ナタリー PowerPush - ココロオークション
「聴き手の心の価値を高める音楽」を求めて
大阪在住の4人組ロックバンド、ココロオークションが初の全国流通盤となるミニアルバム「七色のダイス」をリリースする。本作にはライブで人気のナンバーや新たに書き下ろされた新曲など全7曲を収録。粟子真行(Vo, G)の透明感あふれる歌声と聴き手の心を温めるようなメロディが印象的な、バラエティに富んだ作品集に仕上がっている。
ナタリー初登場となる今回は、メンバー4人にバンド結成から現在に至るまでの軌跡とともに、新作「七色のダイス」の魅力についてじっくり語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類
結成のきっかけは大学の軽音サークル
──まずはココロオークションの結成から現在までの流れを振り返ってみたいと思います。皆さん大学で知り合ったんですよね?
粟子真行(Vo, G) そうです。こっちの3人(粟子、井川、大野)は同じ大学の軽音サークルで出会いました。で、ギターの冨山くんは別の大学の軽音サークルに入っていて、軽音サークル同士の交流を経て知り合ったんです。
──ちなみにその頃は軽音サークルでどういう音楽をやっていたんですか?
大野裕司(B) けっこういろいろやってたよね?
粟子 秦基博、スカパラ、Jamiroquai。
大野 なんでもやってましたね。
──コピー中心だったんですか?
大野 そうですね。1つコピーバンドを組んでライブやったら、また別のコピーバンドを組むみたいな。そういうことをずっと繰り返すサークルだったんで。
井川聡(Dr) 僕は管楽器を入れたビッグバンドをやってました。今とは全然ジャンルが違いますけどね。
大野 僕はずっとaikoのコピーをやってたなあ。
冨山吉孝(G) 僕は東京事変からMetallicaまで、なんでもやりましたね。
──では皆さんの音楽的ルーツは?
粟子 僕はもともとゆずが好きで。中学生のときにチューニングもよくわからないのにアコースティックギターで「サヨナラバス」をコピーして。そのあとにBUMP OF CHICKENに出会って、すごい衝撃を受けてめっちゃ好きになりました。あとはフジファブリックやくるりと並行して洋楽も聴くようになったのかな。軽音に入ってからはさらに音楽の幅が広がった感じですね。
──大野さんは?
大野 僕はTHE BLUE HEARTSが大好きで、高校の終わりぐらいからバンドを始めたんです。大学に入ってからは藍坊主と椎名林檎のコピーバンドをやって、特にプレイスタイルはそのへんのアーティストから影響を受けてますね。
──井川さんはどうですか?
井川 実は僕、もともとはそんなに音楽に興味がなくて(笑)。ずっとゲームをやってたんですよ、「ドラゴンクエスト」とか「ファイナルファンタジー」とか。そこからたまたまドラクエのサウンドトラックを借りて聴いたら交響楽が好きになって、高校までトランペットを吹いてたんです。そうこうしてるうちに高校の英語の先生からThe Beatlesを教わって「バンドやりたいな」と思って、ドラムをやってみようかなと思ったのがバンドを始めたきっかけですね。で、大学のときはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかむっちゃ聴いてました。
──では最後に冨山さん。
冨山 僕もですね、最初はゆずなんですよ。僕の場合はクラシックギターを始めたんですけど、そこから粟子くんのように健全な道をたどったわけではなくて、メタルのほうに走ってしまったんです。やっぱりギターを始めたからにはうまくなりたいし。当時は「うまい=速く弾ける」と思っていたんですよ(笑)。そこから音符で埋め尽くされて黒くなった楽譜を探したんです。それが中学、高校ぐらいで、大学に入ってからはいろんな音楽をやるようになって、どうやら「うまい=速い」ではないということがようやくわかったんですよ。プレイスタイルで一番影響を受けてるのはスピッツですかね。
最初の曲作りは携帯の作曲アプリ
──皆さんバラバラなルーツを持ちつつ一緒にバンドを結成することになるわけですが。
大野 僕が言い出して結成したんです。その頃の軽音サークルはほとんど趣味で音楽をやってる人ばかりで、その中で真剣に音楽をやりたいと思っていたのがこのメンバーだったんですよ。
粟子 ちょうどあれやんな、就活するぐらいのタイミングで。軽音も3年生の秋で引退やっけ。
大野 そう。引退を機にオリジナル曲をやるバンドを始めたいと思ってメンバーを集めたんです。
粟子 あと、あれや。冨山くんとまだ出会う前に、軽音サークルの交流ライブが神戸のライブハウス「チキンジョージ」であって。そこで演奏したときにブッキング担当の方から「君、いい声してるね! 絶対にオリジナル曲でバンドやりなよ。はい、名刺。連絡ちょうだい」みたいに声をかけられたんです。で、そんなん言われんねやったらちょっとやってみようかと。
大野 そう、ちょうどみんなをバンドに誘ってた時期に。
粟子 重なって。これ、なんかあるんかもしれへんな、みたいに思って。しかもチキンジョージっていうたら、僕らからしたらめっちゃデカい箱で聖地というか。そこの人に声かけてもらって、すごいびっくりしましたね。
──その後押しがあって、オリジナル曲を作ってみようと。
大野 そうですね。
──でもオリジナル曲なんてそんないきなり作れるものでもないですよね。
井川 そうなんですよね(笑)。
粟子 僕はもともと高校のときから軽音楽部に入っていて、趣味でカセットテープにダビングを重ねる超アナログな宅録をやってたんです。その影響もあって、いざバンドで曲を作ろうってときに携帯の作曲アプリで(笑)。
──えっ、本当ですか?(笑)
粟子 はい。アプリでメロディを作って、そこから完成したのが今回の「七色のダイス」で1曲目に入ってる「ナゾノクサ」っていう曲なんです。
冨山 しかもガラケーだったよね、あれ。
粟子 そうやんな。ガラケーや。
──それは頭の中に浮かんでくるメロディをそのまま打ち込んでいったわけですか?
粟子 そうですね。基本はメロディと一緒にリズムも頭の中で鳴ってるので、それを必死に表現しようとしたら夜が明けちゃったみたいな。ふふふ(笑)。
収録曲
- ナゾノクサ
- ワールド
- 夢の在り処
- Answer
- 君の魔法
- バタフライ
- 蝉時雨
ココロオークション
2010年7月、大阪在住の大学生4人で結成されたロックバンド。メンバーは粟子真行(Vo, G)、冨山吉孝(G)、大野裕司(B)、井川聡(Dr)。関西地区でのライブ活動を経て、2011年5月には過去に→Pia-no-jaC←、アシガルユース、蜜などを輩出した大阪・knaveの“GOLD MEMBERS”に選出された。同年には「MINAMI WHEEL 2011」「見放題2011」といったイベント出演を経て、関西最大の音楽コンテスト「eo Music Try 2011」でグランプリを受賞。2012年3月にはアルバム「TICKET」、翌2013年3月にはミニアルバム「深海燈」をライブ会場限定で発売する。その後も活動の幅を広げ、同年4月には同年代の仲間たちと「宇宙フェス」を実施。2014年3月、初の全国流通盤となるミニアルバム「七色のダイス」をリリースする。