関取花「逆上がりの向こうがわ」
2019年5月8日発売 / UNIVERSAL SIGMA
花の歌が咲きほこる
文 / Rei
花ちゃんの歌に初めて出会ったとき、私は嫉妬してしまった。
そのときの感覚が蘇る、悔しいほど美しいアルバムが春の報せのように私に届いた。
「太陽の君に」「春だよ」「休日のすゝめ」さわやかなタイトルが並ぶ今作は、その名の通り色鮮やかな音であふれている。いつだって花ちゃんの作品は歌と伴奏の密着度に感激させられるが、今作も彼女が爪弾くアコースティックギター、歌声を始め、ストリングス、コーラスワーク、ラップスチールなどの豊かなオーケストレーションが、大きな赤い屋根のバンガローで合奏しているような、愛くるしい一体感を生み出していた。
ただ、リスナーに深堀りしてほしい彼女の魅力はそれだけにとどまらない。関取花の核心は歌詞にある。例えばそれは、シンクのぬめりみたいな感情の淀みだったり、ひねくれたユーモアだったり、洗い流せない後悔のシミみたいな部分。そういった「人生の苦さ」を言葉の端々に散りばめているからこそ、彼女の歌は味わい深いのだと思う。そう、この作品は聴くたびに誰かの普段着になっていくような、普遍的で長く愛される素質を持っているのだ。
人生は一筋縄ではいかない。思い描いた夢が遠くに霞んで幻になっていくような感覚に誰もが陥りそうなとき、関取花は歌う。「逆上がりの向こうがわ」にはきっと見たこともないような大空が広がっているから、と。
初回限定盤 [CD+DVD]
2500円 / UMCK-7011
通常盤 [CD]
1800円 / UMCK-1621
- CD収録曲
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- 太陽の君に
- 春だよ
- 僕のフリージア
- 休日のすゝめ
- カメラを止めろ!
- 嫁に行きます
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「太陽の君に」Music Video
- 「どすメンタリー of 逆上がりの向こうがわ」
- 各サブスクリプションサービスで、関取花「逆上がりの向こうがわ」を聴く
- 関取花(セキトリハナ)
- 1990年12月18日生まれの女性シンガーソングライター。幼少期をドイツで過ごし、日本に帰国した後の高校時代より軽音楽部で音楽活動を始める。2009年には「閃光ライオット2009」で審査員特別賞を受賞し、2010年に初の音源となるミニアルバム「THE」をリリース。2012年には神戸女子大学のテレビCMソングに採用された「むすめ」が話題を呼び、同11月には「むすめ」を含む全6曲収録のミニアルバム「中くらいの話」を発表した。2014年2月には3rdミニアルバム「いざ行かん」を発売し、同年7月にFm yokohamaでレギュラー番組「どすこいラジオ」がスタート。2015年9月に初のフルアルバム「黄金の海であの子に逢えたなら」をリリースした。2017年にはDJみそしるとMCごはん、カサリンチュへの楽曲提供なども行う。6月に「朝」やNHK「みんなのうた」オンエア曲「親知らず」などを収録したアルバム「ただの思い出にならないように」をリリース。2019年5月にはユニバーサルシグマからメジャーデビュー作となるミニアルバム「逆上がりの向こうがわ」を発表した。
2019年5月15日更新