Chilli Beans.が1stフルアルバム「Chilli Beans.」を7月13日にリリースした。
2019年の結成以来、順調にファン層を拡大し“ネクストブレイクバンド”として注目されるChilli Beans.。自身のバンド名を冠した待望の1stアルバムには、人気曲「lemonade」やVaundyとの共作曲「アンドロン」、ドラマ「モトカレ←リトライ」のオープニング主題歌「マイボーイ」など14曲が収められている。音楽ナタリーは3人にインタビューを行い、この3年間を振り返って感じることや、アルバム収録曲に込めた思いを聞いた。
取材・文 / 天野史彬撮影 / マスダレンゾ
結成からの3年間
──1stフルアルバム「Chilli Beans.」は、バンドの新たな表情が見えると同時に、これまでの集大成的な面もある濃密な1作だと感じました。まず、2019年に結成してから今までを振り返ったとき、皆さんにとってはどんな期間だったと思いますか?
Lily(G, Vo) 初めてのことがたくさんあったけど、何も知らないからこそ、怖いことがあまりなかった3年間だったような気がします(笑)。そもそも、ずっと「バンドをやりたい」と思っていて、それが実現したのがうれしいことだったし、自分が「やりたい」と思ったことを遊ぶようにできたのがよかったなと思いますね。
Maika(B, Vo) もちろんがんばってはきたけど、「死ぬ気でがんばりました!」というよりも、そのときの自分にできることをちゃんと探して、1つずつ手を付けていった3年間だったと思っていて。その結果として、できることが増えていった期間でした。
Moto(Vo) あと、いろんなことに気付いた期間だったと思います。バンドをやる前よりも、自分がやりたいことや、内面のこともわかってきたと思うし。表現できることの幅も広がったと思うし、学びが多かったです。
──改めてお互いの顔を見て、3年前と今とで変わったと思います?
Moto うーん……最初からこんな感じでした。
Maika・Lily (笑)。
Maika (笑)。まあ、変わったというより、お互いをもっとよく知ったという感じだよね。
Lily そうだね。最初の頃に比べて、Motoが気持ちをいっぱい発してくれるようになったり。
──そこは、Motoさん的に心境の変化があったんですか?
Moto それまで、しゃべるのが怖い時期があって。自分では意識してなかったんですけど、気付いたら受け入れ態勢になっちゃう、みたいな。でも、2人は真剣に話を聞いてくれるから、話せることが増えたんだと思います。
常に遊んでいる感覚
──3人は音楽制作以外の場面でのコミュニケーションも多いんですか?
Maika いや、意外と遊びに行くことはないんですよ。
Moto でも、めちゃくちゃ長い時間一緒にいるからね。
Lily わざわざ一緒に遊びに出かけたりはしないけど、言ってしまえば常に遊んでいるような感覚だよね。遊びながら作っちゃったような曲もあるし。
──では、今回のアルバムの中でもっとも「遊びながら作れた」感のある曲と言うと?
Maika 「School」かな。
Lily 「School」は3人でスタジオに入って、その場でどんどん打ち込んでいって作った曲で。リファレンスとしては、ビーバドゥービーの「Last Day on Earth」みたいな、あったかい雰囲気にしたいよねって。「ここにいれば大丈夫」と思えるような、3人とも自由になれるような空気感というか。
──「自由」というのは、歌詞のモチーフにもつながっていますよね。
Moto この歌詞の原型は、3人でカフェで話しながら考えたんです。
Maika 描きたい主人公がいたんです。真面目な子で、その子は「シャーペンは使っちゃダメ」みたいな学校の変なルールもちゃんと守っているような子で。でもあるとき、ちょっとおしゃれなシャーペンを買っちゃって、先生に怒られちゃうんですよ。でもふと「別に、そんなルール守らなくてもいいんじゃない?」と思うようになって、どんどんしがらみから解放されていく、ハッピーになっていく、みたいな。この歌詞の大もとを書いたとき、バンドに対して「こうしなきゃダメでしょ」というようなことを言われたタイミングだったんですよ。たぶんそういう言葉への反抗心が沸々としていたんだと思います。
──そのときの気持ちが出た曲でもあるんですね。
Moto そうですね、「自由に行こうぜ!」って。
──この曲は学校が舞台ですが、皆さんは学生時代の自分を振り返ると、どんな子だったと思いますか?
Moto 私は学校があまり好きじゃなくて。ちょっと反抗したり、行かないこともありました。
Maika 私は真逆で、めちゃくちゃ真面目な学生をやってましたね。「スカートを折っちゃいけない」とか「前髪は眉毛の上じゃなきゃいけない」みたいなルールも絶対に守っていたし。高校生くらいからちょっとずつ抜け道を見つけ始めたけど、それでも怒られるようなことはやらなかったです。なので、「School」の主人公にはめっちゃ共感できるんですよね。
Lily 私はとにかく学校が嫌だったんですけど、真面目だから逃げることもできなくて、「どうしよう……」って感じでした。友達も多いほうじゃなかったから、「とりあえず目立たないようにしよう」ということだけを考えていましたね。クラス替えの初日の自己紹介も、みんなが注目するから嫌で。なので、初日だけは休んでました(笑)。
「居場所でありたい」という思い
──先ほどLilyさんがおっしゃっていた「ここにいれば大丈夫」という感覚って、Chilli Beans.が生み出そうとしている空気感と深くつながるものなのかなと思いました。
Maika そういう話はよくしますね。「居場所でありたい」って。私たちは3人とも音楽に居場所を求めてきたタイプだし、だからこそ必然的にそう思うんだと思います。
──今回のアルバムは1曲目「School」で始まり、その後も前半には「It's ME」や「This Way」といった、「自分であれ」というメッセージを発している、聴き手を鼓舞するような新曲が並んでいると思うんです。個人的に、「This Way」の「昔描いた夢なんて / どこにも見当たらない / そんなの君だけじゃないの」というラインに惹き付けられたのですが、この部分はどういった思いで書かれたんですか?
Maika 「This Way」はチリビを組んで2、3カ月くらいの頃に作った曲で、ここの歌詞は私が書いたんですけど……このとき、怒り狂ってたんですよ。
Moto・Lilyo (笑)。
Maika ある人に「あなたも早く自分の力の限界を知って、描く夢のサイズを自分に合わせなさい」というようなことを言われたんです。それに私はめっちゃ怒ってて。誰だって、もしかしたら昔はハリウッドでデビューしたいという夢があったかもしれないじゃないですか。それは現状近くにあるものではないかもしれないけど、誰かにバカにされる筋合いはないし「夢が大きいのは悪いことじゃないじゃん!」って。自分だけ悟って「次のステップに行きました」感出すなよって。
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メッセージではなく自戒