「Coming Next Artists」#32 Ryu Matsuyama|すべての答えは「間」にある

Tom-H@ck

パーソナリティ
Tom-H@ck

個性を生かすために曲作りはセッションで

──曲を作るときにジャンルは意識しますか?

Jackson ジャンルは特に決めずに、いつもジャムセッションで作ります。

Ryu 僕らは自分たちのジャンルをずっと探してるので、逆に定義してもらったほうがありがたいと言うか。

──アルバムを1枚聴いただけでもいろんなジャンルの曲があって、「こういうジャンルのバンド」という枠にはなかなか収まらないですよね。

Ryu すごく悪い言い方になっちゃうんですけど、好き勝手やりたいんですよ(笑)。

──いや、めちゃくちゃいいことですよ。

Ryu 音楽のジャンルって多いですし、1つに収めることはできないなと。あと、メンバーそれぞれ年齢とか人格が違って、聴いてる音楽も違ってくるので、それぞれが今聴いているものをどう解釈して、どこを抽出していくかというところが僕らの音楽なんじゃないかなと思っています。

──曲は全部セッションからできるんですか?

Ryu 基本的には。一応僕がなんとなくのコードとメロディは作ってきて。

Jackson(Dr)

Jackson それにあわせてドラムを叩いて、ベースがあわせて。

Ryu 「で、どうする?」みたいな感じですね。そこから詰めていくので時間はかかりますけど、そのほうがそれぞれの個性が出るので。

──今の時代、特に日本ではそういう作り方、珍しくなってきましたよね。

Jackson 普通はデモがあって、って感じですよね。

──そうそう。完成度の高いデモがすでにあって、それにあわせていくほうが最近は多いかもしれないですね。

Ryu 僕のデモもけっこうな完成度なんですけど、手癖が違うからか、2人は全然違うものを鳴らすんですよ。だから「俺が作ってきたデモの意味……」みたいな(笑)。

──全然言うこと聞かないみたいな?

Ryu そうです(笑)。

Jackson 「Take a Piece」とか、デモと全然違うもんね。

Ryu そう。今作に入っている「Take a Piece」という曲は、僕が完璧なデモを作ってきて2人に聴かせたんですけど、1、2回くらいしか聴かなかったし(笑)。

Jackson デモ通りにやってみたんですけど、動きが機械的すぎて人間がやるには難しくて。シンセのパートがあったんですけど、Tsuruちゃんがそこをシンセじゃなくてベースでゴリゴリ弾いてもよかったんで、「じゃあ3人でできるアレンジにしよう」ってなりました。

──Ryuさんはそれを聴いて「こっちのほうがいいな」と思えたんですか?

Ryu そうですね。自分が作っていったデモはもちろんいいんですけど、完璧じゃないのもわかってるし、デモ通りに作っていたらバンドをやってる意味がないですしね。このバンドを始めた頃はけっこう「この通りにして」とか「ああしてこうして」って言おうと思ってたんですけど、2人が持ってくる答えが面白いので言うのはやめようと思って。「こういうふうにくるんだ!」みたいな。

未知なところへ連れていってくれるRyu Matsuyama

Jackson うちらの曲って、1曲も誰かの曲に似てないってことがいいところだと思うんですよね。

──それは僕も聴いてて思いました。

Jackson それって単純にすごいし、アイデンティティでもあるし、好きなところですね。

Ryu 「誰にも似てない曲を作ろう」とか意識はしてないんですけどね。ときどき言われるんですよ、「こんな音楽やるの、勇気あるよね」って。

──それはどういう意味でですか?

Tom-H@ckとRyu Matsuyama。

Ryu 僕も実際はわかってないんですけど……僕は本当にポップスを書いてるつもりなんです。確かにダークな曲やアンビエントっぽい曲もあるので「こういう曲をやる勇気、よくあるよね」って褒め言葉だと思うんですけど、僕は「え、ポップだよ」みたいな(笑)。コード進行もそんなに難しいことはやってないし。だから別にジャンルとかにこだわらずに、自分たちに今できるもの、自分が今作りたいものを作ってる感じです。

Tsuru そうですよね、やっぱ旬なものをお届けしたいですよね。

Ryu そう、自分たちの旬を。あと僕はRyu Matsuyamaとは別に作曲家としても活動していて。クライアントの欲しいものを作れるようになってきて、それはそれで楽しいんですけど、未知なところに連れていってくれるという意味で、やっぱりRyu Matsuyamaのほうが楽しくて。自分が持ってるものとか好みって昔からそんなに変わらないから、知らないジャンルの要素とかって入れられないんですけど、この2人がいろんなエッセンスを加えてくれて、気付いたら知らないところに連れていってくれてると言うか。さっきセッションで曲を作ると言いましたが、スタジオで1回形を決めたあとにライブでやりながら「ああしようこうしよう」って変わっていくこともよくあって。

Jackson そう考えるとRyu Matsuyamaって生き物みたいですね。

──職業作家として曲を作っていく中で、Ryu Matsuyamaのよさがさらに見えたり?

Ryu うーん……僕はRyu Matsuyamaでも商業音楽をやってるつもりですし、ポップだと思っているのでそういう意味での違いはないんですよね。でも自分の中でのバランスはうまく取れてきたなとは思います。いずれにしても「ポップとは何か」というものはずっと探し続けるんじゃないかな。答えは絶対に出ないものだとも思いますけどね。別に「新しいポップの時代を開こう」とかそういう責任感を持ってるわけでもないので、自分がやってみたいことを再現するというやり方でこれからもやっていきたいですね。

──やってることでエネルギーを感じる曲を作ったり演奏していきたい?

Ryu そうです。それこそ音楽の根本ですよね。昔って聴いたものとか観たものに反応してただ踊ったりしてたわけですよね。そういう音楽の源って言われてるものを、あらゆるジャンルの音楽に囲まれている今、再現したい……と言うか、自分なりにアウトプットしていきたいです。

Ryu Matsuyama「Between Night and Day」
2018年5月16日発売 / VAP
Ryu Matsuyama「Between Night and Day」

[CD]
2430円 / VPCC-86168

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TOWER RECORDS

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収録曲
  1. Window
  2. Footsteps
  3. City
  4. That Mad Rad Tale
  5. Istante
  1. Take a Piece
  2. Simply, Something
  3. Return to Dust
  4. Landscapes