音楽ナタリー PowerPush - Czecho No Republic
やっと鳴らせた5人の音
Czecho No Republicのメジャー2枚目となるアルバム「MANTLE」が完成した。前作「NEVERLAND」のリリース以降に覚えたという苦悩をバネにして、本作ではこの5人のメンバーだからこそ見いだせた自由なクリエイティビティとポップネスを思い切り解放している。今回は武井優心(Vo, B)、八木類(G, Syn, Cho)、タカハシマイ(Cho, Syn, Per)の3人に「MANTLE」を完成させるまでの過程と現在のモードを語ってもらった。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) インタビュー撮影 / 堀弥生
リスナーに「詐欺」みたいに言われるのが悔しかった
──音楽的にもマインド的にも解放と自由を示すアルバムだなと思いました。改めてこのバンドが鳴らすポップミュージックの独自性を検証し、再構築するような制作だったんじゃないかと。
タカハシマイ(Cho, Syn, Per) 前作は再録もあったりしたので、私と砂川(一黄 / G, Cho)さんが加入してから初めて全曲イチから作ったアルバムになるんですよね。だからこそより5人の色が出た作品になったと思うし。
武井優心(Vo, B) 俺もそれが言いたかった。
タカハシ なんだよ(笑)。
──そんな武井さんはどうですか? 完成してみて。
武井 「NEVERLAND」ではインディーズ時代の曲を9曲も録り直して。それは悪い言い方をすれば、4人編成時代の、4人用に作った曲を無理やり5人で鳴らしたみたいな感じなので。一方で、今作は全部5人用に作った曲だから、そこは大きく違いますよね。この5人が機能したし、この5人でやるべきことがやっとできたっていう感じです。前作は、例えば「MUSIC」で俺とタカハシさんがスイッチボーカルをやって。それを気に入ってバンドのことを知ってくれたリスナーもいたんですけど、過去曲の9曲の中ではそういう遊びはできなかったので。「MUSIC」で知った人に「なんでもっとタカハシマイを出さないんだ」みたいな文句を言われたりとか。俺もそうするつもりなのにそれができなくて、リスナーに「詐欺じゃん」みたいに言われるのが悔しかったりして。
──詐欺ではないけどね(笑)。
武井 いや、でもAmazonのレビューとかそれに近いこと書いてあったんです。それを見てめっちゃイラッとして。昔からのファンからすると「5人だと音が多すぎじゃねえか?」みたいな言い方をする人もいたし。だから早く新しいアルバム出したいなってずっと思ってましたね。5人がしっかり機能してるアルバムを。
──そういう怒りや不満がこのアルバムを作る原動力にもなったんですか。
武井 なりましたね、はい。前作をリリースしてから半年くらい落ち込んでたんで。
──そんなに食らってたんだ。
武井 スーパーメンタル弱男(よわお)なんで。
八木類(G, Syn) みんな落ちてましたね。過去曲を再録するという行為とお客さんとのギャップをすごく感じて。「これはいつの作品なんだ?」みたいな。ライブのときもそのギャップに苦しんだし。
タカハシ 新曲があって、それを披露したい気持ちはあるんだけど、再録曲をやらなきゃいけないみたいな。
──「NEVERLAND」のツアーだし。
武井 そうそう。セトリも1年以上変わらなかったし。また1曲目「Call Her」かみたいな。
八木 これがもっとキャリアのあるバンドだったらいいんですけど、まだ駆け出しの身でもあるので。どんどん新しいことをやりたいなって思うんですよね。でも、状況的になかなかできなかったっていう。
お客さんとバンドの間に生じた誤差を縮める
──「NEVERLAND」のリリース以降にそういういろんな誤差が生じることは想定できなかったんですか?
武井 いやあ、当時はできてなかったですね。けっこう目まぐるしかったので。そうこうしてるうちにどんどんジレンマに陥って。「NEVERLAND」がリリースされて、そこで知った人がライブに来てくれるんですけど、俺らはもう「NEVERLAND」の次に行っていて。タイトル曲の「NEVERLAND」は新曲だからいいんだけど、録り直した9曲は卒業アルバムを見てるくらいのテンションだったんですよね。でも、ライブでは「NEVERLAND」の曲をやらなきゃいけないしがらみがあって。新曲がいっぱい溜まったからちょっとライブでやってみようと思って、今作に入ってる「Clap Your Hands」みたいなちょっと暗めなエレクトロポップをやったらシーンとなるし、ラテンっぽい曲をやってもシーンとなって。お客さんが求めてるものと自分たちがやりたいことの差が開いてきちゃったなって。
──バンドがそういう葛藤を抱えている間にツッコミも入ってくるし。
武井 そう。ツッコミどころが増えちゃったんですよね。俺が描いてた理想のバンド像とは違うような感じになって。なんか、守りに入ってるような。俺はスッポンポンでもいいから走ってるようなバンドにしたかったんですよ。「財産ないっす」みたいな感じでもいいから。
──宵越しの金は持たねえみたいな。
武井 そうそう。でも、気付いたら守ってる感じが出ちゃってると思って。これはヤバいなと。
──今作をセルフプロデュースにしたのも、もう一度理想のバンド像を描き直すためでもあった?
武井 そうです。呼吸を整えたかったので。この5人でちゃんとやれることを提示したかった。平気で「プロデューサーがいないとダメなんじゃない?」みたいなことを言う人もいるんですよ。だから、「いや、そんなことないよ」っていうのを見せたかったんですよね。あとはもう自分を言い逃れできない状況に追い込みたかったんです。このアルバムで今一度、お客さんとバンドの間に生じた誤差を縮めようと思って。
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- ニューアルバム「MANTLE」/ 2014年7月16日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円/ COZP-937~8
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円/ COZP-937~8
- 通常盤 [CD] 2940円 / COCP-385922
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CD収録曲
- Amazing Parade
- No Way
- Clap Your Hands
- Crazy Crazy Love
- Field Poppy
- JOB!
- Summer Love
- Arabia
- Hello, My Friend Sophie
- Melody
- Changing My Life
- Maridabu
- 2014年宇宙の旅
初回限定盤 DVD収録内容
- “ENJOY! NEVERLAND Release Tour LIVE AND DOCUMENTARY”
- 2014.02.02 Live at Ebisu LIQUIDROOM(ネバーランド / レインボー / トリッパー / Clap Your Hands / MIKA / 国境 / MUSIC / Festival / ダイナソー / ショートバケーション)
- Czecho No Republic
「MANTLE TOUR ~2014年宇宙の旅~」 -
2014年8月19日(火)埼玉県 Livehouse KYARA
<出演者>
Czecho No Republic / Kidori Kidori -
2014年8月21日(木)千葉県 千葉LOOK
<出演者>
Czecho No Republic / go!go!vanillas -
2014年8月22日(金)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
<出演者>
Czecho No Republic / The Flickers -
- 2014年9月19日(金)北海道 札幌KRAPS HALL
- 2014年9月22日(月)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2014年9月23日(火・祝)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2014年9月27日(土)広島県 ナミキジャンクション
- 2014年9月28日(日)福岡県 DRUM Be-1
- 2014年10月3日(金)大阪府 BIGCAT
- 2014年10月4日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2014年10月10日(金)東京都 赤坂BLITZ
Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)
武井優心(Vo, B)、山崎正太郎(Dr, Cho)の2人を中心に2010年3月結成。その後吉田アディム(G, Syn, Cho)、八木類(G, Syn, Cho)を加えた4人編成となり、2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリースする。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表。2012年8月に吉田がバンドを脱退し、2013年1月にサポートメンバーだったタカハシマイ(Cho, Syn, Per)、砂川一黄(G, Cho)が正式メンバーとして加入した。同年10月、2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューを果たす。2014年7月にはセルフプロデュースのニューアルバム「MANTLE」をリリース。