CIVILIANが3rdシングル「顔」をリリースした。
本作の表題曲はコンプレックスをテーマにした楽曲。バンドはこの曲のミュージックビデオの監督に乃木坂46やB'zのMVを手がけた井上強を起用し、主人公役を篠原ともえにオファーした。バンドからの依頼を快諾した篠原はMVの中で前髪をバッサリとカットする大胆な演技を披露し、話題を集めている。
シングルのリリースを記念して音楽ナタリーではCIVILIANの3人と篠原の座談会をセッティング。バンドはなぜ篠原に出演を依頼し、篠原はどのように「顔」の世界観を表現したか。そして2組にとってのコンプレックスとは何なのかを探っていった。
取材・文 / 真貝聡 撮影 / 佐藤類
2組の出会い
──CIVILIANと篠原さんが会うのはどれくらい振りですか?
コヤマヒデカズ(Vo, G) 「顔」のミュージックビデオ撮影以来ですね。
篠原ともえ 6月末ですから、本当にこの間のことのような。
有田清幸(Dr) 初めてお会いしたときに絵を描いてもらったんですよ。僕ら3人に似合う色をそれぞれ塗ってもらって。
篠原 そうそう。私はその人に似合う色とか服が「ピーン!」とわかるんですよ。そのときもメンバー1人ひとりに合う色の色鉛筆で絵を描いてプレゼントさせていただきました。色、当たったんですよね?
有田 見事に的中しました! ちなみに僕は緑。僕、青の色弱なので青い色が緑に見えるんですよ。だから篠原さんに言われて「おお!」って。
コヤマ 僕は白でした。
篠原 そう。白ってわかったんだけど、白いペンでは描けないじゃないですか。ですから、青みのかかった白いペンで描きました。
純市(B) そもそも僕が篠原さんに「何か描いてほしい」ってお願いをしたんですよ。そのときに自分から「赤色がいい」ってリクエストしたから僕は赤色で描いてもらったんですけど……本当に似合うのは茶色でしたっけ?
篠原 レザーとか、なんかそういう生きている物の素材の色が似合うと思いました。
有田 あははは!(笑) 生々しい。
篠原 私はいつも「この方はどんな素材とか色が似合うのだろう」って考えるようにしていて、彼は絶対にレザーが似合うから、茶色って思ったんですけど……「赤って言ってるし、赤色で描くか」って。
純市 お任せすればよかったですね(笑)。でも僕、篠原さんにそう言われたんで、家に帰ってから茶色の服を持っていたか調べました。
声が励みになる力を持っているバンドだなって
──真面目ですね(笑)。そもそも、どのような経緯で篠原さんがMVに出演することになったんですか?
有田 誰に出演してもらおうかとミーティングで話し合っている中で、僕が篠原さんを提案しました。「この曲にどなたが合うだろう」って考えたときに、すぐにピンと来て。もともと、世代的に……。
篠原 シノラー世代?
有田 そうなんですよ。ドンピシャで!
篠原 まあ、うれしい(笑)。
有田 リアルタイムで「LOVE LOVE あいしてる」も観てたし、NHKの仏像を巡る番組(「彫刻家・藪内佐斗司流 仏像拝観手引」)も観ていたので。
篠原 変化していく篠原ともえをご覧いただいてたんですね(笑)。
有田 今はアートとか、衣装デザインの分野でも活躍されているのを知っていて。その、変化していく様がこの曲に合うんじゃないかと思ったんです。で、篠原さんのお名前を出したら、みんなも賛同してくれて。
コヤマ 一度表舞台に出られた方って、本人の意思に関わらず周りから勝手なイメージを持たれるじゃないですか。篠原さんは若くしてデビューされてる分、苦労することもきっと多かったのではないかなって。そういう苦労って僕らですらあるんですけど、もう僕らの比じゃないくらいに……。
篠原 うふふ。ギャップがありますからね、デビューのときと今は。
コヤマ 「顔」は周りから見られているイメージが自分にとっては苦痛だったりする状況とか、自分のコンプレックスについて歌っている曲なので。だから、篠原さんのお名前を聞いたときに、すごくいいんじゃないかと思ったんです。
篠原 そこまで細やかな経緯があったことを初めて知りました。
──篠原さんは「顔」を聴いたとき、どんな印象を持ちましたか?
篠原 先ほどコンプレックスっていうワードが出ましたけど、それが前面に出ている曲と言うよりは、誰しもが持っている“隠したい感情”をふるふるとなでて「全部出していいんだよ」って言われているような。なんか、私は「エネルギーをもらえる、パワーソングだな」って印象を受けました。声の印象が強かったですし、声が励みになる力を持っているバンドだなって。
コヤマ ありがとうございます。これまで僕が書いていた曲って、自分が抱えていた嫌だったこととか、「なんであのときにあの言葉が言えなかったんだろう」とか、「なんであんなことをしてしまったんだろう」とか、ネガティブな感情ばっかりを歌ってしまってたんですよ。人が聴いてどう思うかなんて一切考えてなくて、とにかく自分が「歌でも歌っていないとやってられない」っていう感じで。ひたすら曲を作って、ライブで「ワー!」って叫んで吐き出していただけなんですけど……だんだん僕らの曲に「共感しました」とか、「泣きました」って言ってくれるファンの人たちが増えてきて。自分自身もそこに向き合わざるを得なくなったというか。目の前にそういう人たちがたくさんいる事実に、目を背けながら歌うことはできないと思ったんですよ。それからだんだんと自分の中で歌の役割が変わっていったと言うか。だから「パワーソング」って言っていただいてうれしい……作った甲斐がありました。
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「出るべくして、出たMV」って思われる作品にしたかった
- CIVILIAN「顔」
- 2017年8月2日発売 / Sony Music Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
1800円 / SRCL-9445~6 -
通常盤 [CD]
1200円 / SRCL-9447
- CD収録曲
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- 顔
- デッドマンズメランコリア
- ハロ/ハワユ
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 顔 -Music Video-
- CIVILIAN(シビリアン)
- ボーカロイドプロデューサー・ナノウとしても知られるコヤマヒデカズ(Vo, G)と、純市(B)、有田清幸(Dr)による3ピースロックバンド。2008年、コヤマが同窓生の純市、有田に声をかけて結成。2009年よりLyu:Lyu名義で活動を開始し、2010年、1stミニアルバム「32:43」をリリース。オリコンの「ネクストブレイクアーティスト」に選出されるなど、アグレッシブなサウンドと絶望的な言葉の中に希望を垣間見せる詞が話題を集める。2011年には2ndミニアルバム「太陽になろうとした鵺」を、2012年には「SUMMER SONIC2012」の大阪公演にも出演。そして2013年3月、1stフルアルバム「君と僕と世界の心的ジスキネジア」をリリースした。全国でワンマンライブを行うなどバンドとして精力的に活動する一方、コヤマが小説「ディストーテッド・アガペー」をWebで連載するなど、多方面で活躍する。2016年7月にはバンド名をCIVILIANと改め、8月に改名後初となるシングル「Bake no kawa」を発表。11月にはSony Music Recordsよりメジャーデビューシングルとなる「愛 / 憎」をリリースする。2017年8月にメジャー3作目のシングル「顔」を発表した。
- 篠原ともえ(シノハラトモエ)
- 1979年3月29日生まれ、東京都出身。タレント、衣装デザイナー、歌手、女優、ナレーター、ソングライター等、幅広い活動を展開中。1995年、16歳のときに石野卓球プロデュースの篠原ともえ+石野卓球名義で歌手デビュー。シングル「チャイム」をリリースする。1990年代には自身のアイデアでデコラティブな“シノラーファッション”を発信。大学ではデザインを本格的に学び、ライブなどで着用する衣装はデザイン、縫製ともに自身で手がけている。2013年から松任谷由実コンサートツアーの衣装デザイナーに抜擢。藤あやこのCDジャケットの衣装デザインも手掛けている。また、近年では天文を愛する「宙(そら)ガール」としてプラネタリウムでの星空解説やライブを開催。2011年には天文や宇宙の知識を問う「天文宇宙検定」3級に合格した。著書には「ザ・ワンピース」「ザ・ワンピース2」(ともに文化出版局)、「篠原ともえのハンドメイド~アクセサリー&ファッション小物77~」(講談社)など。2017年3月には初のベスト盤CD「ALL TIME BEST」をリリースした。