあっても、ソロアルバムをリリースするのは初めてですよね。好きなタイミングで好きな曲を届けられる動画投稿者にとって、アルバムという形で音楽を届けることにどのような意義を感じていますか?
まず、一度経験してみたかったんですよね。すとぷりで楽曲を何曲もリリースしてきて、ソロでも動画で何曲も歌ってきたけど、ソロアルバムをリリースするということはこれまで一度もやったことがなかったので僕自身もずっと憧れていたし、リスナーのみんなから「アルバムを出してほしい」という声をすごくたくさんいただいていたんです。だからソロアルバムを作るのは僕にとっての夢でありながら、リスナーのみんなと一緒に夢見ていたことで、リリースが決まったときは本当にうれしかったです。アルバムという形だから挑戦できた曲もあると思いますし、動画で曲を届けるのとは違ったよさがCDにはあると感じています。
──アルバムタイトルの「アスター」は花の名前ですが、ころんさんはアルバムにどのような思いを込めて、このタイトルを選んだんでしょうか?
シンプルに、リスナーのみんなに信じて付いて来てほしいという意味を込めました。僕のことを信じてほしいし、僕もみんなのことを信じてる。それを表す言葉として花言葉に「信頼」という意味がある「アスター」という花をタイトルに選ばせてもらいました。
──アルバムの表題曲「アスター」では、ころんさん自身が作詞を担当しています。歌詞にはどのような思いを?
僕は今まで「敗北ヒーロー」「敗北の未来地図」の2曲を自分で作詞していて、「アスター」は3曲目になるんですが、プロの作詞家さんのようなカッコいい言葉はまだ書けていないと思っていて。ただ、カッコいい言葉が使えなくても、リスナーさんに寄り添う形で自分の思いを伝えることは得意なんです。だから自分に正直に、リスナーさんに気持ちを伝えようと思って詞を書きました。
──でも、すごくカッコいい歌詞になっていると思いますよ。
本当ですか? やっぱり僕、才能あるのかなあ! すみません、冗談です(笑)。
──「アスター」に関してはころんさんが出演する実写のミュージックビデオが公開され、ファンの間で話題になりました。実写のMV、初めてですよね?
はい。最初は実写でMVに出るのがすごく怖かったんです。僕らはいつもイラストでMVを作っていたから、自分自身の姿を映すということがあまりイメージできていなくて。でも実際に撮影してみたらめちゃくちゃカッコよく僕のことを撮ってくれて、なんか映画のワンシーンみたいなスタイリッシュさなんですよ。普段は観ることができない、カッコいいころんの姿が収められているので、ぜひたくさんの人に観てもらいたいです。
──アルバムの初回限定盤に付属するDVDにはメイキング映像も収録されるようですが、MVの撮影現場はいかがでしたか?
正直に言うと全然慣れてなくて、準備中はカメラマンさんやスタッフさんがたくさんいる中で、僕が1人でポツンと置かれているような状態で……(笑)。もちろん僕のMV撮影のために皆さんがんばってくれているわけなんですが、慣れていなさすぎてすごく収まりが悪くて、どこかに逃げちゃうところでした(笑)。もちろんそんなことはせず、カッコよく撮ってもらったので、アルバムを買ってくれた方はメイキングまで楽しんでほしいですね。
「敗北」という言葉に愛着がある
──今お話に出た「敗北ヒーロー」は、ころんさんにとって初めてのオリジナル曲として発表された曲でした。おそらくソロアルバムへの道筋は「敗北ヒーロー」から始まったと思うのですが、どういう経緯でオリジナル曲を作ることになったのでしょうか?
「敗北ヒーロー」は僕の誕生日を記念して、るぅとくんに相談して作ってもらった曲なんです。誕生日がすぐのタイミングであまり制作の時間がないのに、るぅとくんが「ころんくんが詞を書くなら、急ピッチで作るよ!」と言ってくれて。これまでオリジナル曲を作ったことはなかったけど、いつも活動を一緒にしている友達が作ってくれたらすごくいいなと思って、この曲の制作をお願いしたんです。
──「敗北ヒーロー」はリスナーの背中を押すような前向きなメッセージを込めつつも、ころんさんがすとぷりに入るまでの歩みがつづられた曲でもありますよね。
そうです。僕は人目に付く活動をしているから、「憧れ」のような眼差しを向けられることもありますが、もともとはなんの才能もない1人の人間で。でも、僕は僕の物語の中で出会いがあって、やりたいことを突っ走っていった先に今の活動があった。そして僕以外のみんなにもきっとやりたいことがあって、その夢が叶わないことはないんじゃないかなと思っているんです。自分の物語を軸にはしていますけど、リスナーさんたちの物語も応援したくて「敗北ヒーロー」という曲の歌詞を書きました。
──その後、ころんさんのオリジナル曲として「敗北の未来地図」が公開されました。MVには「敗北ヒーロー」のイラストも使用されていて、この2作品が地続きであることが示唆されていますが、「敗北の未来地図」はどういった経緯で作られた曲なんでしょうか?
「敗北ヒーロー」のイメージは、天気で言うと快晴なんです。さわやかさがあるというか、疾走感あふれる曲にしたくて。その次に作った「敗北の未来地図」はちょうど去年の5月の自粛期間の頃に公開した曲で、そのときに感じていた悔しいこと、苦しいことをイメージしてダークな曲調にしてもらったんです。ただダークなだけじゃなく、「いつかは絶対乗り切れる」というメッセージを伝えたくて詞を書きました。
──2つの曲には共通して「敗北」という言葉が使われていますが、これにはどういう意味を持たせているんですか?
一般的には「敗北」という言葉はすごくネガティブなワードだと捉えられていると思うんですけど、僕は負けるからこそ得られるものがある、前に進むエネルギーが生まれるというポジティブな側面を持った言葉だと捉えていて。どんな人でも何かに負けちゃう瞬間はあるし、人生は挑戦してナンボの世界だと思っているので、僕は「敗北」という言葉に愛着があるんです。
次のページ »
憧れの方の本拠地にお邪魔