植田圭輔「voice of..」
2019年5月22日発売 / Bogland Music
歌の中の植田圭輔は、あまりにも人間くさい
文 / 髙橋裕美
歌にはその後ろにいる1人の人間の、心が、熱が、どうしたってあふれてしまうものだと思う。まして植田圭輔は、それを一切隠すつもりはないと言うかのごとく歌う。
いわゆる“2.5次元俳優”と言われる彼のキラキラした存在感だけを知っている人は、このギャップに驚くかもしれない。今どき愚直すぎるほどに自分を伝えようとする歌の中の植田は、あまりにも人間くさい。
舞台を中心に映画やドラマ、声優まで幅広く活躍する役者・植田圭輔が、役ではない彼自身をまっすぐに伝える表現の1つとして選んだのが歌だ。昨年発表したデビューシングル「START LINE ~時の轍~」の表題曲では、負けず嫌いな内面を赤裸々に詞へ落とし込んだが、彼そのものを表現したいという思いは本作にも通底しているよう。今回は前作より幅広い側面を感じられるオリジナル4曲とカバー1曲を収録した。
「こんな僕にできること」は不器用なりに“あなた”を思う気持ちを歌ったミディアムポップ。少しネガティブな面は歌ものラップの「ソレクライ」にも見て取れるが、後ろ向きというより優しさからくる思いやりの発露なのだと、自身が詞に選び取った言葉や温かな歌声から感じ取れる。打って変わってエモーショナルなロックチューン「TOP」では、ベビーフェイスの内側で熱く燃え上がる心の炎を男気たっぷりに歌い上げた。藤井フミヤ「TRUE LOVE」のカバーは好きで何度も歌っていたのだろうか、オリジナル曲と同じくらい心が入った歌唱で、低音にこそ宿る声の甘さを存分に感じられる。「age~新しい時代へ」は一昨年、脊髄損傷の大ケガをした役者仲間の滝川英治による作詞。困難に立ち向かう思いや周囲への感謝を込めた詞には、ふたりの姿が重なり胸が熱くなる。
こうした本作を聴いて、ますますアーティスト・植田圭輔のこれからが楽しみになった。これほどまでに生き様が歌に出てしまう人だからこそ、その表現には今後さらなる深みが増していくはずだから。
M ver. [CD+DVD]
3500円 / YCCW-10360/B
R ver. [CD+DVD]
3500円 / YCCW-10361/B
Normal ver. [CD]
2000円 / YCCW-10362
- CD収録曲
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- こんな僕にできること
- TOP
- ソレクライ
- TRUE LOVE
- age~新しい時代へ
- こんな僕にできること(カラオケ)
- TOP(カラオケ)
- ソレクライ(カラオケ)
- age~新しい時代へ(カラオケ)
- M ver.付属DVD収録内容
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- 「こんな僕にできること」MUSIC VIDEO
- MVメイキングムービー
- R ver.付属DVD収録内容
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- 「TOP」MUSIC VIDEO
- MVメイキングムービー
- 各サブスクリプションサービスで、植田圭輔「voice of..」を聴く
- 植田圭輔(ウエダケイスケ)
- 1989年生まれ大阪府出身の俳優、声優、アーティスト。2006年に「第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でファイナリストに選ばれ、翌2007年にデビュー作となる舞台「少年陰陽師 歌絵巻」で主演を務めた。以降の主な出演舞台に「舞台『弱虫ペダル』」シリーズ、ミュージカル「ヘタリア」シリーズ、「舞台『K』」シリーズ、「おそ松さん on STAGE」、舞台「劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『天下無敵の忍び道』」「王室教師ハイネ-THE MUSICAL-」、舞台「文豪ストレイドッグス」などがある。近年は歌手、声優としても活動しており、2018年5月にシングル「START LINE ~時の轍~」でメジャーデビュー。2019年5月には1stミニアルバム「voice of..」をリリースした。
2019年7月16日更新