音楽ナタリー Power Push - 茅原実里

16編の物語でつむぐみのりんの恋愛観

みのりんの恋は、猪突猛進?

──そのタコ化の甲斐あってか(笑)、事実、1曲目から16曲目まで通して聴くと、刻々と移り変わる心情が細やかに表現されているのがわかります。

ありがとうございます。

──ざっくり言うと、1曲目のプロローグから5曲目にかけて恋に対してだんだん自覚的になっていき、シングルにもなっている6曲目の「恋」で文字通り恋に目覚め、リードトラックである10曲目「Love Blossom」でめでたく結ばれ、それが15曲目「会いたかった空」へと収斂し、エピローグへ……という。

茅原実里

うんうん。

──この一連の流れに、茅原さんの恋愛感がどのように反映されているのか、お聞きしていいですか?

恋愛観、うん、恋愛観ねえ……。

──例えば6曲目の「恋」は、ご自分で作詞なさっていますよね?

そうです。恋。うーん、恋か。恋に気付いたら、マズいですよね?

──マズいとは、盲目的になってしまうとか?

そう。私はイノシシみたいな感じになります。猪突猛進。特に10代の頃の恋っていうのはいろいろと、まあ当時は当時で一生懸命だったからいいのかなとも思うんですけど、冷静さを失って、恋してる自分に酔ってるようなところがあった気がしますね。

──それは、中学時代の初恋の相手であるシノヅカ君に対して?

あっはは!(笑) 私そんな話しましたっけ!?

──4年前の、ナタリーの初インタビューで(参照:茅原実里「D-Formation」インタビュー)。

シノヅカ君です、はい。恋は実りませんでしたけど。3年間の片思いを経験して、恋ってこんなにつらいんだ、苦しいんだ、でも楽しいんだっていうことを教えてもらいました。うん。

──その「楽しい」気持ちを、3曲目「視線の行方」や4曲目「きみのせいだよ」のあたりで上手にすくい取っていますよね。

自分の恋心に気付くまでの間って、すごくいいものですよね。もちろん気付いてからのときめいてる時期もいいんですけど、好きになってしまうとどんどん思い詰めて苦しくなってくるので、恋の手前の「なんかよくわかんないけど、この人の近くにいると楽しいな」っていう時期は、ただウキウキしていられますから。

──そのウキウキ状態であるアルバムの序盤は、すごく青春してますよね。

青春ですよ! ほんと、青春ですよねー。

──そう考えると、このアルバムは少女から大人の女性へ成長していくストーリーにも読める。

まさにその通りだと思います。やっぱり恋は人を成長させますからね。そして、必ず相手が要るんです。1人じゃ恋愛はできないですからね。アルバム後半の「ふたり」という曲の歌詞にも書きましたけど、1人じゃなくて、2人なんです。そこに気付けないとダメなんです。一緒に育んでいくものですからね。そう、そうなんですよ。恋愛って、いいですよね(笑)。

みのりん、「一人ぼっちで妄想まみれ」になる

──他方で、今おっしゃった通り恋愛には苦しくなってくる時期もあって、それが8曲目「春風千里」で極まった感があります。この曲はアルバムの中でも例外的にシリアスで、ギラギラした、情念を感じる曲ですね。

そうですね。「春風千里」はあとから差し込んだ“陰”の曲で、嫉妬がテーマなんです。というより、楽曲が先にあって、そのギラギラした曲調から嫉妬というイメージが浮かんで、面白そうだから自分で作詞しました。

──その歌詞に、「一人ぼっちで妄想まみれ」というフレーズがありますが。

茅原実里

はい。……自分の歌詞を掘り下げられるとなんだか恥ずかしいですね(笑)。

──単刀直入に、どんな妄想をなさるんですか?

10代の頃は、極端に相手を美化してしまったりとか……まあ、いい妄想と悪い妄想がありますよね。「春風千里」はあんまりいい妄想じゃないかな。届かない思いにネガティブになってしまっている状況なので。

──では、この曲から離れて、恋にまつわる茅原さんの「いい妄想」とは?

好きな人ができたら、やっぱり「この人と結ばれたらどんな未来が待っているんだろう?」「どんな結婚生活を送るんだろう?」っていうところまで飛んで妄想しちゃいますね(笑)。私は子供の頃から結婚願望が強かったんですよ。両親がすごく仲良しで、ずっと「お父さんとお母さんみたいに、幸せな家庭を築きたいな」と思って生きてきたので。あと、うちは3人姉弟なんですけど、やっぱりみんな仲良しで、にぎやかな家庭で育ったんですよね。

──幸せな家族像まで飛躍するんですね。小坂明子の「あなた」状態。

「あなた」は昔カバーして路上で歌ってたっけ……。でも、恋をした時点でそこまで想像するって、考えてみたら怖いですね。何年か付き合ってからそういうふうに思うならまだしも……。そうね、私はちょっと先走り気味に妄想するタイプかもしれないですね。

──では「悪い妄想」は? 失恋につながるような妄想ということですか?

そう。ええと、私はですね、自分に自信がないんですよ。なので「自分のこういうところを否定されたらどうしよう、受け入れてもらえなかったらどうしよう」とか、そういうことですかね。

──「自分のこういうところ」の具体例を、もし差し支えなければ。

ネガティブなところ!(笑) あと、料理が上手じゃないとか……。

──えっ、そうなんですか? 茅原さんがブログにアップされてる料理の写真を見るに、とてもおいしそうですけど。

作るのは好きですけど、おいしいかどうかはわからないですよ(笑)。でも、うーん……やっぱり悪い方向に考えだすとキリがないですね。私はお箸の持ち方があんまり綺麗じゃないから、それで嫌われるんじゃないかとか、そういう細かいところまで気になっちゃって。

──あ、それわかります。僕も正しい箸の持ち方ができないんですよ。

人とごはん食べるとき、恥ずかしいですよね。もういい大人なのにダメだなあと最近思い始めて、それでお箸の持ち方を直す努力をしてます。必死で。

ニューアルバム「Innocent Age」 / 2016年4月6日発売 / Lantis
Blu-ray付初回限定盤 [CD+Blu-ray] 6264円 / LACA-35550
DVD付初回限定盤 [CD+DVD] 5184円 / LACA-35551
通常盤 [CD] 3240円 / LACA-15550
CD収録曲
  1. いつかのわたしへ
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:黒須克彦 / 編曲:須藤賢一]
  2. Awakening the World
    [作詞:こだまさおり / 作・編曲:堀江晶太]
  3. 視線の行方
    [作詞:こだまさおり / 作曲:田代智一 / 編曲:菊池達也]
  4. きみのせいだよ
    [作詞・作曲:楠瀬拓哉 / 編曲:多田彰文]
  5. あなたの声が聴きたくて
    [作詞:松井洋平 / 作曲:俊龍 / 編曲:藤田淳平 (Elements Garden)]

  6. [作詞:茅原実里 / 作・編曲:堀江晶太]
  7. 月の様に浮かんでる
    [作詞:松井洋平 / 作・編曲:藤末 樹]
  8. 春風千里
    [作詞:茅原実里 / 作・編曲:山元祐介]
  9. ラストカード
    [作詞・作曲:楠瀬拓哉 / 編曲:中土智博]
  10. Love Blossom
    [作詞:茅原実里 / 作・編曲:黒須克彦]
  11. Dancin' 世界がこわれても
    [作詞:畑亜貴 / 作・編曲:山下洋介]
  12. カタチナイモノ
    [作詞:茅原実里 / 作・編曲:藤末樹]
  13. ふたり
    [作詞:茅原実里 / 作・編曲:黒須克彦]
  14. ありがとう、だいすき
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:rino / 編曲:Evan Call(Elements Garden)]
  15. 会いたかった空
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:菊田大介(Elements Garden)/ 編曲:藤田淳平(Elements Garden)]
  16. はるかのわたしへ
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:黒須克彦 / 編曲:須藤賢一]
Blu-ray / DVD収録内容
  • 「Love Blossom」MV
  • 「恋」MV
  • 「Minori Chihara Xmas Party 2013」ライブ映像
Minori Chihara Live Tour 2016 ~Innocent Age~
2016年6月18日(土)
神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
2016年6月25日(土)
宮城県 イズミティ21 大ホール
2016年7月10日(日)
福岡県 福岡国際会議場 メインホール
2016年7月17日(日)
大阪府 大阪国際会議場 メインホール
2016年7月18日(月・祝)
愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール

料金:全席指定 7020円(全公演共通)
一般発売:2016年4月23日(土)10:00~

茅原実里 ニューアルバム「Innocent Age」発売記念イベント
2016年4月6日(水)
東京都 ダイバーシティ東京プラザ フェスティバル広場

OPEN 18:00 / START 18:30
内容:トーク&ミニライブ / 特典お渡し会
観覧無料(優先エリアあり)

※「優先エリア券」および「特典お渡し会参加券」は東京・TOWERminiダイバーシティ東京 プラザ店でのアルバム予約購入者(全額前金)、もしくは当日イベント会場内特設ブースでのアルバム購入者に先着で配布。

茅原実里(チハラミノリ)
茅原実里

2004年4月にテレビアニメ「天上天下」棗亜夜役で声優としての活動を始め、同年12月にはアルバム「HEROINE」で歌手デビュー。2006年4月より放送されたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門有希役で一躍注目を浴び、平野綾、後藤邑子と共に歌った同アニメのエンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」は大ヒットによりゴールドディスクに認定された。2007年1月にLantisより発売されたシングル「純白サンクチュアリィ」を契機に、本人名義による音楽活動を再開。以降、アニメソングを中心とした楽曲を数多く発表し、声優アーティストとして高い評価を集める。2010年5月には初の日本武道館ワンマンライブを大成功に収め、2011年3月には「第5回声優アワード」歌唱賞を受賞した。2014年9月にはデビュー10周年を記念したベストアルバム「SANCTUARY ~Minori Chihara Best Album~」を発表。同年11月には2度目の日本武道館公演を行った。2016年4月にはおよそ2年半ぶりとなるオリジナルアルバム「Innocent Age」をリリース。