コドモメンタルINC.特集 今村伸秀(コドモメンタルINC. 代表取締役)×如月愛海(ぜんぶ君のせいだ。)|“アイドル不況”の中でコドモメンタルが好調な理由

アイドルを作ってるつもりは1mmもない

──まったく知らないアイドル業界に足を踏み入れてみて、如月さんはどう思いましたか?

如月 ライブや特典会みたいなことをやってみて、ファンの方の反応がすぐわかるのがすごくいいなと思って。コドモメンタルに入る前に映像関係の仕事をちょっと手伝っていたことがあるんですけど、映像って撮ってから作品にして世に出して、やっと観た人の反応が返ってくるんです。それに比べてアイドルとしての活動ではライブをすれば反応がその場で返ってくる。それがすごく楽しかったし、自分に向いてるかもなと思ったんです。もちろん楽しい思いばかりではなくて、「この仕事をちゃんとやらなきゃいけない」という使命感も持っていました。

──ぜんぶ君のせいだ。の活動が軌道に乗ると、ゆくえしれずつれづれ、幽世テロルArchitect、星歴13夜といった新しいグループが続々と生まれることになります。外から見ると、コドモメンタルはアイドルグループを生み出していく集団に見えるわけですが……。

左から如月愛海、今村伸秀。

今村 僕はアイドルが作りたくてアイドルを作ってるつもりは1mmもないんですよね。実際、いろんなグループが生まれる中で、僕らは自分たちのほうから「新しいアイドルグループです」とアピールしたことはあまりなくて。うん、記憶の中では。

──ではなぜコドモメンタルには女性グループが多いんでしょうか?

今村 言葉にしてしまうと誤解が生じてしまうかもしれないんですけど、アーティストのフォーマットとして、複数人の女性に歌ってもらうのはさまざまな表現を形にしやすいんですよね。基本的には表現したい音楽性がまず僕らの中にあって、例えばハードコアやスクリーモのような音楽ジャンルを抽出させてできたのがゆくえしれずつれづれであり、デジタルなサウンドとラップの要素をかけ合わせてできたのが幽世テロルArchitectだったりする。

──昨年12月に結成された星歴13夜は、これまでのコドモメンタルのグループになかった“正統派アイドル”的なグループだと感じました(参照:コドモメンタル新ユニット・星歴13夜のメンバービジュアル解禁)。

今村 単純に「コドモメンタルがストレートにかわいいビジュアルフォーマットのグループを作ったら面白いよね」みたいなところもあるんですけど、楽曲に関してはユーロビートだったり、トランスだったりEDMサウンドだったり、1990年代の音楽ゲームでよく流行したような僕らがまだ表現できていなかった音楽性に挑戦してるつもりなんですよ(笑)。

──要は今村さんをはじめとした作り手側にやりたいことが生まれると、新しいグループが生まれるということですか?

今村 まさにそうですね。例えばぜん君。にユーロビートの曲を歌わせても全然ナシではないと思うんですけど、ある程度長い年月活動していると、作り手側の中に「これはやってもいい」「これは合わない」みたいなのは出てくるんですよ。自分たちの中に納得のいく境界線というのが存在してて、そこからはみ出したことをやりたくなると、新しいグループを作ってる気がしますね(笑)。

周りとは比べない

──現在進行形で新しいグループが増えているわけですから、コドモメンタルという会社は順調に規模を拡大していると思うんです。コドモメンタルの事業、アーティストの活動が軌道に乗ったと思うタイミングってそれぞれいつですか?

今村 実はそれが僕の中にはいまだにないんです。グループの数は増えてはいるんですけど、それぞれの規模感とかに満足しているわけではないしなあ。愛海ある?

如月 私もないですね。常に挑戦している状態ですし、ありがたいことにライブハウスの会場規模は徐々に大きくなっているんですけど、それはつまり次の公演でちゃんとお客さんが埋まってくれるかわからないってことでもありますから。

今村 これは僕個人なんですけど、業界内での交流をほとんどしないのも理由の1つかもしれないです。会社としてではなく僕個人としては徹底して“鎖国主義”というか、ほかのレーベルで連絡を取り合うような人もあまりいないので、世の中のアイドルさんたちが今どういう状況なのかっていうのもあまり把握していないんです。だからそもそもほかのグループと比べて考えることができない。それもあって、ウチのグループが順調かどうかっていうのが把握できていないんだと思います。

如月愛海

──運営の今村さんだけではなくて、グループのメンバーもアイドルグループとの交流はほとんどないですよね。

如月 もちろんメンバーの中には、ほかのグループの子と交流があるメンバーもいますけど、私と同じくアイドル好きでこの世界に入ってないメンバーも多いので「グループ同士で仲がいい」みたいなことはないんですよね。ただ私たちはそれでよかった気もしてるんです。周りと比べて一喜一憂するより、自分が信じた道を進んでいくほうが性に合ってると思いますから。

今村 単純に周りを見てる余裕なんてないんですよね。次のライブをどうするか、新曲をどう歌うか、みたいな挑戦の繰り返しなので。目の前のことを必死にやることで成長してるわけですから、よそ様のことを見る余裕も、誰かと絡んでる時間もないんです。

すべてを自分たちでやる

──2018年はメジャーレーベルに属しているアイドルグループの解散が相次いだ1年でした。そんな中、なぜコドモメンタルはリリースのペースを落とすことなく、順調にグループの数を増やすことができるんでしょうか?

左から今村伸秀、如月愛海。

今村 答えは結構単純だと思っていて、大手レーベルさんが求めるCDの売上数は高くて当たり前で、僕らの求める数字はそこまでじゃない。なぜ売上数を高く求めてしまうかというと、CDを制作する際に関わる方の数、インストアイベントを行うためのスタッフの数、グループのマネジメントをするスタッフの数はそれぞれ多いですよね。これだけじゃなくて音楽を世の中に出すってことはもっと多くのセクションも段階もある。僕らは“レーベルプロダクション”と名乗っていることもあって、レーベル業務もプロダクション業務も全部一体化して、アーティストに関わることすべてを自分たちでやってる。音源の制作でプロデュースを高名な方にお願いしたこともないし、イベントを組むのも僕1人で連絡しまくるときもあるし、イベントへの同行も、質によるけれどまあ最低1人いればなんとかなるので(笑)。単純な話、レーベルに属している制作担当、販促担当、営業担当、アーティスト担当みたいなものを最低限の人数でこなしています。もちろんこれだけの理由じゃないけども、だからこそグループの数も増えているんだと思います。

如月 インストアイベントとか、社長1人とメンバーで回ったりしますからね(笑)。

今村 うん(笑)。何事もそうですけど、売れてるときは人手をいくらでもかけられるし、お金があるから大勢のスタッフで仕事ができるんですけど、売れなくなってしまうと同じようなことはできないんですよね? 多くのレーベルはどうしても売れていた、またはそうなるであろう数字を目指してしまって、そこに無理は絶対に生じてしまう。正直、アイドルグループが次々と解散していく理由ってすごくわかるんです。特にメンバーが若いとそれぞれのメンバーの将来が決まっているわけでもないし、活動していく中で目指すものが変わることもあると思う。ビジネス的な側面で無理が生じるか、本人たちのモチベーション的な面や目標などで無理が生じるか、どちらかに限界がくるとグループは解散するほかないと思うんです。

──コドモメンタルのグループにはまだその無理が生じていないわけですよね。

今村 ウチも人は辞めてしまうことはあれど、そうだと思います。ビジネス的な側面ではさっき話した通り、僕らがフルパワーで回せばなんとかなる。いつも思ってるけど僕は好きでやってるから最悪全部僕がやる。メンバーに関してのことはこれから先どうなるかはわかりませんが、僕はコドモメンタルに所属しているメンバーは全員、アイドルではなくアーティストだと思ってるんです。若さだけを売りにしたコンテンツとしてではなく、この人たちにしかできない表現をする人間の1人として捉えているから、僕はメンバーに「一生面倒を見るつもりだから」と言います。その代わりと言ってはなんだけど、アーティスト側も命をかけて活動してほしい。そうすることで生まれる信頼関係は必ずあると思っています。

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早く新曲が聴きたい

ぜんぶ君のせいだ。
「Natural Born Independent / ロマンスセクト」
2019年2月6日発売 / コドモメンタルINC.
ぜんぶ君のせいだ。「Natural Born Independent / ロマンスセクト」

[CD] 1080円
CMI-0050

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収録曲
  1. Natural Born Independent
  2. ロマンスセクト
  3. Natural Born Independent(Instrumental)
  4. ロマンスセクト(Instrumental)
ぜんぶ君のせいだ。(ゼンブキミノセイダ)
ぜんぶ君のせいだ。
如月愛海(きさらぎめぐみ)、ましろ、一十三四(ひとみよつ)、咎憐无(とがれん)の4人からなる「病みかわいい」をコンセプトにしたアイドルユニット。2015年7月に1stシングル「ねおじぇらす✡めろかおす」を発表し、同年10月に愛知・CLUB Zionにて単独公演を開催。初ライブにしてソールドアウトを記録した。2016年には1月に1stアルバム「やみかわIMRAD」を、11月に2ndアルバム「アニマあにむすPRDX」をリリースした。12月に東京・LIQUIDROOMで行われたワンマンライブ「ぜんぶ僕のせいだ。」で新メンバーの咎憐无が加入。2017年1月には新たに未来千代めねがグループに加わり、同年2月には新体制初のシングル「Sophomore Sick Sacrifice」を発表した。9月に行われた全国ツアー「みんなごとTOUR 2017~2018」の初日公演をもって、のどの不調のため活動を休止していた未来千代めねが脱退。2018年5月には東京・TSUTAYA O-EASTにてワンマンライブ「ロマン無頼IZM」を開催した。また7月には4thアルバム「NEORDER NATION」をリリース。7月から8月にかけては平日限定のフリーライブツアー「MOB MORATORIUM TOUR」を、9月には東名阪ツアー「おぼろばんからからーTOUR」を実施した。2019年1月には東京・Zepp Tokyoにてグループ史上最大規模の会場でのワンマンライブを開催する。また同年2月にニューシングル「Natural Born Independent / ロマンスセクト」をリリースする。

2020年6月15日更新