「ANARCHY IN THE U.K.」はちょっとしたギャグ

──カップリングのSex Pistols「ANARCHY IN THE U.K.」のカバーは、タイアップシングルに対するカウンター意識が反映されたものでもあるんですか？

武井　そういうふうに捉えてくれる方がほかの取材でもいたんですけど、ちょっとしたギャグみたいな感覚ですね（笑）。

──ギャグにしては仕上がりがよすぎるでしょう。現代的なシンセポップの方法論でオリジナルパンクをアップデートしていて。

武井　ありがとうございます。一応、DVD付きの盤もありますけど、ワンコインシングルなので。あくまで「For You」がメインだから、カップリングにガチンコの新曲を入れても散漫になると思って。アレンジは八木くんとタカハシさんに丸投げしたんですよ。原曲が超パンキッシュなサウンドだからか、ちょっと打ち込みに変えるだけで相当聞こえ方が変わるんですよね。

八木　タカハシさんのシンセに対するモチベーションが上がってるのを実感できてよかったです。ソロのフレーズも面白いノイジーさが出ていて。シンセプレイヤーっぽくなってきたなあって（笑）。

タカハシ　シンセのソロが2回あって、1回目のソロは八木さんで、2回目は私に任せてくれるということで。私のソロは好きにやっていいよって武井さんが言ってくれたので、八木さんがどう出てくるか楽しみだったんですよ。そしたら音色がけっこう似ていて、考えてることが同じだなって笑ったんですけど（笑）。初めてシンセに触れたのはこのバンドに加入してからだから、最初は鍵盤を弾く指の動きに意識がいっていたんですけど、最近ようやく音色を作ることに楽しさを見出せるようになりましたね。

もっとムダなことをやりたい

──現時点で言える範囲でいいので、改めて次のアルバムに向けてどういう意識で制作に臨んでいるかを聞かせてもらえたら。

武井　やっぱりポップすぎないということがテーマになるのかな。「MANTLE」は今になってみるとすげえムダがないアルバムだったなという印象で。だから、次はもっとムダなことをやりたいですね。「Oh Yeah!!!!!!!」と「For You」からは全然連想できないタイプの曲が多くなると思う。今まで使ったことのないコード進行を試したり。今話していて思いましたけど、やっぱり遊んでる曲が一番いいですよね。四の五の言わず遊びます。

八木　そこで思うのは、例えばフェスに出ると、シングルの曲とYouTubeにアップされてる曲、あとはアルバム曲をちょっと入れたらそれでセットリストが埋まっちゃうので。だから、シングルを入口にして、アルバムを聴いたときに「こういう曲もあるんだ！」って驚きを与えられたらいいと思うんですよね。シングルだけでバンドの全部を表現するのは難しいし。

武井　せっかくなら「Oh Yeah!!!!!!!」と「For You」が浮くくらいの曲をいっぱい作ったほうが面白いしね。

──うん、浮かせるなら徹底的に浮かせたほうがいいと思う。シングルに大きなタイアップが付いたことの意味もそこで増すと思うし。

武井　そうですね。ちょっと大きなタイアップが付いただけでTwitterとかで「あいつら魂を売った」みたいなことを言うやつがいるから。怖いですよ、人が（笑）。

──そういう人たちはまともにチェコの曲を聴いてなかったりするんじゃないですか？

武井　そうなんですよ。そうなんだけど、そういうのを見ると傷付いちゃうんですよね（笑）。

砂川　そうなるんだったらTwitterやめたほうがいいでしょ。

武井　やめようかな。でも、そしたら世間から忘れ去られるんじゃないの？

砂川　どう思うかはその人の自由だし、いちいちネガティブな発言に気を取られてもしょうがないじゃん。

──ホントに。そういう感じになるんだったらこれから出会うリスナーに意識を向けたほうがいいと思うけど。

武井　そうですね。早くその人たちに会いたいです。