ナタリー PowerPush - Czecho No Republic
移動式遊園地「DINOSAUR」
奇跡が起きまくってるだけなんです
──実際に鳴らしている音と、そういうイメージのリンクってどれくらいあるんでしょう? 実際、曲調もキラキラしてて、メロディも幸福感があって、音色はわりとスカスカなところもあって、すぐ終わるという。移動式遊園地のイメージにはすごくピッタリだと思うんですけれども。
うーん、移動式遊園地っていうのも、まあ後付けなんで。曲を作ってるときにはそういうのはないんですよね。アレンジも、基本的にはいろんなものを模索しながら作ってるんですけど、狙ってたようにいかないパターンが多々あって。最終的に全然違う感じになって「あ、こう落ち着くか」みたいな。そっちのほうが多いですね。
──なるほど。じゃあ、完成形をイメージして曲を作っていくより、その場その場でこの音を乗っけてみたら意外にハマったという感じで作ってる?
ほんとそうなんですよ。だから多分、ぶっちゃけ俺に才能なんて全くないと思ってて。奇跡が起きまくってるだけなんです。アレンジしてる中で「またいい音に出会っちゃった」みたいな。それで「ああ今日も生かされた」って(笑)。
──そうなんですね。いい音が向こうからやってくるような感じ?
そう。向こうからやってきます、はい。「俺の力かな、ほんとにこれ?」みたいな感じですね。
流行を追いかけるような音楽は一生やんないと思う
──チェコって、海外のインディロックシーンとリンクした音楽性というふうによく言われますよね。実際そういうセンスもあると思うんですけれども、そこに関しては武井さんはどう捉えてるんでしょう?
うーん、まず流行を追いかけるっていうことが自分の人生の中で絶対ないっていうのがあるので、「今海外シーンでこういうのが流行ってるからこういうのやってる」っていうような音楽は、一生やんないと思うんですよ。
──なるほど。
でも、単純にやっぱり向こうで流行ってるものがカッコいいので、それにインスパイアは間違いなくされてしまう。単純にリスナーとして、俺たちもこういう空気感あったらいいよねっていう感じで。「これやってるから俺らは最先端だ」とかそういうのは全くないです。The Mirrazみたいに海外シーンとのリンクを伝えようとやってるバンドは、それはそれですごくいいと思うんですけど、俺はそこまで自信ないんで(笑)。単純に自分がいいなと思うものをやるだけです。
──多分、すごく感覚派なんでしょうね。ジャンルやスタイルよりも感覚で音楽を捉えている。で、さっき「移動式遊園地」の話で言ったような、ワクワクする感じと「もう楽しい時間はあとちょっとしかない」という感じの両面があるものにすごく惹かれている、と。だから音楽を作る上でも、必然的にそういうものになる。
うん。まさにそうです。
──そういう感覚って、いつぐらいから好きでした?
そうだなあ……。やっぱり高校生の頃は、パンクとか好きだったんですよ。で、自分もパンクやってみたいと思ってやってたんですけど、肌で感じる似合わなさがあって(笑)。
──ははは!(笑) どういうところが似合わなかったんでしょう?
全然平熱だし、中指立てるべき対象もどこにもないなっていう(笑)。闘争心もないんですよね。で、高校生ぐらいのときすごい好きだったバンドがあるんですけど、すごく暗い感じの歌詞を書くバンドで。いわゆる青春パンクのブームの頃で、みんな「がんばれ」って励ましてる中で「死んでみたらいい」みたいな、すごく暗い感じの歌詞を書いてた。そういうネガティブなものに惹かれたっていうのが、尾を引いてるのかもしれないですね。
Czecho No Republic
(ちぇこのーりぱぶりっく)
武井優心(Vo, B)、山崎正太郎(Dr, Cho)の2人を中心に2010年3月結成。その後吉田アディム(G, Syn, Cho)、八木類(G, Syn, Cho)を加え、4人編成となる。2010年11月にタワーレコード限定でリリースした「erectionary」が高い評価を受け、The Mirraz全国ツアーのオープニングアクトを担当。2011年6月発売の1stシングル「Casually」が話題を集め、同年10月に初のフルアルバム「Maminka」をリリース。2012年6月には2ndミニアルバム「DINOSAUR」を発表した。