「Coming Next Artists」#23 ほのかりん|「傷付きたくて仕方ない」奔放なキャラクターに秘められた繊細な胸の内

菅野結以

パーソナリティ
菅野結以

「愛してる」より「愛してた」のほうが好き。それは真実だから

──「ミスiD」のオーディションで私は審査員をやらせてもらったんですが、第1次審査の場ってものすごく怖いんですよ。応募してきた子の前に審査員がわーって全員並んでて、ちょっと遠くのほうに置かれてるカメラが動画を撮ってて。あそこに立つだけでもすごいメンタルの強さが必要だと思うし、たぶん本当に覚悟を持ってないと立てないと思うんですけど、2日間で何百人も見た中で、りんちゃんが一番堂々としてると思いました。「この子ホントに覚悟決まってんな」って(笑)。

ははは(笑)。

菅野結以

──肝の座り方がほかの子とは全然違ってた。ほかにも歌う子はけっこういたんですけど、ギター持って歌い出したときに「自分がいるべき場所に来た」って感じがあって、めちゃくちゃカッコよかったんです。

懐かしい(笑)。あのときは何も考えてなかったです。「歌詞間違えないかな」くらい。恥ずかしくて結以ちゃんのほうは見ないようにしようと思ってました。

──うん、全然目合わなかった(笑)。

絶対に目線逸らさずにカメラと小林司(「ミスiD」実行委員長)さんしか見ないようにしてました(笑)。緊張して足は震え、ずっと手に力が入らなかったです。でも、あそこに立つことに緊張してたわけじゃないと思う。「こんなところで絶対落ちるわけない」って思ってましたし。たぶん自分のパフォーマンスに対して緊張してたのかもしれない。

──第1審査で歌ったのは「東京」(2017年10月リリースの配信シングル)ですよね。で、最終審査で歌ったのが今回配信された「ふわふわ」でしたっけ?

そうだそうだ! そうでしたね。

──すごい嫌々な感じだったのを覚えてます(笑)。

「もう前の審査でも1回歌ったからいいんじゃないかな」って思ったんですよね(笑)。

──だから「最終審査で歌った曲がリリースされるんだ!」と思って。それを覚えてるくらいインパクトがあったんですよ。1回聴いただけですぐ口ずさめちゃうメロディで、でもどこか変な、一癖あるポップさがあると言うか……。

そんなこと言われて、恥ずかしくて聞いてられないです!(笑)

──オーディションでその2曲を歌った理由は?

「東京」は自分の中ですごい特別な思いがあって、今まで作った曲の中でも大事にしてます。一番好きな曲かもしれない。だからオーディションで歌うことは最初から必然でした。「ふわふわ」はなんでだっけかなあ……作りたてで歌いたかったのかもしれないです。

──「東京」に思い入れが深いのはなぜ?

なんて言えばいいのか難しい……人生の中で一番好きだった人に書いた曲なんですよ。しかも自分が一番ダメだったときに書いたから、余計に思い入れがありますね。

──今聴ける曲をいくつか聴かせてもらって、「りんちゃんはずっと愛を求めて歌ってるんだな」と思いました。

ねえ……なんかかわいそうな子みたいですよね?

──ははは(笑)。だから、人生の中で「愛されること」「愛すること」が何よりのテーマなんだろうなって。

いや待って! 恥ずかしい! ……そうなんです(笑)。今アルバム作ってるんですけど、入れる曲を全部見ると「愛」って言葉が入ってない曲がないんですよ。でもそれ以外のことは書けない、と言うか、どんな話でも全部愛に置き換えてしまうんです。結局自分の中で一番大事なのは愛なんですよ。きっと「ミスiD」に出て愛されたかったんです(笑)。

──自分が音楽で表現しようとしてることをひと言で言うなら、やっぱり「愛」に尽きるって感じ?

そうですね。でも「愛してる」より「愛してた」のほうが好きです。

──悲しい(笑)。

過去形のほうが確実な真実じゃないですか。「愛してる」なんて、これから嘘になるかもしれないのでそれが嫌です。だから「愛してた」って歌うことが多いんだと思う。

傷付けられたい。傷付きたくて仕方ない

──曲はどんなときに考えるんですか?

人と会ってるときが多いかもしれないです。まさにこうやって話してるときに、急にメモにワーッて書いたりしてます。

──最初から作れていたんですか?

作れてたのかな?

──「東京」は曲を作り始めた最初の頃の曲とのことですが、すでに完成度が高いなと思ったんです。

高いですか?

──と思いますよ。自分でも気に入ってるんですよね?

ああ確かに。たぶん、曲を作り始めた頃より今のほうがマシなものを作れてるかなと思っています。

──と言うことは、自分の中で成長を感じるんですか?

ですね。初めて作った曲も失恋ソングだったんですけど、別れたあとに送る最後のメールについての歌詞だったんです。どこで出会って、どこでフラれてみたいな(笑)。それを思い出すとすごく成長したと思います。

ほのかりん

──最初から一貫して失恋を歌ってるんですね。自分が傷付いたときのほうが曲が生まれやすかったりするんですか?

傷付きたくて仕方ないんですよ。傷付けられたい。

──「傷付けられたい」。もう見出しはこれで決まりですね(笑)。

基本的に他人を信用していなくて、傷付けられることを前提に人付き合いをしているんです。「そこで裏切るんだ!?」みたいな扱いをされるのが好き。悲劇のヒロインでいたいんだと思います。隅っこで三角座りして泣いてる自分が好き。

──幸せな歌を作ってみることには興味はないんですか?

「幸せってなんですか?」って思っちゃうんです。私にはそれがわからないし、人の幸せに興味ない。

──りんちゃんってすごい奔放で豪快なキャラクターだけど、曲を聴いてるとめちゃめちゃ繊細で脆くて。そういう部分を見破られないように守るための豪快さなのかなって、曲を聴いて感じました。

恥ずかしい恥ずかしい(笑)。

──だから、りんちゃんにとって歌が一番素直な面なんだろうなって。でも、ここまで赤裸々に書いてもらえると、聴いていてすごく気持ちがいいんですよね。「そうそう!」って共感できる。

いや、なんかすみません(笑)。

ほのかりん「ふわふわ」
2018年2月28日配信開始
ほのかりん「ふわふわ」
収録曲
  1. ふわふわ