- パーソナリティ
- 菅野結以
「Coming Next Artists」の第9回にはシンガーソングライター・あいみょんが登場。兵庫県西宮市で生まれ育った彼女は死生観や生々しい恋愛などをテーマにしたセンセーショナルな楽曲でSNSを中心に注目を集め、2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でunBORDEからメジャーデビューを果たした。2017年5月には2ndシングル「愛を伝えたいだとか」でファンクネスなサウンドに挑戦し、これまでのイメージを一新。8月に発表した3rdシングル「君はロックを聴かない」は全国42局のラジオ局でパワープレイを獲得した。
今回はインタビュアーを菅野結以が担当。あいみょんが9月13日にリリースした1stフルアルバム「青春のエキサイトメント」の話を軸に、アートと音楽の関係性などについても話を聞いてもらった。
取材 / 菅野結以 文 / 清本千尋 撮影 / 上山陽介
- あいみょん
- 兵庫県西宮市出身のシンガーソングライター。歌手を夢見ていた祖母や音響関係の仕事に就いている父の影響で音楽に触れて育ち、中学時代にソングライティングを始める。2015年3月に発表したタワーレコード限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、同年「tamago」「憎まれっ子世に憚る」という2枚のミニアルバムを発表した。2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でワーナーミュージック内のレーベルunBORDEよりメジャーデビュー。2017年5月にメジャー2ndシングル「愛を伝えたいだとか」をリリース。8月に発表したシングル「君はロックを聴かない」の表題曲は全国42局のラジオ局でパワープレイを獲得した。9月に1stフルアルバム「青春のエキサイトメント」を発売。
作品を作りながらその作品が作られる意味を理解したい
──このアルバムを聴いて「青春のエキサイトメント」という言葉がぴったりハマる作品だなと思いました。血が通ってる感じと言うか、着飾らない生の声と言葉っていう感じがすごいして。アルバムが完成していかがですか?
すごい自信作になりました。あと20年後30年後にこのアルバムを聴いたら「あの頃、青春やったな」って思えるようなアルバムになったんじゃないかなって。
──1stアルバムってアーティストにとって特別なものだと思うんですが、どんなアルバムにしようと考えていたんですか?
自由に作品を作るほうが好きなので特にコンセプトは設けませんでした。今、自分が一番いいと思う曲たちと、ファンのみんなが好きな曲を入れたアルバムにしようという思いはありましたね。
──そうだったんですか。
アルバムを制作していく中で、この作品を作る意味を自分で理解していくことが楽しいんですよね。
──ちなみに曲のストックってどれくらいあるんですか?
今は200曲ぐらいあります。その中から引っ張ってきた曲も、アルバムのために新しく書いた曲も、どっちも入っています。
あいみょん流の「リンダリンダ」
──1曲目「憧れてきたんだ」は「私は歌で勝負するぞ」っていう思いを強く示した曲だなと思いました。音も生々しくて、ドキッとする大胆な始まり方のアルバムですね。この「憧れてきたんだ」という曲はタイトルの通り、自分が憧れてきた人を思って作ったんですか?
そうですね。私が憧れた人はもうこの世にはいなかったり、表には出てこなくなってしまった人もいるんですが、そういう偉大なアーティストのことをこれから先に生まれてくる子供たちにも知ってもらいたいなっていう思いを込めた曲です。
──この中で一番新しい曲はどれなんですか?
「ジェニファー」ですね。アルバム制作のタイミングでできあがった曲です。
──すごく印象に残る曲ですよね。この曲はどういう思いで作ったんですか?
この曲はTHE BLUE HEARTSの代表曲「リンダリンダ」について(甲本)ヒロトさんが語ったインタビューを読んでインスピレーションを受けて書いた曲ですね。「この“リンダ”ってどういう存在なんですか?」っていう質問を受けたヒロトさんが「リンダっていうものはなんでもない存在。名前でもないし人でもない。みんなの想像の中で作り上げていくもの」みたいなことを言われてたんですよ。それってすごくいいなと思ったんです。私がこの曲で歌う「ジェニファー」はヒロトさんが言う「リンダ」と同じで、みんなの中にあってほしい存在と言うか……。
──「ジェニファー」はあいみょん流の「リンダリンダ」なんだ。
そういうイメージでした。
──ファンのみんなが好きな曲はどれなんですか?
「ふたりの世界」と「漂白」です。「漂白」は映画「恋愛奇譚集」の主題歌として書き下ろした曲です。「ふたりの世界」はライブですごく人気があります。
ギターを置く日が来るかもしれない
──今作も含め、あいみょんさんのアートワークはとんだ林蘭さんが担当されていますよね。“あいみょんらしさ”の1つにとんだ林蘭さんのアートワークもあるのかなと思うんですが、アートワークはどうやって作っていくんですか?
とんだ林蘭さんが毎日のようにInstagramで作品を発表しているので、とんださんとスタッフさんと一緒にそれを見て次の作品でやりたいアートワークを考えることが多いですね。今まではとんださんからリクエストを受けることはあまりなかったんですが、今回はシングルじゃなくてアルバムだったこともあってか、とんださんから「タイトルを教えてもらえないとイメージが湧かない」と言われたので「青春のエキサイトメント」というタイトルを伝えてから作ってもらいました。
──Instagramを見ながらアートワークを考えるっていうのは“2017年感”がありますね。今回のジャケットだと身近にあるいろんなものが真っ赤に染め上げられています。
ここにあるポップコーンとか全部本物なんですよ。ナポリタンとか生たまごとかを床に並べてスプレーで着色しました。これ、本当にめちゃくちゃ大きな作品で歌詞カードの中で全貌を見ることができます。でもこのアートは生ものがいっぱい使われてるので、撮影が終わったらポイ!なんですよ。
──現物は保存が利かないんですね。あいみょんさんは岡本太郎さん好きを公言されていますが、岡本さんのように美術の道に進むということも考えましたか?
私は岡本太郎の作品はもちろんなんですけど、彼が残した言葉にもすごく影響を受けていて。今は音楽の道を選びましたが、いつかギターを置く日が来るかもしれないと思ってます。人生のタイムリミットがある中でやりたいことがたくさんあるから。もしアートをやるならおっきい作品をどかーんと作ってみたいですね。ただの白い壁に何も考えずにペインティングするとか。
──その様子がそのままミュージックビデオになりそうですね(笑)。あいみょんさんはアートワークもそうですけど、ファッションとか自分のビジュアル面にもすごくこだわりを感じます。
目を引く存在でいたいし、目を引くものを作りたいという思いがあるので自然とそうなっているのかもしれないです。好きなものを取り入れることを怠りたくないと常々思っています。
──昔は音楽とファッションのつながりがすごく深いことが当たり前だったと思うんですよ。カリスマ的なファッションリーダーはだいたいみんなミュージシャンだった。でも最近の日本はそういう文化が衰退していってしまってる感じがするんです。音楽には音楽の、ファッションにはファッションのカリスマがいるというか。音楽もファッションも好きな身からしたらそれってけっこう悲しいなって思ってるんですよ。あいみょんさんはそれをつなげてくれる存在になるんじゃないかと勝手に期待しています。
ホンマですか? 音楽とファッションのつながりって大事だなと私も思うのでうれしいです。私はミュージックビデオにしろライブにしろ、アーティストがピアス1個付けてるか付けてないかで見え方が変わってくると思うんですよ。ファッションでまとえる色気や魅力もあると思うので、ファッションは音楽には不可欠なんかなってずっと思ってます。
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次の世代にも残る音楽を作りたい
- あいみょん「青春のエキサイトメント」
- 2017年9月13日発売 / unBORDE
- 収録曲
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- 憧れてきたんだ
- 生きていたんだよな
- 君はロックを聴かない
- マトリョーシカ
- ふたりの世界
- いつまでも
- 愛を伝えたいだとか
- 風のささやき
- RING DING
- ジェニファー
- 漂白