「ジュ」の響きと「……」のニュアンス

──歌詞についてはやはりアニメのプロットをもとに？

清　はい。アニメ自体がコンセプトとして“言葉”に重きを置いているそうなので、言葉の力というものを自分なりに意識しました。あと、サビのド頭は横文字でインパクトがあるものがいいなと直感で思って。

──結果なぜ「ジュ・ジュテーム・コミュニケーション」になったんでしょう。

清　わかんないですけど、女の子で神社の娘で……ちょっとしたラブもあるのかなと思ってそういうストーリーにしてみました。これで恋愛要素がないアニメだったら残念ですけどね（笑）。

──単に「ジュテーム」じゃなくて「ジュ・ジュテーム」なのは、語感的なもの？

清　そうですね。エンディングテーマで明るいものがいいという希望がある中で、とっつきやすいポップ感みたいなのは意識していて。

千菅　響きがおしゃれでかわいいなと思いました。私はいつも歌詞の意味を深く考えることよりも、音の響きで音楽を聴いていることが多くて。清さんの歌詞は、意味もすごくかわいらしいんですけど、メロディに乗ったときに言葉が気持ちよく引っかかるところがあるのが素敵だなと思います。

──歌詞の響きを含めてグルーヴを生んでいるみたいな。そこは自然に？

清　いや、やっぱり音乗せはすごく大事にしている部分ですね。意味ももちろん大事なんですけど、歌モノはメロディが一番大事なので、言葉の響きを音にどう合わせるかという発想のほうが強いです、僕は。

──歌っていて特に難しかったところはありますか？

千菅　この曲の女の子のかわいらしさって、ちょっと思わせぶりなところというか、「知らないもん！」みたいなところだと思うんですよ。今までの曲でそういう部分を出したことがなかったので、魅力的な半面、難しかったですね。例えば「わかるでしょ」のところで「でしょう？」って語尾が上がるところはかわいい歌い回しだし、「……」のところは全部かわいいんですよね。ちょっとすねてるというか。そこが好きなところでもあり、難しかったところでもあります。

──言葉にはなっていない三点リーダーのニュアンスも重要なところだと。ライブで歌っていくうちに、また違ったニュアンスが生まれるかもしれないですね。

千菅　そうですね。ライブで歌うときは人の顔を見ながら歌うから、レコーディングのときとはまた違った温度感になるのかなあって思います。

完成型と設計図

──今日はせっかくの機会なので、お互いに何か聞いてみたいことはありませんか？ まずは千菅さん。

千菅　さっきの話で気になったんですけど、曲を作るときはいつもどのぐらいの完成型をイメージされてるんですか？ ご自身の曲を作るときと、今回の私のようによく知らないところから初めて作るときでは違うと思うんですけど。

清　基本的に、自分で作詞作曲に加えて編曲までやるときには、逆に完成型を想像していないと頓挫してしまうことが多いので、「ここでストリングスを鳴らして」というところまで具体的に考えた上で作ることが多いですね。編曲を任せちゃうときも、なんとなく完成型を考えた上でアレンジャーにお願いするんですけど、アレンジャーに委ねたほうがいい部分も多いので、完成型の雰囲気やスケール感だけざっくり考えるようにしてます。どちらにせよ、どう転ぶかなあみたいな感じで作っていくことはないですね。

──基本的には設計図通りに進めていくタイプ。

清　うん、けっこう決め決めでやりますね。

千菅　へえー。そうなんですね。

──清 竜人25のライブを観た上で気になったことはありませんでしたか？ ポップでピースフルではあると思いますけど、いろいろストレンジなところもありますよね？

千菅　ははは（笑）。最初に写真を見たときは戸惑ったんです。これは清さんと思えばいいのか、だとしたら女の子が周りにいるのをどう理解したらいいのか、アイドルグループとして見たら真ん中に清さんがいるのはなんで？って（笑）。でもライブを観てみたら疑問は全部飛んで、うれしい気持ちだけがあふれてきて……本当に素晴らしかったんですよ！

清　ああ、そうですか（笑）。うれしいですね。

──自分が夫人だったら……とか考えませんでした？

千菅　いやー、ひたすら夢の世界だったので、自分が入ったところなんて想像もしなかったです。でも、私じゃちょっと務まらないと思う（笑）。

デビュー3年目に訪れる節目

──では今度は清さんから千菅さんへ、何か気になることなどあれば。

清　パーソナルな部分がまだ未知数なので、まずどうやってこの世界に入ってきたのかが率直に気になりますね。

千菅　きっかけは「マクロス」のオーディションです（2012年に行われた「マクロス」シリーズ30周年記念「ミス・マクロス30コンテスト」で歌手部門“シンガー・ウィング”のグランプリを獲得した）。中学の頃はラジオをよく聴いていて、ラジオのアナウンサーになりたかったんです。でも、高校に入って深夜アニメにハマってしまって（笑）。深夜アニメからアニメソングにハマって、すべての放課後をカラオケに費やすようになって。自分もこの世界に入りたい！と思ったので、大学に入ってから何度かオーディションを受けたんです。その中でご縁があったのが「マクロス」のオーディションでした。

清　自分から進んでオーディションを受けたの？

千菅　はい。

──案外積極的なんですね。

千菅　自分にはこの道しかない！というのはあまりないんですけど、何かをしたい、人に伝えたいという気持ちはすごくあって。それが原動力で、そのための道を探ってきただけなのかなって最近思うんです。

清　この世界に入って何年目なんでしたっけ？

千菅　2013年の2月にデビューして、今は3年目ですね。

──デビューからの2年間はいかがでしたか？

千菅　うーん。新しい体験ばかりで、めまぐるしい日々でした。考え方とか、 すべてが日々アップデートされていくというか。それが楽しいので、今は昨日の自分とあまり一貫性を持たせないようにしているというか、自分で「私はこういう感じ」と決めないようにしています。いただいた仕事を真っ白な気持ちで全力で取り組むと結果どうなるか、を楽しみながらやっています。

清　僕も3年目ぐらいからそういう気持ちでやってたんですけど、どんどん髪型とか作風がリセットされていって……。

千菅　へへへへへへ（笑）。

清　とっ散らかっちゃいましたね（笑）。デビューから2年ぐらいまではスタッフと組んだプログラム通りに進めて、そこから先続けていくために新しく組み直して考える必要が出てくるのは、みんな3年目ぐらいのタイミングだと思うんです。そこで僕は好き放題しちゃったんで、今こういうスタイルになっちゃいましたけど（笑）。

──千菅さんはアニメソングに軸を置いて活動されていますけど、アニメソングはその特性上、作品によって音楽的なジャンルの振れ幅もかなり大きいですよね。でもどこかのタイミングで「千菅春香と言えばこれ」という強力な個性が見つかるかもしれない。

千菅　それはもしかしたら自分でも、どこかで探しているかもしれないです。本当にわからないですね、自分がどうなっていくのか。