カメレオン・ライム・ウーピーパイとは?“自分たちらしさ”を貫いた1stアルバム「Orange」完成 (2/2)

世の中に期待しちゃってるじゃん?

──結成から約3年の準備期間を経て、2019年12月には1stシングル「Dear Idiot」をリリースしましたね。

「曲もいっぱい溜まってきたし、自分たちのスタイルも固まってきたからそろそろリリースしよう」という話になったときに、ちょうど作っていた一番新しい曲が「Dear Idiot」でした。当時は「私たちの曲なんて誰も聴いていない」「自分たちには何もないんだ」とモヤモヤした気持ちがあって。だけど何かあると思っているから音楽をやっているし、「ということは、ちょっとは自信あるんじゃん?」「世の中に期待しちゃってるじゃん?」ということを歌詞ではそのまま書いていますね。

──「大体変わらないでしょ みんな孤独で一緒」という歌詞についてはいかがでしょう。何者にもなれないと思いつつ、どこか期待してしまう感じは自分だけではなく、多くの人が持っているはずだという感覚もありましたか?

そうですね。「だいたいみんなそうでしょ」と本当に思っているというのもありますし、「みんなそうだもんね」と思うことで自分自身を救っているような感覚もあります。

──なるほど。そもそも曲作りはどのような流れで行っているんですか?

私が「こういう雰囲気の曲を作りたい」とWhoopiesに伝えると、それを踏まえてWhoopiesがトラックを作ってきてくれます。その時点で仮のメロディも付いていて、1号の歌が入っているんですけど、それがめちゃくちゃ音痴で(笑)。私がそれを聴きながら「こうしたほうがもっとグルーヴが出るな」という感じでメロディを整えて、歌詞を付けて、それをもとに3人で話し合って完成させていきます。

Chi-とWhoopies1号、2号。

Chi-とWhoopies1号、2号。

──Whoopiesの作った曲から歌詞を思いつくことや、Chi-さんが最初にイメージしていたものとはまったく違う曲が完成することもありますか?

ありますね。例えば「Unplastic Girl」はトラックを聴いて「プラスチックっぽいな」と思ったところから歌詞のコンセプトを考えていって、最終的に生身の人間らしさを歌った曲になりました。最初にイメージしたものとまったく違う感じになった曲はたくさんあるんですけど、特に印象的だったのは「LaLaLa」ですね。私からは「渋い曲がやりたい」とリクエストしたんですけど、途中にめちゃくちゃ激しいパートがあって。シンプルな曲をリクエストしても、結局いつも音数が多いトラックが返ってくるからそれが面白い(笑)。制作のたびに毎回驚いていますね。「あっ、こんな感じになったんだ!」って。

どこにでも馴染めるし、どこにも馴染めない

──では、新曲の制作エピソードを聞かせてください。まずは「Stand Out Chameleon」から。そもそもChi-さんはカメレオンという生物に対してどういうイメージを持っていますか?

私自身、世間や集団に馴染むのが得意じゃないので、背景にパッと馴染めるカメレオンに対して「いいな」と思っているんです。カメレオン・ライム・ウーピーパイという名前もそこからきているんですけど、「Stand Out Chameleon」というタイトルは直訳すると“目立つカメレオン”で。ちょっと意味不明な感じがしますよね。

──そうですね。

ここで言うカメレオンは自分たち自身のことなんですけど、カメレオン・ライム・ウーピーパイってどこにでも馴染めるし、どこにも馴染めない気がするんです。例えばバンドばかりの対バンライブに出ても普通に馴染めるけど、どこかハマっていない感じがする。だからこそうまく目立つことができて、いろいろな人に見つけてもらえたんじゃないかと思っていて。

──つまりこの曲においては、周りに馴染めないことがネガティブなことではないと。

そうですね。「目立っちゃうのがいいでしょう?」というテンションなので。「もーいーよーいーよー」というかくれんぼのような歌詞もありますけど、もっと多くの人に見つけてもらうために、「みんな集まれ!」という感じで作った曲です。

Chi-

Chi-

──「Mushroom Beats」はゲーム風の世界観が楽しい曲ですが、Chi-さんの人生観が歌詞には色濃く表れていますね。

そうですね。「くだらない日々に逆らって踊って期待して死ぬだけGirl」という歌詞はまさに私を表しているし、自分の人生や生き方が直接的に反映された曲だと思います。1人で音楽を始めてからすぐにWhoopiesと出会って、3人で歩いていたら、マネージャーさんとかヘアメイクさんとか衣装さんとか、活動を支えてくれるスタッフさんに出会って、また仲間が増えていって……私たちの人生ってRPGみたいだなと思うんです。だからこそ、ゲームっぽいトラックに対して、こういう歌詞を当てたいなと思ったのかもしれない。

──「Burn Out」についてはいかがでしょう。どんな曲に仕上がったと感じていますか?

Whoopiesが最初に作ってくれたトラックはもっと明るくてポジティブだったんですけど、それは私には合わないかもしれないと思ったので、もう少しマイナー寄りのイメージで作り直してもらいました。最終的にポジティブとネガティブのバランスをちょうどいい感じで表現できたなと思ってます。

──確かに、「どーでもいーからやろう どーなってもいーここからいこう」といった歌詞にはポジティブとネガティブが同居していますね。

音楽を始めたときの自分がこの曲を聴いたら救われるだろうなって。落ち込んでいるときに聴いても「なんとかなりそうだな」と思わせられるというか、どん底からぐわっと持ち上げてくれるような剛腕をイメージして作った曲ですね。

Chi-

Chi-

──「Skeleton Wedding」はカメレオン・ライム・ウーピーパイ初のウエディングソングです。なぜウエディングソングを作ろうと思ったんですか?

私の友達が結婚したのがきっかけでした。「私たちがウエディングソングを作ったらどうなるんだろうね?」と言いながら、遊びのような感覚で作ってみたんですけど、そしたらびっくりするぐらい暗い曲ができて(笑)。自分たちとしても面白い曲になったなと思っています。

──個人的には暗いというよりも、ピュアな曲だと感じました。「これから始まるのは 明るい絵の具で描こう 色んな色の昨日までが見送っている」という歌詞が素敵です。

確かにピュアな曲でもありますよね。まず、Whoopiesが作ってきたトラックを聴いて「絵本みたいだな」と思ったんです。そこから“地獄から出てきた2人がこの世界に愛をばらまいている”という物語が浮かんできて。愛し合う2人の間にハート形のチップみたいなものが生まれて、それをみんなに配っているイメージというか。地獄から出てきた設定だから根本は暗いけど、「愛の存在を信じたい」という気持ちを込めて作った曲なので、まとめると、ダークで、ピュアで、かわいらしい曲だと思います。

私たちみたいなやつがいてもいいよね

──最後に、今後の展望を聞かせてください。「Orange」リリース以降の活動で実現したいと思っていることはありますか?

ライブが大好きなので、国内国外問わずいろいろなところでライブをたくさんやりたいです。今年の3月に「SXSW 2023」に出演したんですよ。飛行機の遅延とかもあって、羽田からテキサスまで30時間くらいかかっちゃったから、正直疲労もあったんですけど、「やるしかない!」というエネルギーでライブに臨んだらお客さんにも伝わったみたいで。めちゃくちゃ盛り上がって、お互いにどんどんテンションが上がっていって。アメリカの「VIBE」という音楽メディアで、出演者総数1000組を超える中から「ベストパフォーマンスアーティスト10選」に選んでもらったのもすごくうれしかったです。私たちのライブを認めてもらえたんだなって。

Chi-

Chi-

──ワールドワイドな活躍を楽しみにしています。7月には東京と大阪でのワンマンライブ「1ST ONE-MAN LIVE "Orange"」がありますね。

はい。私たちは楽曲だけではなく、ミュージックビデオやアートワークなども3人でアイデアを出し合いながら、遊ぶような感じで作っているんですけど、その空気感をライブにも持ち込めたらいいなと。最初から最後まで、いろいろな仕掛けをして、楽しい空間を作っていけたらと思ってます。

──カメレオン・ライム・ウーピーパイとして、最終的にこれを叶えたいという夢はありますか?

このアルバムにも表れている“カメレオン・ライム・ウーピーパイらしさ”が日本のメジャー音楽シーンのスタンダードになったらいいなと思っています。

──シーンをひっくり返したいというニュアンスですか?

というよりかは、「私たちみたいなやつがいてもいいよね」という感じです。私みたいな人間って多数派ではないけど、学校のクラスに1人か2人はいると思うんですよ。それが日本中、世界中となるとけっこうな数になると思うし、自分の音楽で人を救えるだなんて思えないけど、「私みたいな人に届けばいいな」という気持ちは確かにあって。そのためには、自分たちがカッコいいと信じているものを絶対に曲げちゃいけないなと思っています。

Chi-

Chi-

Chi-のルーツ5曲

1曲目
エド・シーラン「Don't」

高校生のときYouTubeでMVを観まくっていて見つけた曲。この曲を見つけた瞬間カッコよすぎて脳が爆発した。通学のときずっと聴いていた。今聴いてもワクワクする。

2曲目
Beastie Boys「Brass Monkey」

Whoopiesと共通して好きなBeastie Boys。ダサカッコよくて最高。曲が始まった瞬間ぶち上がる。どう考えてもカッコいい。

3曲目
Beck「E-Pro」

ギターがあまりにもカッコよすぎる。聴いてるとカッコいい気分になる。ナーナーナナナナナーナー

4曲目
THE TIMERS「デイ・ドリーム・ビリーバー」

音楽をやり始めた頃この曲しかギターを弾けなかったのでストリートライブでひたすらこの1曲を歌っていた。大好きな曲。

5曲目
ジェームス・ブラウン「Sex Machine」

曲名も知らずに小さい頃から聴いていて、大きくなってテレビで見て初めてJames Brownの「Sex Machine」という曲だと知った。
この曲を聴いたら勝手に踊り出してしまう。

Chi-

Chi-

公演情報

カメレオン・ライム・ウーピーパイ 1ST ONE-MAN LIVE “Orange”

  • 2023年7月2日(日)大阪府 Music Club JANUS
  • 2023年7月9日(日)東京都 WWW X

プロフィール

カメレオン・ライム・ウーピーパイ

2016年11月に活動をスタートさせた、Chi-によるソロユニット。仲間のWhoopies1号、2号とともに楽曲制作やライブ活動に限らず、ミュージックビデオやアートワークをはじめとした、自らの活動にまつわるすべてのクリエイティブを3人のみで手がけている。2019年12月に1stシングル「Dear Idiot」をリリースし、2021年1月にはSpotifyが注目の国内アーティスト10組を選出する「RADAR:Early Noise 2021」に選ばれた。2022年には「SUMMER SONIC」東京・大阪、香港で開催された「BPM JUNIOR」といった国内外でのイベントに出演したほか、「CDTVライブ!ライブ!年越しスペシャル!2022→2023」で初の地上波番組にも出演。2023年3月にアメリカ・テキサス州オースティンにて開催された世界最大級の複合フェスティバル「SXSW 2023」に出演し、アメリカの音楽メディア「VIBE」で「ベストパフォーマンスアーティスト10選」に選出される。5月に自身初となる1stアルバム「Orange」をリリースした。