ナタリー PowerPush - cinema staff

結成10年目でメジャー進出 今までの軌跡を振り返る

歌を活かすことが自分たちの武器になる

──サウンド的にはオルタナやポストロックに傾倒しつつも、それでも歌を大事にしたからこそ、今のcinema staffがあると思うんですけど。それはなぜだったんですか?

飯田 NUMBER GIRLのようなオケとボーカルのバランスに憧れるようになってからは、あんまり歌を前に出さないようにしたり、声を楽器の一部のように存在させようとしていたんです。それで、僕も歌い方を変えたりしたんですけど、全然うまくいかなくて。自分のボーカル的にはそのアプローチが合わなかったんです。大学1年くらいのときはすごく悩んでました。自分の声は今目指しているバンドの方向性では活きないんじゃないかって。

──飯田さんが自分の声質を受け入れる時間が必要だったと。

飯田 そうですね。好きな音楽が変わっていくタイミングで自分の声がどんどん嫌いになって。自分の声を受け入れるまでにある程度の時間がかかりましたね。

──悩んでるときにインストバンドになってしまおうとか、そういう発想はなかったんですか?

三島 それは思わなかったですね。みんな、なんだかんだいって歌がある音楽が好きだったんで。あとは大学に入ってすぐくらいから同じく残響recordに所属しているmudy on the 昨晩と仲が良かったんですけど。彼らを観ていたら、インストで彼ら以上カッコいいバンドになるのは無理だなと思って。「自分たちのスキルでできることはなんやろう?」って考えた結果、歌を大事にするようになっていったんです。

久野 インディーズで出した最初のミニアルバム「document」(2008年11月リリース)までは、ミックスをするときも「もうちょっとボーカル下げたほうがいいんじゃない?」って言っていたし。サウンドと歌のバランスが定まるまで結構時間がかかりましたね。

三島の曲は一度聴いた時点で「歌いたい」って思う

──そういう意味ではこの「into the green」という曲の存在は感慨深いものがありますね。間違いなく飯田さんの声質と、均等なサウンドと歌のバランスがなければ体現できない曲になっている。この曲は、cinema staffのひとつの答えでもあるんじゃないかと。

三島 うん、そうかもしれない。当時を考えると感慨深いですね。

飯田 昔だったら絶対作れなかった曲ですね。

──三島さんが書くメロディは一貫して叙情的なドラマ性に満ちていて。飯田さんは彼が書くメロディをどう受け止めていますか?

インタビュー写真

飯田 当初は自分が曲作りしていたんですけど、彼には勝てないと思った。彼が持ってくる曲で面白くないと思ったものは今まで1曲もないんですよ。まさに「into the green」がわかりやすいと思うんですけど、一度聴いたら忘れられないメロディを持ってくるんです。1曲の中で感動するポイントが絶対にあって。いつも彼が曲を持ってきて一度聴いた時点で「歌いたい」って思うんです。

──最高のメロディメイカーが隣にいたという。

飯田 ホントにそうですね。

──三島さんはその言葉を受けてどうですか?

三島 昔は、自分がメロディを作るのが得意だとは思ってなくて。でも、ずっと無意識に感動するいいメロディを書きたいという思いが働いていたんだと思います。今では……才能があるのかなと思いますね(笑)。

一同 (笑)。

──三島さんって、かなりのロマンチストでしょう?

三島 そうなんですよ。よく言われます(笑)。でも、自分のメロディは飯田が歌うからこそ活きると今は思っていて。最初は「なんでもっと勢いのある感じを歌に出せないんだよ」って思っていたんですけど、どこかのタイミングで逆転の発想を持つようになって。これがいいんだって思えるようになってからは、彼のボーカルをすごいなと思うようになったんです。飯田は、たまに弾き語りもやるんですけど、ギターはそこまでうまくないのに声の力だけで空気を作ることができるんですよ。それは素晴らしいことだなって思います。

インディーズでのキャリアはムダではない

──ライブも楽曲の構造と同じくエモーショナルかつドラマティックな空間を作っていますよね。

三島 昔はもっと内向きだったんです。辻くんは、昔からセンターでギターを弾いていたんですけど、「TEENS' MUSIC FESTIVAL」に出場した頃はドラムに向かってギターを弾いていて。

辻友貴(G) 1回も前を向かないっていう(笑)。

久野 エフェクターも後ろに置いてあって、飯田くんと三島くんが左右に立って前を向いて、辻くんは僕とひたすら向き合っていて(笑)。

──でも、今は辻さんが率先して前に出ていますよね。そうなったのは?

 残響recordと出会ったときに社長(河野章宏 / te')に「それ、よくねえぞ」ってめっちゃ言われて。僕は「これがいいのにな」って思いながら(笑)、1回前を向いてみたんです。そしたら、すごく景色が変わって。お客さんが見えるっていう。

──当たり前なんですけど(笑)。

 お客さんが見えると、その人たちに伝えたいという気持ちが増すし、自分も楽しいなと思って(笑)。それからどんどん前に出るようになりました。

──残響recordからずっと作品をリリースしていくという選択肢もあったと思うんですけど、今回メジャーとの契約に踏み込んだのはどういう思いがあったんですか?

三島 意外と昔からメジャー指向ではあったんです。

久野 インディーズにこだわっていたわけでもなくて。

三島 もちろん、残響recordに出会えてよかったと思うし、残響に出会ってなかったらバンドが今みたいな形には絶対になってなかったと思います。でも、メジャーには機会があればいきたいなと思っていて。

──自分たちの音楽はより多くの人に届くべきだと思っていたし?

三島 それはずっと思ってました。ただ、インディーズでやったキャリアは間違いなくムダになっていないので。インディーズの経験がなく、自分たちの芯が定まってないまま突然メジャーに行っていたら、どうしたらいいかわからなかったと思います。自分たちの芯は残響で培われたものなので。

CD収録曲
  1. into the green
  2. 棺とカーテン
  3. チェンジアップ (Re-Recording)
  4. 優しくしないで (Re-Recording)
  5. KARAKURI in the skywalkers (Re-Recording)
  6. AMK HOLLIC (Re-Recording)
cinema staff 1st E.P.「into the green」
release oneman live「望郷」
2012年7月1日(日)
岐阜県 岐阜BRAVO
OPEN 17:30 / START 18:00
※SOLD OUT
2012年7月15日(日)
東京都 LIQUIDROOM ebisu
OPEN 17:15 / START 18:00
料金:前売3000円 / 当日3500円
(ドリンク代別)
cinema staff(しねますたっふ)

プロフィール写真

飯田瑞規(Vo, G)、三島想平(B)、辻友貴(G)、久野洋平(Dr)からなる4人組ロックバンド。2003年に飯田、三島、辻が前身バンドを結成し、2006年に久野が加入して現在の編成となる。愛知、岐阜を拠点にしたライブ活動を経て、2008年11月に1stミニアルバム「document」を残響recordからリリース。アグレッシブなギターサウンドを前面に打ち出したバンドアンサンブルと、繊細かつメロディアスなボーカルで着実に人気を高めていく。2012年6月、ポニーキャニオンに移籍。1st E.P.「into the green」をリリースした。