心にフィットした「ナナイロライト」

──ライブのセットリストに関しては、お二人も考えたんですか？

日南　私たちは大まかな方針と言うか、やりたいことを伝えただけで、そこはお任せしてました。ただ、いただいたセットリストを見て「ポメグラネイト」からライブが始まるのに驚いて。これ、きっとファンの方々もビックリしたと思うんですよ。

小澤　確かに。ちょっとヘビーな曲だもんね。

日南　ただちゃんと曲の並び順にも意味があって。「ポメグラネイト」って、ここなつがアイドルとして活動する中で落ち込んでいた時期のことを歌った曲なんです。「ひなビタ♪」のストーリーの中でも初期のほうに位置する曲で。それを打開するかのように「Finally Dive」「さよならトリップ～夏陽 EDM edition～」という盛り上がる曲で畳みかけるっていうのが、「もうこれしかない！」っていうくらい掴みがよくて。

小澤　ダンスミュージックで始まって、ここなつのかわいらしい曲を集めたゾーン、あとここなつは中華料理店で働いているので中華をイメージした曲を集めたゾーン、そして2人それぞれが歌うゾーン。私たちのリクエストに応えてくれつつ、TOMOSUKEさんがしっかり構成を考えてくれたんです。

日南　ファンの人もまさか初ワンマンでこんなに曲をやるとは思っていなかったみたいだったよね（笑）。

小澤　喜んでもらいたかったから曲数で妥協したくなかったんですよね。みんなのお気に入りの曲を聴いて帰ってほしかったし、私たちもなるべく多くの曲をワンマンで届けたかった。

──お二人がワンマンで披露して、特に思い入れが深くなった曲はありますか？

日南　私は「コンフェイト*コンチェルト」ですね。ワンマンライブを通して、お客さんと1つになれた曲がどれか考えたときに、思い浮かんだのがこの曲。

小澤　みんなが「フッフー」って合いの手を入れてくれたんだよね。

日南　あれ、いつの間にみんなで合わせてたんだろう。ライブで初披露だったのに。

小澤　私はどの曲かなあ。初めてのイベント出演で歌った「バイナリスター」も思い入れがあるし、「ロンロンへライライライ！」の大合唱がすさまじくて気持ちよかったし……。「ツーマンライブ」とか「キモチコネクト」とかは、みんなが大事にしてくれていることを感じられたし……。

日南　全部よかったってことだね（笑）。それでも1曲に決めるとしたら？

小澤　うーん。やっぱりアンコールの最後に披露した「ナナイロライト」かな。ここなつのストーリーって挫折もあれば希望もあって、山あり谷ありだったと思うんです。で、私たち自身も多少なりとも山あり谷ありがあって、「ナナイロライト」はここなつと私たちのそれぞれのストーリーが結び付いた気がした曲なんです。ライブの最後に歌っていてすごく心にフィットしたし、歌いながら泣きそうになってしまいました。

ここなつは現実だ！

──ここなつの曲は音楽ゲームの提供曲として作られているものがほとんどですから、そもそもライブで披露されることを想定していないわけですよね。

小澤　「この曲歌えるの？」って思われているような曲にも果敢にチャレンジしました。「キリステゴメン」とか、ありえない難易度なんですけど「これをライブで披露したら絶対喜んでもらえるだろうなあ」と思って。

日南　自分たちの限界を突破したよね。

小澤　レコーディングのときは何度もテイクを重ねて録っているし、特に私が演じている心菜というキャラクターは声を張ったり、やけにリズムに乗ってしまったりするとキャラクター性がブレてしまうんですよ。いかに初々しく、柔らかく歌いながらも音痴過ぎてもいけない、みたいな微妙なさじ加減が必要で。ライブだとある程度声を出さないとマイクに乗らないし、けっこう試行錯誤しながらライブに向けて練習してきました。

日南　夏陽は私の声をちょっと幼くした感じの声なので、そこまで歌いにくくはないんですけど、心菜をどれだけ乗せてあげられるかっていうのがライブでの夏陽の役割だなって考えて。夏陽が出すぎちゃいけないし、心菜が歌っているときにどれだけ盛り上げ役に徹することができるかとかを考えながらパフォーマンスをしてました。

小澤　ゆりちゃんはメチャクチャ歌がうまいから、生で聴いててすごく引っ張ってもらえるんですよね。実はレコーディングのときも、ゆりちゃんが先にレコーディングをしてるとすごく歌いやすいんです。

日南　私は逆で、亜李ちゃんが先に録った状態でレコーディングしたほうが歌いやすいんです。亜李ちゃんはキャラクターを出すのがとても上手なので。

小澤　何をおっしゃいますか（笑）。

日南　ただキャラクターの声で歌うんじゃなくて、亜李ちゃんは心菜というキャラクターを歌で表現するのが上手なの。聴いているだけで「心菜はここで首をかしげているんだろうな」とかが目に浮かぶんですよ。そうすると私も歌に表情を付けやすくなる。

──お話を伺っていて、夏陽と心菜というキャラクターの関係性と、日南さんと小澤さんの関係性が似ているような気がしました。

小澤　私たちの関係性とマッチしてると思うし、レコ―ディングのときに何度も言われたのは「2人の声って相性がいいよね」ってこと。こうやってゆりちゃんと2人でここなつを演じ続けられて、ワンマンライブまでできて、奇跡みたいな巡り合わせをこれから先もずっと大事にできたらいいなって思っています。

日南　ワンマンライブの感想をいろいろ見ている中で、「ここなつは現実だ！」とおっしゃっている方がいて。すごくうれしかったですね。

小澤　うん。ちゃんとここなつを現実にできたのは誇っていいよね！

手作りの羽衣

──Blu-rayでライブを観返す中で、お二人が手にしていた小道具も見どころだと感じました。

小澤　ステッキとか夏陽ちゃん人形とか、全部手作りなんですよ！ あと、実は夏陽ちゃん人形には1号があるんです。

日南　うん。1号はちょっと顔のバランスに個性があったんですけど、「こんな顔じゃない、もっとこうだ」「ここをこうした方がいい」みたいな意見があって。たった1曲のための小道具なのに、みんなキャラクターに対するこだわりが強くて。

小澤　1号はゆりちゃんに引き取っていただきました。

日南　いつもウチの猫と一緒に寝ています（笑）。

──「ヒミツダイヤル」のときにお二人が身に付けていた羽衣は、日南さんの手作りだと伺いました。

日南　そうなんです。亜李ちゃんがいない練習の日にTOMOSUKEさんとスタッフさんの間で「羽衣がほしいね」という話になって。「バラエティショップに羽衣を買いに行く」って言うんですけど、バラエティショップに羽衣なんて売ってるわけないじゃないですか（笑）。だから私が帰りに手芸屋さんに寄って布を買って、それをもとに自分で作ったんです。

小澤　実はライブ用に指を通すリングが付いているんですよ。そういうのもゆりちゃんが手作りで用意してくれたんです。

日南　そんなに大変じゃなかったから（笑）。ライブのイメージに合う布を選ぶのが一番大変だったかな。

──衣装もかなりこだわっていましたよね。「EDP」出演時の衣装からもアップデートしていたとか。

小澤　「クリア素材のある衣装が着たいです！」ってリクエストしたら「EDP」のときの衣装をカスタマイズする際に、そのリクエストを反映していただいたんです。より派手にかわいくなりました。

日南　ここなつは中華料理店で働いているという設定なので、ライブではチャイナ服を着させてもらったんですけど、普通のチャイナドレスじゃないんですよ。チャイナドレスというより、カンフー用の衣装に近いような。とにかく動きやすくて軽いんです。

小澤　生地はもちろん、飾りとかも高級感があって、すごくきれいなんです。ライブ中、落ち着いて皆さんにお見せできないのがもったいないくらい。またあの服を着てライブがしたいなあ。

日南　あと白いワンピースの衣装は「ミライプリズム」のジャケット写真に描かれているワンピースを再現してもらったんです。シンプルに見えるんですけど、細部にフリルを付けてもらっていて、すごくかわいい仕上がりなんです。「ツーマンライブ」と「キモチコネクト」の2曲は私たちもまっさらな気持ちで歌いたい曲だったので、それにピッタリ合った衣装を作っていただいて、本当に感謝しています。