すべての音に意志がある
──サウンドの雰囲気はコアラモード.の新たな表情を感じさせてくれる仕上がりだと思います。全体的に風を感じさせてくれる心地いい雰囲気ですよね。
小幡 もっともっと新しいことに挑戦していきたいと思っているので、コロナ禍で自分なりに研究していたことを加味しながら、歌詞やメロディのみならず、サウンドやレコーディングのアプローチに到るまでいろいろこだわって作ることができたと思います。今回は3曲とも、5周年という節目を経て切った“新たな舵“というニュアンスを感じてもらえるんじゃないかなと思います。
──具体的に新たなトライをしてみたのはどんな部分なんですか?
小幡 例えば、アコースティックな音像の中にデジタルなエッセンスをどう混ぜていくのかという部分でのトライはありました。最近の流行の曲を聴くと、そこのさじ加減のセンスがすごく問われている気がするんです。なので今回は生のドラムの上にあえて打ち込みのドラムを重ねてみたりしたんですよ。そこに関してはかなり試行錯誤をしました。
あんにゅ すごく好きなアレンジになりましたね。最近の小幡さんのサウンド作りには今まで以上に信頼を置いているので、本当にもう何も言うことがない感じでした。すべての音に意志があって、そこにある意味が感じられるサウンドだと思います。ただ、歌うのは今までで一番難しかったんですよ。聴き心地は軽やかでさわやかなんだけど、実際歌ってみると曲のテンポが思ったより速く感じるという。しかも言葉はすごく繊細ですしね。ニュアンスを付けて歌うのが難しかったので、今回はかなり練習で歌い込んでからレコーディングに臨みました。
──メロディ自体、コアラモード.ではちょっと今までになかった感じですしね。
あんにゅ そうそう。ありそうでなかったメロディかもしれない。
小幡 専門的なことを言うと、16分音符を多用しているので、ゆったり聴こえるけど、けっこう細かく動きながら流れていく感じのメロディなんですよね。
あんにゅ うん、それが難しかった(笑)。
小幡 でもそういうギミックがあるから、おっしゃっていただいたように風を感じるような軽やかさが曲に生まれているんですよ。そういったメロディの構築の仕方は、今後もコアラモード.としていろいろ試していきたい部分ではありますね。
──最後にちょっとだけ表情が変わるアウトロもすごくいいなと思いました。
小幡 ああ、そこもこだわりなのでうれしいですね。今回はアウトロが2段階になっていて、転調したあとに風が吹き抜けるようなアウトロ2があるんですよ。それってある種、抽象的な描写でもあるので、今まではわかりやすさを重視して避けてきたりもしたんですけど、今回は曲の余韻を感じてもらう演出としてあえて入れてみたんです。
あんにゅ 最初はなかった部分だし、実際付け足すかどうかもかなり迷ったんですよ。小幡さんにすごい相談された(笑)。
小幡 そうそう(笑)。「これ入れるべきかな、どうかな?」ってね。
あんにゅ で、私は「入れたほうがいいよね」って言いました。「ネモフィラ」は情景を意識して作った曲なので、最後にそよ風が吹く画が浮かぶアウトロがあったほうが絶対いいと思って。私はそこでネモフィラの花が風で揺れている景色が浮かびます。
──あと、個人的には2コーラス目のAメロにある「言葉と言葉のあいだに流れる優しい風が好き」という歌詞がすごく好きで。最近Twitterなんかを見ていると、言葉と言葉の間にギスギスした空気を感じることが多かったので、この歌詞の部分を聞いたときに「ああ、そうだよな。そうあるべきだよな」と思ったんですよね。
小幡 うれしいなー。確かに僕もさまざまな言葉があふれ返っているTwitterを見ていて苦しくなるときもあって。だからこそ常々思っていることを2コーラス目に入れてみたんですよね。そこを拾っていただけてホントにうれしいです(笑)。
──2コーラス目はアニメのエンディングでは聴けないパートですけど、しっかり届くといいですよね。
小幡 そうですね。音源で最初から最後まで楽しんでいただけたらなと思います。
すべての人たちの未来に光がさしてほしい
──シングルの2曲目には「ちゃんと手をつなごう」という曲が収録されています。歌詞はあんにゅさん、作曲はお二人の共作になっています。
あんにゅ この曲のサビはもともと、CBCテレビさんから「手洗いソングを作りませんか?」という依頼をいただいて作ったものだったんですよ。小幡さんとリモートでメロディを作ったんだよね。
小幡 そうですね。サビのメロディは僕も一緒に考えたので、クレジットが連名になっている感じで。
あんにゅ そこでできた「ちゃんと手を洗おう」という曲はCBCテレビさんでずっと流していただいているんですけど、自分の中ではそのメロディを生かしてフルバージョンの曲をいつか作りたいと思っていたんです。で、そんなときに最初の緊急事態宣言が出て、その最中に安城学園高等学校の吹奏楽部さんがリモートで「ちゃんと手を洗おう」を合奏してくださって。その映像を観させていただいたときに、ものすごく胸を打たれたんですよ。大会やイベントもみんな中止になってしまって、実際に集まって演奏するのもままならない状況の中、部員の皆さんは涙を流しながら一生懸命演奏してくださっていたんです。その姿を受けて、途中まで書いていた歌詞を書き直してこの「ちゃんと手をつなごう」を作り上げたんですよね。本当に泣きそうになりながら作りました。
──学生の方はもちろん、大切な人の存在を噛み締めながら日々を過ごしている人たちにグッと響く曲だと思います。
あんにゅ 夢を持ちながら、大切な人と協力してがんばっている皆さんの思いがちゃんと形になり、その夢に届きますようにという願いを込めました。
小幡 そうだね。僕たちもそうだったように、昨年はみんなが「こんなはずでは」と思って駆け抜けた1年だったと思うので、青春を賭してきた吹奏楽部や野球部の学生の方々をはじめ、すべての人たちの未来にちゃんと光が差してほしいなと思います。アレンジに関してはピアノの伴奏とあんにゅの歌を軸にして成り立っているものではありますけど、全体として優しく力強いサウンドにすることを意識しました。晴れ間が見えて、そこから光が差している景色を感じてもらえたらうれしいですね。
あんにゅ 間奏のシンセソロだったり、5年くらい前だったら使わなかった音を使っているのもポイントです。今までは「ないな」と思っていたものも最近は受け入れられるようになったりして。そういう変化も最近はすごく感じます。
小幡 そうだね。時代の流れによって、アプローチは変化させていかないといけないからね。コアラモード.として、どこまで守ってどこまで壊すかをしっかり見極めることで、自分たちの幅を生み出していけるんだと思います。
6周年以降も“最新のコアラモード.”で
──そしてもう1曲は、あんにゅさんが作詞作曲した「わたしの願いごと」です。
あんにゅ この曲は昨年末にスーパーマーケット・バローのCMソングに使用していただいていたもので。スーパーのタイアップということで、自分が主婦になったような気持ちで書かせてもらいました。
──主婦の方なら確実に共感するであろう、さまざまなあるあるがリアルに描かれていますよね。
あんにゅ そうですね。曲に生活感を出したかったので、家の中をうろうろ歩き回りながら歌詞を考えました。部屋の中に家族の脱いだ靴下が置きっぱなしになっていたので、それをシャツに変えて歌詞に盛り込んでみたりとか(笑)。誰もが経験したことのある日常を切り取って書くことができたんじゃないかなと思います。
──コミカルに描かれていますけど、家族への愛情という大きなテーマもしっかり感じることができます。
あんにゅ 大切な家族を見守り、応援している曲ですね。2番の歌詞なんかは特に、これを聴いた人が前向きになってもらえたらいいなって思いながら書きましたから。
──軽快なサウンドは聴いているだけで笑顔になりますよね。アウトロの“シャバダバ”コーラスも楽しかったです(笑)。
あんにゅ 全体的にはカントリーな雰囲気にしたくて、この曲のアレンジは私からリクエストしました。
小幡 うん。で、最後のコーラス部分はあんにゅといろいろ実験しながら作っていって。
あんにゅ 慣れていないDTMで深夜にコーラスを作り、それを小幡さんの家まで持って行って試行錯誤を繰り返すという。そこでシャバダバも出ましたね(笑)。すごく印象に残るし、陽気な感じがするじゃないですか。
小幡 一瞬、シャバダバがタイトルになりかけたりもしたんですよ(笑)。
あんにゅ 「シャバダバ記念日」にしようか、みたいな(笑)。そんな楽しい雰囲気の中で作ったこの曲が、あまり思い詰めずに楽しみながら日々を過ごすきっかけになってくれたらうれしいですね。
──メジャーデビュー6周年以降のコアラモード.も楽しみですね。
小幡 そうですね。とにかくアウトプットをやめてはいけないなと去年1年通して思ったので、皆さんとつながれる機会をもっともっと模索していきたいです。新しい曲もどんどん聴いてほしいですし。6周年以降も最新のコアラモード.で皆さんに楽曲を届けられるようにがんばります。