ナタリー PowerPush - cinema staff
「進撃の巨人」諫山創と同世代対談
スタジオに集まって、みんなでマンガを読み直すところから(飯田)
──「great escape」のお話も伺っていきたいんですが、cinema staffの皆さんはこのタイアップの話が来る前から「進撃の巨人」を読んでましたか?
久野 はい。メンバー間で教えあうまでもなく、それぞれ自発的に読んでましたね。僕はまだ2巻くらいしか出てなかった頃に、THE NOVEMBERSの吉木(諒祐)くんに薦められました。
飯田 とにかくインパクトがすごかったですね。「世界は残酷だ」ってセリフが何度も出てきますけど、その描写とか全然躊躇がなくて、ついつい読み進めてしまう。エレンとかキャラクターの気持ちがすごく緻密に描かれているから、ありえない世界観でも感情移入しちゃうんですよね。すごく面白かったです。
──ではエンディング曲のオファーが来たときは、全員うれしくてしょうがなかったのでは?
飯田 もう、「よっしゃー!!」って、すぐさま打ち上げしましたね(笑)。好きなマンガにこうして関われることがうれしくてうれしくて。
三島 本当に光栄だと思いました。お話をいただいたのが今年の2月頃で、前のアルバム(「望郷」)のミックス段階でけっこうスケジュールもカツカツだったんですけど、「これだけはやらせてくれ」ってスタッフに頼み込みました。
諫山 そうだったんですか。ありがとうございます。
──諫山さんはアニメ前期のオープニング曲「紅蓮の弓矢」(Linked Horizon)は歌詞の制作に携わっていましたが、この「great escape」では特に関与はしていないんですか?
諫山 今回はそうですね、何もリクエストしてないです。
三島 任せていただいたんだな、と粋に感じました。だから今回はもう僕の解釈でやってやろうって思いまして。作品のイメージに沿って作ることと、音を自分たちらしくすることのバランスをすごく考えました。
飯田 メンバー間でよく話し合いましたね。スタジオに単行本を持って集まって、みんなで読み直すところから始まりました。
久野 わざわざスタジオを借りて、マンガ読んでたんだよね(笑)。「ここがこうだからこういう曲にしようか」とか有益な話し合いじゃなくて、単純に「やっぱり面白いなあ」って話しただけの時間でしたけど。
三島 いやいや、俺はちゃんと考えてたよ!(笑)
聴いていくうちに感想が変わる楽しみがある(諫山)
諫山 最初に聴かせていただいたときになぜか、キーボードの方がいるのかなって思ったんですけど、幻聴でした。
飯田 辻くんのギターの音にけっこうエフェクトがかかってるからですかね。
辻 そうですね。エフェクティブな音色を使うことが多かったです。
諫山 あとは作品に寄せたキーワードっぽいのが聞こえてきて、「うわあ、ありがたいな」っていうか、ちょっと申し訳ない気持ちになって。
三島 なんでですか(笑)。当然のことですよ!
──「壁の外へ」とか、作品に寄せたキーワードが詞に散りばめられてますよね。ネット上でも「この“俺”ってエレンのこと?」とか、さまざまな考察で盛り上がっています。
三島 最初はエレン、ミカサ、アルミンをそれぞれメインに3曲候補を作って、歌詞もほぼフィックスしてたんです。「great escape」はエレンの中の巨人とエレンを思い浮かべて、巨人化の力を制御できるか云々っていうイメージで書き出したんですが、徐々にそれだけの話ではなくなってきて。
諫山 空白があるというか、何にでも当てはめられるように言葉を選んでいる気がしました。
三島 そうですね。ちょっと表現を曖昧にして、聴く側に考えてもらいたいなってあとから思ったんです。
飯田 いろんな考え方ができるんだとしたらお客さんに任せてもいいかなと。エレンの話だと感じる人もいれば、ほかのキャラクター説もあって全然よくて。
諫山 はじめは調査兵団の歌かなって思ったんですが、聴いていくうちに「これにも当てはまるな」っていう感じで、感想が変わっていく楽しみがすごくあると思いますね。
三島 うれしいです!
飯田 今回は4人で話し合って作り上げたっていう実感が強いです。例えば「生きた屍」って部分は三島が変えたほうがいいか迷ってたんですけど、印象的なフレーズだからって僕ら3人が言って残したり。
三島 普段は僕の中にあることをテーマとして曲を作るので、ほかの3人は僕に遠慮して言わないこともたくさんあると思うんです。でも今回は作品に沿うという大前提があったので、4人それぞれがバラバラに持ってた「進撃の巨人」への意識を集約した感じで。僕が中心になって歌詞も書きましたけど、いつもよりすごくディスカッションが多かったですね。勉強になりました。
諫山 バンドだとやっぱり、メンバー間の「ここはこうあるべきでは」っていうぶつかり合いがすごそうだなって思うんですよ。マンガってほとんど1人で作るものなので、楽しいんですけど、1人でできることには限界もあって。だからアニメでは集団で何か1つのものを作ることに参加させてもらっている感じがあって、うれしいですね。
三島 その思いは僕たちもすごくあります。1つのプロジェクトに参加させてもらうことが今までなかったので、新しい喜びがとてもありました。クリエイティブ魂にも火がつきましたね。
飯田 「great escape」が何かのきっかけになって、多くの人に僕らの音楽を聴いてもらえたらとてもうれしいです。
──というところで、残念ながらそろそろ終了の時間になってしまうんですが……。
三島 え、マジですか! メンバーそれぞれ、諫山先生と話したい話題を持ってきたんですが……。僕は「マブラヴ オルタネイティブ」で、辻はももクロを……。
辻 諫山先生、(有安)杏果推しなんですよね。
諫山 あ……はい。モノノフなんですか?
辻 はい。(百田)夏菜子推しです!
三島 今度、そのあたりのこともぜひゆっくりお話させてください(笑)。
- cinema staffニューシングル「great escape」/ 2013年8月21日発売 / 1300円 / ポニーキャニオン / PCCA-03900
- [CD] 1300円 / PCCA-03900
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収録曲
- great escape
- cinema staff【僕たちの秘法】tour Final@2013.07.11 渋谷CLUB QUATTRO
(望郷 / 世紀の発見 / into the green / 革命の翌日 / 西南西の虹 / 溶けない氷)
cinema staff(しねますたっふ)
飯田瑞規(Vo, G)、辻友貴(G)、三島想平(B)、久野洋平(Dr)からなる4人組ロックバンド。2003年に飯田、三島、辻が前身バンドを結成し、2006年に久野が加入して現在の編成となる。愛知、岐阜を拠点にしたライブ活動を経て、2008年11月に1stミニアルバム「document」を残響recordからリリース。アグレッシブなギターサウンドを前面に打ち出したバンドアンサンブルと、繊細かつメロディアスなボーカルで着実に人気を高めていく。2012年6月にポニーキャニオン移籍第1弾作品となる「into the green」を、同年9月にメジャー第2弾となる4thミニアルバム「SALVAGE YOU」を発表。2013年5月にメジャー1stフルアルバム「望郷」を発売し、同月末から7月にかけて全19公演にわたる全国ツアー「cinema staff『僕たちの秘法』tour」を実施した。同年7月、テレビアニメ「進撃の巨人」の後期エンディングテーマに新曲「great escape」を提供。8月には同曲を含むニューシングル「great escape」をリリースした。
諫山創(いさやまはじめ)
1986年生まれ、大分県出身。2006年、週刊少年マガジン(講談社)のMGP(マガジングランプリ)にて「進撃の巨人」で佳作受賞。2008年、同誌の新人マンガ賞にて「orz」で入選、同作にてデビューを果たす。2009年、別冊少年マガジン(講談社)にて「進撃の巨人」の連載を開始。同作は2011年に第35回講談社漫画賞少年部門を受賞。2013年4月からはテレビアニメ化され、大ヒットを記録している。なお、同年8月9日には「進撃の巨人」11巻を発売。累計発行部数は2300万部を突破している。
2013年8月23日更新