カメレオン・ライム・ウーピーパイとは?“自分たちらしさ”を貫いた1stアルバム「Orange」完成

カメレオン・ライム・ウーピーパイの1stアルバム「Orange」がリリースされた。

カメレオン・ライム・ウーピーパイは2016年11月に始動した、Chi-によるソロユニット。トラック制作などを手がける仲間のWhoopies1号、2号とともに活動しており、2022年には「SUMMER SONIC」や「CDTVライブ!ライブ!」への初出演を果たすなど、今勢いに乗っている。そんなカメレオン・ライム・ウーピーパイ初のフルアルバム「Orange」は全17曲、プロジェクトのこれまでの活動を総まとめしたような1枚になっている。

本作のリリースを記念して、音楽ナタリーはChi-にインタビュー。音楽活動への向き合い方や「Orange」に収録されている新曲群の制作背景について聞いた。また特集の後半では、Chi-のルーツとなった5曲を本人のコメント付きで紹介する。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / NORBERTO RUBEN
ヘアメイク / 清野和希(cyez)衣装 / RBTXCO

「カメレオン・ライム・ウーピーパイとは」が伝わるアルバム

──カメレオン・ライム・ウーピーパイ初のフルアルバム「Orange」が完成しました。どんな作品になったと感じていますか?

最初にシングルリリースした「Dear Idiot」から最新の曲まで、今まで作ってきた楽曲がほぼ全曲入っているアルバムなんですよ。そのときの自分たちが一番イケていると思っている音楽を常に作っているので、通して聴いてみたとき、ジャンルがコロコロ変わっていくのが面白いなと思いました。だけどどの曲も一貫した“カメレオン・ライム・ウーピーパイらしさ”があるなと感じて。ただカッコいいだけじゃなく、ちょっとダサさがあるというか。活動を続けていく中で環境が変化することもあったけど、私たち3人の世界観はずっと変わらず、同じ方向を見ながらここまでやってこられたんだなとも思いましたね。このアルバムを聴いてもらえれば、「カメレオン・ライム・ウーピーパイとは」というものが伝わるんじゃないかと思っています。

──収録曲のうち、活動のターニングポイントになった曲を1つ挙げるとすれば?

9thシングルの「Love You!!!!!!」ですかね。それまでにも「Dislike」のような激しいミクスチャーとかはあったけど、ここまで振り切ってパンクをやったのはこの曲が初めてでした。自分たちとしても「あ、自分たちってここまでいけるんだ」「こんなに振り幅が広かったんだ」という手応えがあったし、この曲がきっかけでカメレオン・ライム・ウーピーパイを知ってくれた人もたくさんいるので、この曲の存在はすごく大きかったです。「Love You!!!!!!」をきっかけに「パンクだね」と言ってもらえる機会も増えました。

──今日は「Orange」を俎上に載せながら、これまでの活動について伺えればと思います。そもそもカメレオン・ライム・ウーピーパイはどういう経緯で結成されたんですか?

私が「人生最後に音楽をやろう」と決意したタイミングがあったんですよ。その決意のまますぐにギターを始めて。小さい頃にピアノをやっていたけど、持ち運びに便利そうだから、やっぱりギターにしようと思って(笑)。

──オリジナル曲はいつ頃から作り始めたんですか?

ギターを始めてから1カ月も経たないうちに作り始めて、インターネットにアップしました。あと、東京でやっていたオーディションライブに申し込んで、月1回、都内のライブハウスに出ていました。そしたら2回目のライブのときに、私がインターネットにアップした曲を聴いたWhoopiesの2人が観に来てくれて「一緒に音楽をやろう」と誘ってくれたんです。本当に軽いノリで「いいですよ」と返事して。そう考えると、私が1人で音楽をやっていた期間ってほとんどないんですよね。

Chi-

Chi-

──もしもWhoopiesからの誘いがなければ、そのまま1人で音楽をやっていく予定だったんでしょうか。

今となっては想像もつかないけど……たぶん、そのまま突っ走っちゃってたんじゃないかな。でも、途中でヤバイと気付いてやめていたかもしれません(笑)。自分でやってみて、曲作りって難しいなと感じたんですよ。歌詞は自分の人生から出てくる言葉を書けばいいけど、トラックを作るのは難しいから、トラックメイカーみたいな人がいればいいなと思っていたときにちょうどWhoopiesの2人が声をかけてくれて。しかも2人は私が求めるポップで踊れる曲を作れる人だったので、運命的な出会いだなと勝手に思っていました。

──ポップで踊れる曲を作りたいと思っていたんですね。

はい。私自身、落ち込んでいるときは踊れる曲に救われることが多いんですよ。難しいことを考えずに踊れたり、嫌なことから一瞬でも逃げられたりすることが自分にとっては救いで。だから踊れる曲であることはめっちゃ重要でした。

Chi-とWhoopies1号、2号。

Chi-とWhoopies1号、2号。

自分自身を救うために音楽をやっている

──先ほど「人生最後に音楽をやろうと思った」と言っていましたが、そのあたりの話をもう少し詳しく聞かせてもらえますか?

音楽を始める前からずっと「自分なんていないほうがいい」と思いながら生きてきたんです。大人になってから小学生の頃の友達と会う機会があって、当時流行っていたプロフィール帳を見せてもらったら、私、「生まれ変わったらなりたいもの」の欄に「ミジンコ」と書いていて。「誰からも刺激されたくない」みたいなことも書いていました。当時の私は、誰からも見えないところに隠れていたいという気持ちが常にあって、活発な性格だけど、心の奥は荒んでいるような子でしたね。

──そうだったんですね。

なぜ「自分なんていないほうがいい」と考えるようになったのかというと、育った環境がちょっと特殊で……“家=安心できる場所”とは思えなかったんです。家族も悪い人たちではないけど、自分とはちょっと感覚が違ったから「結局誰ともわかり合えないよね」という感覚がちっちゃい頃から根強くあって。だから音楽を始めるときも誰を誘うでもなく、誰にも相談せず、応援も反対もされず、勝手に始めたような感じでした。誰かとチームを組んでうまくやっていくのは自分の性格上無理だろうなと思っていたけど、Whoopiesから声をかけられたときは、「私と同じで、この人たちも人見知りなんだろうな」ってなんとなくわかったから「性格が合いそう」「この2人とだったらできるかも」と思って。3人とも人見知りなのでぎこちなさが抜けるまで1年くらいかかりましたけどね(笑)。

Chi-

Chi-

──Chi-さんにとってWhoopiesの2人はどんな存在ですか? 

カメレオン・ライム・ウーピーパイは私のソロユニットなので、「Whoopies1号、2号という仲間がいます」という言い方をしていて。まさに私にとっては“仲間”なんですよね。家族以上に気を遣わない存在だけど、友達ではないし……今、結成7年目だけど、必要だからずっと一緒にいるという感じで。性格もめっちゃ合うし、向かっている方向も同じだし、今までの人生で出会った人たちの中で一番気が合う2人。それに自分自身、カメレオン・ライム・ウーピーパイで歌詞を書いて、Whoopiesと一緒に音楽を作っていくという構造自体にすごく救われていて。

──というと?

そもそも私は自分自身を救うために音楽をやっているという感覚がすごく大きいんです。歌詞を書くときも無理せず、カッコつけずにいたいという気持ちがあるけど、そうするとポジティブなことを言った直後にネガティブなことを言うような歌詞が出てくることも多くて。私自身感情の上がり下がりが激しいタイプだから、自分では「私っぽい歌詞だな」と思うものの、聴く人によっては「結局この人は何が言いたいんだろう?」と思うような、わかりづらい歌詞になるんです。だけどそういう話をWhoopies1号にしたら「それがいいんだよ」「それこそがChi-さんらしさだから、絶対にそのままでいい」と言ってくれて。普段の日常生活で失敗することも多いけど、カメレオン・ライム・ウーピーパイでは変であることがよしとされるので「私、それならめちゃくちゃ得意だよ!」って感じですね。周りの人に馴染むために“いい人”でいる必要もないし、本当に飾らずにいられる。居場所が見つかった感じがすごくありました。