edda×沙田瑞紀(ねごと)│物語で見せる揺るぎない世界観

4人のキュレーターがそれぞれ話を聞きたい次世代アーティストとトークを交わす「Coming Next Artists」シーズン2の対談企画。初回は、ねごとの沙田瑞紀が女性シンガーソングライター・eddaの魅力に迫る。2人は11月7日にリリースされたeddaの1stフルアルバム「からくり時計とタングの街」の話題を中心に、お互いの作曲方法などについて語り合った。

取材・文 / 近藤隼人 撮影 / 後藤壮太郎

Coming Next Artists シーズン2

edda(エッダ)
edda
1992年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。音楽塾ヴォイスで作曲や作詞を学び、2017年にeddaとしての活動をスタートさせた。2017年5月に福岡限定シングル「半魚人」、7月に初の全国流通盤となるミニアルバム「さんかく扉のむこうがわ」を発売。同年10月にシングル「チクタク」でメジャーデビューした。2018年5月にCocco、ササノマリイ、detune.ら参加のCD作品「ねごとの森のキマイラ」を、8月にドラマ「探偵が早すぎる」の主題歌「フラワーステップ」をシングルとして発表。同年11月には1stフルアルバム「からくり時計とタングの街」をリリースした。2019年3月に東京と大阪で初のワンマンライブ「からくり時計とタングの街の音楽会」を開催する。

女性に受け入れられるアーティストでいたい

──この「Coming Next Artists」シーズン2は、沙田さんをはじめとするキュレーターが話を聞きたいと思った次世代アーティストと対談する企画です。今回、沙田さんがeddaさんに話を聞きたいと思ったのはどうしてですか?

左からedda、沙田瑞紀。

沙田瑞紀 新人さんとは思えないくらい曲の世界観がしっかりしていたので、どうやってこの世界観を形成しているのかお話を伺いたいと思いました。歌詞に深みがあって、かなりじっくり言葉を選んでいるんだろうなって。

edda ありがとうございます。

沙田 けっこう歳が近いんですよね。私、1991年生まれで。

edda 私は92年生まれです。

沙田 ほぼ同世代なので、もしかしたらお互いのバックグラウンドは近いところにあるのかなとも思いました。

──eddaさんは、ねごとに対してどのようなイメージを持っていますか?

edda ねごとさんは女性ボーカルのバンドの中でも、サウンドのアレンジや言葉の選び方が珍しいアーティストさんだなとずっと思っていました。楽曲に少年っぽさがあって、すごくいい意味で女おんなしてない感じが新鮮で。でも、繊細な世界観も持たれている方たちだなと感じています。

左からedda、沙田瑞紀。

沙田 中性的な感じを持ち味にしていると言うか、特に初期の歌詞では“私”ではなく“僕”というワードを使っていました。恥ずかしくて“私”って言えなかったというのもあるんですけど(笑)。性別関係なく、誰が聴いても入り込めるような世界観がいいなとメンバーみんな考えていて。eddaさんも女性らしいと言うよりは、人間みんなが感じることを歌詞で表しているように思いました。

edda 歌詞を書いたり、歌を入れたり、音を作ったりするときに、あまり女らしさを表に出したくないんです。自分が女性だからなのかもしれないですけど、少年っぽさを持っている女性ボーカルの方に惹かれることが多くて。女性にも受け入れられる女性アーティストでいたいと意識していますね。

歌詞の起承転結

──eddaさんの曲はストーリー性のある歌詞が特徴的ですが、その部分はねごとと比べていかがですか?

沙田 ねごとにもストーリー性のある曲はありますけど、私たちは話の起承転結についてあまり考えなくて……eddaさんはどうですか?

edda 私はけっこう考えるんですよ。自分のことを歌にするんじゃなく、主人公を立てて物語を組み立てていくので。1stアルバム「からくり時計とタングの街」の収録曲もそれぞれ別の物語の主人公を表現するために作った曲たちで、歌詞に登場する主人公も曲によって口調が違っているんです。

沙田 そうなんだ! うちのバンドは起承転結をはっきりさせると言うよりは、そこにある1つの瞬間を曲にすることが多い気がします。

edda すごい。私は一瞬を切り取って曲を作りあげることができないんです。「思い付いたことは全部曲に使っちゃえ!」という考えなので。

沙田 なるほど。eddaさんの楽曲にはそれぞれに話の山場があるので、聴きやすくていいですよね。

edda 例えば「フラワーステップ」は、体に花が咲いてしまう病気の子が主人公の曲で。この子の物語を作ろうと思い付いたあとは、病気になってしまった理由や主人公の性格を考えていけば、どんどんストーリーができあがっていくんです。どこで終わらせるかというゴールだけ決めておけば、あとは勝手にこの子の物語が見えてきて、それを歌詞として形作っていく感じです。

沙田 この曲、ミュージックビデオもすごくよかったです。MVの世界観もeddaさんが考えているんですか?

edda そうですね。私の意見を伝えながら作っていきます。

沙田 MVも自身の世界観を表現する方法の1つになっているんだなと感じました。