CHiCO「fam!」インタビュー|大塚 愛とのタッグで描く、大切な人との温かな絆

CHiCOの2ndシングル「fam!」がリリースされた。

表題曲「fam!」は、テレビアニメ「夜桜さんちの大作戦」のエンディングテーマ。大塚 愛が書き下ろした、“家族の絆”をテーマとする温かな1曲だ。学生時代から大塚の作品に親しんできたというCHiCOは、憧れのアーティストとのコラボレーションに大きな喜びを感じつつ、楽曲に込められたメッセージに寄り添う柔らかな歌声を響かせている。

またカップリングには、Arte Refactの山本恭平が手がけた「SURVIVOR」を収録。ラップに挑戦したCHiCOの荒ぶるボーカルと、「fam!」とは異なる側面から「夜桜さんちの大作戦」にアプローチした歌詞が印象的な、激しいロックナンバーとなっている。

音楽ナタリーではCHiCOにインタビューを行い、2月に開催された初ワンマンライブで得た手応えから、シングルの制作エピソード、そして今夏に予定されている1stツアーへの意気込みまで、たっぷりと語ってもらった。また特集の最後には、大塚からのコメントも掲載する。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 梁瀬玉実

会場に来てくれたすべての人を巻き込む力

──2月に大阪と神奈川で開催されたソロとしての初ワンマンライブ「CHiCO 1st Zepp Live 2024 “PORTRAiT”」はいかがでしたか?

初めてのソロワンマンということで緊張するだろうなと思ってたんです。みんなの前で初めてお披露目する曲ばかりだったから、「大丈夫かな」という不安もあったし。でも実際は思ったよりも緊張せず、のびのびとできた2公演でしたね。ソロとしてリリースしてきた曲をめちゃめちゃ聴き込んできてくれていたファンのみんなの熱量を感じられたのが、すごくうれしかったです。

CHiCO

──ソロプロジェクト始動以降、何度かイベントに出演してきた中で、“ソロCHiCO”としてのライブスタイルの理想が見えつつあるというお話も以前されていましたよね。それがワンマンで明確になったところもあったんじゃないですか?

そうですね。もちろんまだまだ100%ではないですけど、ソロとして自分のやりたいことがうまく表現できたかなとは思います。理想のライブを実現するために細部までこだわったことで、本当に納得のいく初ワンマンになりました。

──現時点で感じているソロCHiCOライブの武器ってどんなものだと思いますか?

そうだなあ……自分としては、会場に来てくれたすべての人を巻き込む力があるような気がしているんです。そこが武器になっているんじゃないかな。MCでのおしゃべりに関してはまだ若干の苦手意識はありますが(笑)、いつも応援してくれているファンの子たちはもちろん、初めて参加してくれた人も巻き込んで楽しめる自信はありますね。

──さまざまなクリエイターの方々と作り上げたソロ楽曲たちはバラエティ豊かな色彩を持っているので、1本のライブの中でいろんな景色が味わえるのも大きな魅力になっていますよね。

ソロとしてはちょっと大人な雰囲気の曲が多いですけど、本当にいろんなタイプの曲がどんどん生まれているので、それに合わせた演出を考えるのがすごく楽しいんです。そこも魅力として感じてもらえたらうれしいですね。ライブでは心強いミュージシャンの方々に演奏していただけているので、その安心感を味わいつつ、それにふさわしいフロントマンでいられるように今後もがんばっていこうと改めて思いました。

私の世界線に刻まれた、雲の上の存在の名前

──ニューシングル「fam!」の表題曲は、アニメ「夜桜さんちの大作戦」のエンディングテーマです。作詞作曲は大塚 愛さんが手がけていますね。

今回、いろいろなご縁があって大塚さんに楽曲提供をしていただけることになって。私はドラマ「花より男子」で使われていた「プラネタリウム」がとても好きなんです。「さくらんぼ」とか「PEACH」とか、たくさんの名曲を聴いて育ってきたので、大塚さんはもうキラキラと輝くアーティストの代表であり、雲の上の存在という認識だったんです。だからこそ、私の世界線に“大塚 愛”という名前が刻まれることに対して、いまだに実感が湧いていなかったりもするんですけど(笑)。とにかくもう言葉にはしがたい感動がありますね。

CHiCO

──制作にあたって、大塚さんとはお会いになったんですか?

直接はお会いできていないんです。だから楽曲をいただくまではいちファンとして本当にワクワクしていました。アニメのエンディング曲ということもあったので、ガッと盛り上がるポップソングというよりは、ふんわり温かい曲になるんだろうなという予想を勝手にしていたんですけど、実際にいただいたものはその想像をはるかに超える素敵な仕上がりで。歌詞も含め、すごく共感、共鳴できる内容だったので、大塚さんと心が通じ合えたというか、本当にうれしい気持ちになりましたね。

──たっぷりの温かさとともに、楽しくてハッピーな雰囲気も注がれたバンドサウンドになっていますよね。

そうそう。ブラスもたっぷり入っていますからね。本当に作品とも、春という季節にもマッチする楽曲だなと思います。

──“家族”をテーマにした歌詞がまた素敵ですよね。それが「fam!」というタイトルにもつながってくると思うのですが。

はい。アニメでは大家族である夜桜さんちの波乱万丈の日々を描きながら、その中に大きな家族愛、絆が盛り込まれていて。大塚さんはそのテーマに温かく寄り添いながら歌詞を書いてくださいました。主人公の太陽くんに向けた、ヒロインの六美ちゃん視点で書かれた内容だと思います。

──どのあたりに一番共感できましたか?

私は、家族にはなんでも打ち明けてほしいタイプなんです。せっかく一緒にいるんだからお互いに支え合って、いろんな思いを共有したい。大塚さんが書いてくださった歌詞でも、太陽くんと六美ちゃんのそういう関係性が垣間見えて、すごく共感できました。「キミのしぐさに隠れた言葉を探している 溢れ出したら受け止めてあげる共に笑おう」というサビの2行が本当にいいんですよ! 会話をしているときに相手が急に黙ったりすると、「あれ? 何か考え事してるのかな?」と思ったりするじゃないですか。そういうちょっとしたことに気付いてあげられるような寄り添い方って本当に素敵だと思うんです。「共に笑おう」というフレーズは、家族はもちろん、恋人同士にも当てはまるものだと思うし。あと、そのあとの「もう 我慢しないで そう それはそれで」という言い方も好き! うまく言葉にするのが難しいんですけど、「まあまあ、そのことは一旦置いておこうよ」みたいな優しさを感じるんですよね。

──それって深い関係性がないと、無責任に話を切り替えるように感じられてしまいそうでよね。

そうそう。家族という関係性があるからこそ、そういう言い回しがちょっとした安らぎをくれる、心に余裕をくれる感じがして。そこは本当に好きなフレーズですね。

大塚 愛からの助言

──ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

実はレコーディングをするにあたって、大塚さんから歌に関するメモ書きをいただいたんですよ。そこには「あまり裏声を使わず、地声で歌い切ってもらえたらうれしいです」と書かれていて。曲をいただいた段階では、その温かな雰囲気に合わせて、裏声を使ったキレイな歌を乗せるほうがいいのかなと思っていたんですけど、軌道修正をしたんです。大塚さんからのメッセージを受けて、地声メインのちょっと張った歌い方をすることで、温かさの中にある六実ちゃんの強い思いが表現できたかなと思いますね。助言をいただけてよかったです。

──声色のニュアンスはかわいさ成分が多めな印象ですよね。

そこも最初のイメージから変わったんですよ。大塚 愛さんが歌ってくださっているデモを聴いたときには、ちょっとお姉さんっぽく、私のミニアルバム「PORTRAiT」(今年2月リリース)で言ったら「駅」の歌い方に近いニュアンスを出したほうが包み込む雰囲気が出ていいんじゃないかなって思ったんです。でも、レコーディングにあたって音楽ディレクターと話している中で、もうちょっと明るい声色の方がいいかもねということになり。結果、ちょっとかわいさのある、笑顔が見える歌い方にしましたね。

CHiCO

──サビに出てくる「共に歌おう」や、「もう」「そう」の部分の追っかけコーラスはたくさんの声が重ねられていて。CHiCOさん以外の声も聴こえます。

私自身、けっこう何本も録ったんですよ。おふざけでちょっと声を変えたパターンをやってみたりとか。さらに家族をテーマにした曲だから「数が大事じゃない?」ということで、周りのスタッフに歌ってもらったりもしました。デモではそこまで声は重ねられていなかったんですけど、せっかくブラスが鳴る華やかなサウンドなので、いろんな声がたくさん入っていてもいいんじゃないかなって。結果、いい具合の壮大さが出たと思うし、あそこはライブでもファンのみんなに歌ってもらえると思うので、今からすごく楽しみですね。

──Bメロの裏で鳴るコーラスも大合唱してもらえるといいかもですね。

あわよくば歌ってもらえたら、と思っています。とは言え、全員で大合唱したらとんでもないことになっちゃいそうな気もするんですけど(笑)。Bメロのコーラスはチコハニ(CHiCO with HoneyWorks)にもなかった雰囲気だと思うので、新しさも感じてもらえるんじゃないかな。

──完成した楽曲の仕上がりについて、大塚さんからの感想も気になりますね。間違いなく気に入っていただけているはずだと思いますけど。

機会があれば感想はお聞きしたいです。大先輩からの辛口なご意見もいただきたいし、一方では褒めていただきたい気持ちもある。いろんな感情がごちゃ混ぜになっちゃいますね(笑)。本当に素晴らしいご縁をいただけたので、いつか私のライブも観ていただけたらうれしいなって思います。