「君が大切にしなきゃいけない今はもう始まってるよ」

──粟子さんお気に入りの1曲は？

粟子　僕は「砂時計」かな。前作「夏の夜の夢」のときから、僕はココロオークションの一員として歌う意味をずっと考えてて。「蝉時雨」とか「線香花火」で歌っていたことを改めて見つめ直していく中で、その答えとして見つかったのが「君が大切にしなきゃいけない今はもう始まってるよ」ってこと。これを伝えるために僕はバンドをやって歌っている。そのテーマをしっかり落とし込めたのが「砂時計」なんです。

──「砂時計」、もう1度聴き直したくなりました。

粟子　僕の今の思いがちゃんと乗せられた曲だと思っています。

──井川さんのお気に入りの曲は？

井川　「妖精のピアス」ですね。これは完全に僕が大好きなリズムなので叩いててすごく気持ちいいんです。それにライブで披露している光景がすごく浮かんでくる曲でもあって、早くこの曲でみんなが踊っている姿を観たいです。

──僕、ライブですごく「musical」を観たいんです。この曲は1曲目に披露してほしいって勝手に思ってます。

粟子　「musical」が1曲目か。

大野　全然ありやな。

──ライブでどう披露するかはもう考えているんですか？

大野　構想はまだ練っているところですが、僕らにとって革新的な1枚ができたと思っています。まずCDを聴いてみんなビックリすると思うし、「これライブでどうなるんやろ？」っていろんな可能性を感じてもらえると思うんです。その期待をいい意味で裏切りたいし、4人の音楽を突き詰めて曲のよさを何倍にもしてライブで伝えたいと思ってます。

表現する人に聴いてもらいたい

──それとアルバムにインスト曲が入っていることにもビックリしました。

粟子　「あれ、歌がない」って？（笑）

──はい。これまでのココロオークションにはなかったアプローチですよね。

大野　そうですね。まず僕らは「音楽ってなんやろ」って考える中で「Musical」というタイトルを付けたんやけど、インスト曲を作るようになったのはこのタイトルの影響があって。一般的なイメージの「Musical」は舞台のイメージだから、「Entr'acte」とか「Interlude」とか舞台で使われている言葉を曲名に付けて、ひと呼吸置けるような構成にしたらアルバムの世界観がグッと濃くできるんじゃないかなと考えたんです。

この4人はすごく面白い

──「音楽とは何か」という根源的な問いを追い求めながら、ココロオークションはこれから先どんな表現をしていくんでしょうか？

粟子　僕自身もまだわからないんですよね。ただ僕は「Musical」を作る中で、これまでの自分とかを全部一旦捨てることができて、1人のアーティストとして自由になれたと思っていて。自由すぎてこれから先、どんなことでもできるって気持ちでワクワクしています。

井川　4人がホンマに自由に音楽ができるようになったことで、ようやくスタートラインに立ったんだと思っています。ここから先、気を引き締めて進んでかなきゃいけない。

大野　簡単に言ったら「音楽は何か」と考えることは、基礎やと思うんです。音楽を作る者が当たり前のように考えていなければならない “礼儀”と言うか。それを僕らはやっとやれるようになったし、逆に言えばこの“礼儀”さえ守っていれば何をやってもいいような自由を得た。これから先に何が生まれるか僕にはまだわかりませんが、そこで大事なのは人間性かなと思っていて。その点、僕はこの4人がすごく面白い人間の集まりだと思ってるから今後も楽しみです。

テンメイ　自分たちが求めていく方向性が今回でかなり変わった気がするんですよね。バンドとしてこれから先どうなっていくのか、自由になったからこそ先のことは予想できないですけど、僕らは今4人が同じところに立っていて、同じ方向を向けるようになったっていうのは感じています。