曲調は優しいけど歌詞はエグい
mabanua ほかにも作品から影響を受けて曲を作ることはありますか?
橋爪 あります。映画や音楽を観たり聴いたりしていると、「そんなことないんじゃない?」とか、自分の中で勝手にディベートが始まるんですよ。「ああ、その通りだな。私もこのテーマで1曲書いてみよう」と思うこともありますし、けっこう周りに刺激されていますね。
mabanua じゃあ映画なんかに、自分で音楽を付けてみることもありますか?
橋爪 あります、あります。絵本とかでもよくありますね。頭の中で勝手に優しい音楽が流れてきて、じゃあ歌詞は重くしてみよう、という感じで作っていったり。曲調は優しいけど言っていることはエグいみたいな曲ができていく(笑)。
mabanua そこが独特ですよね(笑)。
橋爪 ほのぼのしたメロディにほのぼのした歌詞をのせても、やっぱりなんか違うなと思ってしまって。
mabanua 最近は何か影響を受けた作品はありますか?
橋爪 「夜道」(2018年6月リリースの1stミニアルバム)の「自由」という曲は、黒人大統領のエピソードが描かれた「インビクタス/負けざる者たち」という映画に影響を受けました。自分のマインドにはない、ポジティブなメッセージ性のある映画で、「自由ってなんだろう」と考えさせられて。
──mabanuaさんは、映画や本から影響を受けてご自身の音楽活動に生かされることはありますか?
mabanua 実は活字が得意じゃなくて、映像や景色とか、視覚的要素にインスパイアされることのほうが多いですね。すごくマニアックなんですけど……北参道が好きで。すごくソリッドな建物がいっぱいあるんだけど、表参道みたいに人は多くなくて。陽が落ちてきたあたりの景色が特に好きですね。そういうちょっとした日常の風景に影響を受けています。あとは映画のセリフがないシーンとか。セリフがない時間が長い映画ってあるじゃないですか。ビートたけしさんの映画とか、5秒くらい静止画のようになったあとにセリフがくるのがけっこう好きで。
橋爪 すごくわかります。「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」という映画で、女優さんが悲しみを表現するシーンがあるんです。そのシーンで女優さんは無音の中で約5分間、ひたすらパイをむさぼり食べていて。すごい時間でしたし、いいなと思いました。悲しいシーンに悲しい音楽が流れると、やめてって思います。
mabanua そうそう! でも友達に言ってもだいたい理解されないんですよね。北参道の話もそうですけど。
橋爪 本当ですか。でも北参道の話、すごくわかります。マラソンのイベントに参加したことがあって、そのイベント前には新宿から原宿、北参道を通ってランニングしてました。あの都心になりきれない感じ、いいですよね。
mabanua そうそう、なりきれない感じ。
橋爪 想像の余地が残るって大事ですね。
mabanua そうなんですよ。個人的に映画とかも、結末がはっきりしていなくてもよくて。イントロからサビまでの流れがよければ、サビ自体がキャッチーじゃなくてもいいんじゃないかと思うんですよ。何においてもそうなんですけど。
橋爪 すごくわかります!
髭ロリータ
mabanua 今後活動していく中で「こうなっていきたい」という思いや願望はありますか?
橋爪 なりたいというか、絶対にブレたくないのは作詞の部分ですね。どんなにメロディやコード進行が変わってもそこは変えたくない。「本音とは醜くも尊い」は押し殺してきた本音をすくい上げる、あるいは過去に犯してしまった過ちや後悔している気持ちを供養するというのをテーマにしました。願望でいうと、今現在悩んでる人に届けられるように、もっと自分の名前を知ってもらいたい。届きさえすれば悩んでいる人の心にストンと落ちる言葉や曲がきっとあると思うんです。
mabanua あっという間に広がっている感じはしますけどね。
橋爪 本当ですか? ありがとうございます。
mabanua あと衣装の提供をアーティストの方にされていると思うんですけど、今後は服飾関係のお仕事も並行してやっていく予定ですか?
橋爪 実は最近はアーティストさんへの衣装提供はしていなくて。メジャーレーベルでリリースさせてもらってから、服を作る時間がなくなってしまったのが理由です。自分の衣装で手いっぱいな状況で。もう少し私が人として成長して器用になったら、またぜひ作らせてもらいたいと思っています。最近はロリータ文化って日本では勢いが落ちているんですけど、海外では人気が盛り返してきていて。また日本でも、ロリータの子や、ロリータに興味があるという男性や女性が増えたらいいなと思っています。
mabanua 俺でも着れるやつあるんですか?
橋爪 全然あります。ぜひ!
mabanua 本当ですか! 髭生えてるけど(笑)。
橋爪 髭ロリータとか、新しいジャンルを作ってください! なんでもありですからね、本当に。量産できるようになったらファンの方にも届けたいなと思ってます。
思わずガッツポーズ
──最後に、橋爪さんからmabanuaへ伝えたいことがあればお願いします。
橋爪 あの、これだけはお伝えしたくて……。私は「メガロボクス」というアニメが大好きで、mabanuaさんが劇伴を担当されているというのを知って、思わずガッツポーズしちゃいました(笑)。
mabanua ありがとうございます。俺がフルで劇伴を担当したの、「メガロボクス」が初めてなんですよ。監督の森山(洋)さんも監督自体が初めてな人で。チーム全体がそんなにアニメアニメしてなかったんですよね。みんな手探りで、音楽を作るにしても「こういう感じでいいですか?」と聞いても「僕はこれでいいと思いますけどmabanuaさんはどう思いますか?」というように一緒に作り上げていくような雰囲気で。
橋爪 そうだったんですね。「メガロボクス」はそれこそさっきおっしゃっていた、ラストがバツッと決まっていない終わり方ですよね。
mabanua そうそう。あれはすごい。監督からしたらブーイングも想定した終わり方だと思うんですけど、俺はあの終わり方が大好きで。
橋爪 すごく渋い作品だなと思って観ていました。
mabanua アメリカ人とかが大好きな展開ですよね。アメリカでは評判がすごかったらしいです。
橋爪 そうなんですね! 大好きな作品なので、今日お会いできて、ちょっと感動がすごいです(笑)。ありがとうございました。
※記事初出時、橋爪もものプロフィールに誤りがありました。お詫びして訂正します。
2019年9月5日更新