3人に共通している劣等感、葛藤
mabanua 意見を出し合う中でケンカになったりはしませんか?
Yurin ケンカはないですけど……。
mabanua けど?
フジムラ 僕だけ2人と意見が違うことが多くて。それで落ち込んで、泣いてしまうことが……。
Yurin 曲に対するイメージって、作った本人が一番明確に持っているものだと思うんです。だからフジムラが持ってきた曲、今作でいえば「ミスターデイドリーマー」のアレンジを考えるときに「曲の具体的なイメージを教えてくれ」って話をしたら、本人もそのイメージをうまく言葉にできないみたいで。そういうときに「ごめんなさい」って泣いちゃうんです。
フジムラ そのときは、イメージが固まりきってない曲を持ってきたことに申し訳なくなってしまって。
mabanua 漠然としたイメージはあるけど、それを説明することが難しいってことだよね?
フジムラ そうです。もともと口下手なところもあって……。
mabanua 曲にしているわけだから、音楽から感じ取ってほしい部分もあるわけだよね。
フジムラ そのとき2人には「気にするなよ」と言ってもらえて。僕としてはこの経験をメッセージとして伝えたかったから、「ミスターデイドリーマー」は自分のように悩んでいる人を勇気付けるテーマで歌詞を書いてみたんです。
mabanua そういえば、サイダーガールは3人共歌詞を書くんですよね?
Yurin はい。基本的には曲を作った人が歌詞を書くことが多いですね。
mabanua 作詞作曲をそれぞれが手がけるのはけっこうすごいことだと思います。バンドって作詞作曲担当が1人に集中していることがほとんどだし。サイダーガールの曲は「どうだっていいだろ」的なニュアンスの一節から始まる歌詞が多いですよね。ちょっとした人間の闇が見え隠れしてる感じが出てるんだけど、これは3人共共通した人間性があるからなんですか?
Yurin 僕ら、ちょっとひねくれてますから(笑)。
知 フラストレーションは常に溜まってるほうだと思います。それこそ、僕らは理想とする青春を送れなかった反動でこういう音楽を作っているわけで、いろんなものに対する劣等感とか、葛藤とかが3人に共通しているのかもしれないですね。
mabanua 歌詞を読んだとき、てっきり自分たちの経験をベースに作詞しているかと思ってたんだけど、そうではないってことですよね。
知 はい。歌詞は妄想に近いかもしれないです(笑)。
若さという魅力
mabanua ちょっと意地悪な質問なんですが、5年経ったらサイダーガールの皆さんは30歳くらいになるわけですよね? 30歳を過ぎた自分をイメージできますか?
フジムラ 心の中はずっと20歳ぐらいで止まってる感じがして、想像ができないですね。
Yurin 音楽をやってる人って心が若い方が多いと思うんです。
mabanua わかるわかる。
フジムラ 同窓会とかでひさびさに友達に会うとすごくビックリするんですよね。中学時代はすごくイケメンでモテてた友達がすごく落ち着いた格好をしていることもあって。音楽をやってる人、というよりかは好きなものを追い続けてる人は感性が若いままなのかなと思ったんです。
mabanua 実は僕、さっき皆さんの年齢を聞いてちょっとビックリしたんです。20代前半か、10代だとしても僕は全然違和感を感じなかったし、20代中盤の皆さんがティーンエイジャーの心をつかむ音楽を作れていることが素直にすごいと思って。おそらく僕にはサイダーガールのような曲を書くことはできないから。でもそれって実は年齢は関係なくて、僕より上の年代の方でもピュアな歌詞で10代の気持ちを歌にできる人もいるから、きっとサイダーガールもそうやって歳を重ねていくんだと思うよ。
Yurin 顔出ししていないのもあるし、バンドのイメージとして女性に出てもらってるのもあって、いくつになっても青春を歌えるのかなって自分たちでも思ってます。
知 年齢の話で伺いたいことがあって。僕は年上の方が作ってる音楽が好きなんですけど、mabanuaさんは僕らのような年下のアーティストが作る曲を聴きづらいと感じたことはありますか? 僕らみたいに「青春時代」をテーマに曲を書いていると、年上の人たちにどう伝わっているのか、ちょっと見えないところがあって……。
mabanua 聴きづらさとかは全然ないよ。僕の場合は音響的な要素が強いかもしれないけど、例えばハーモニーやサウンドのアレンジとかで「あ、なんかいいな」と思わせる部分があれば、世代関係なくそのアーティストの曲をいろいろ聴くようにしています。
知 mabanuaさんは普段からいろいろな若いアーティストの曲を聴いてるんですか?
mabanua 聴きますね。若さって要素としてすごく得なことだと思うんです。何も知らないがゆえの美しさが人間にはあって、サイダーガールのMVや歌詞からもそれを感じたし、逆に年をとって経験を積んでいくと表現があざとくなっちゃう傾向もあって。「こういうふうにしたら売れると思ってやってるんだろうな」ってわかってしまうんです。それに若い子が「つらい」と歌っているのと、人生経験を積んだ大人が「つらい」と歌っているのではピュアさが違うよね。どちらがいいとは一概に言えないかもしれないけど、若さという要素は1つの魅力につながると思ってます。
サイダーガールの強み
──最後に、今日の対談の感想をそれぞれひと言ずつ聞かせてください。
mabanua 今日は皆さんと話せてよかったです。実は僕が関わってそうで関わってないシーンっていうのがギターロックなんですよ。プロデューサーを立てるバンドもそんなに多くないし、最近の20代のバンドが何を考えているのかを聞けて今日はよかったです。でも話を聞いた感じ、サイダーガールもけっこう特殊な立ち位置のバンドですよね?
知 そうですね。同じ世代のバンドはライブハウスで叩き上げられてきた人が多いし、DTMで曲を作ってるバンドもそんなにいないし。
mabanua でも、それはサイダーガールの強みになっている部分だよね?
フジムラ はい。3人それぞれがDTMで曲を作れるから、いい意味で一貫してないのがサイダーガールのいいところなのかなと思っています。
Yurin 僕は自分たちのルーツがmabanuaさんにも通じているところがあってうれしかったです。アーティストの方々と話す機会ってそんなになくて、今日は音楽の話も含めていろいろお話しできてよかったです。
mabanua またどこかでお話しましょう。再び会える日を楽しみにしています。
知 今日はありがとうございました!
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サイダーガール TOUR2019 サイダーのゆくえ -SPACESHIP IN MY CIDER- -
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