ナタリー PowerPush - CHI-MEY

“会いに行ける歌のお兄さん”が語る 彩り豊かな半生とは?

スペシャルユニット“チーミーとあやの(キロロ)、ときどきレンジ”が、シングル「ちいさなうた」をリリースした。このユニットの中心であるCHI-MEY(チーミー)は、NHK「おかあさんといっしょ」の曲「ボロボロロケット」をはじめ、さまざまな歌手、アーティストに楽曲提供をしているソングライターでありながら、自身もアーティストとして活動している人物。さらに子供たちに大人気の、言わば「歌のお兄さん」でもあり、さらには童心あふれる「ジェイムランド」に住むキャラクターでもあるのだった。

その素顔は、果たしてどんな人? 対話中もつねに明るい笑顔を絶やさない彼は、世代を超えて人々の心をつかむであろうポップな魅力を持つ人だった。

取材・文/青木優

先生が弾いてるのを見て弾けるようになったピアノ

──まずCHI-MEYさんの肩書きは何なんでしょう?

肩書きは……「CHI-MEY」ですね(笑)。キャッチフレーズのような感じだと、「歌うテーマパーク、CHI-MEY!」といつも言っているんですよ。僕の作品や僕自身がキャラクターになったジェイムランドという架空のテーマパークがあるんですけど、その中で繰り広げられる音楽だったり絵だったり、またアニメだったり、いろんな作品の総合アーティストっていうところでしょうか。ステージもそういうものをやっていますしね。ただ、肩書きって言われると……よく「マルチアーティスト」と書いていただくんですけども……困りますね(笑)。まあ僕個人の中で軸にしている物作りは、音楽ということになりますね。曲作りと歌というところで。

──では、やはり音楽の話から訊きましょう。今のようにシンガーソングライターになっていくまでの過程はどんなものだったんですか?

うちの姉はちっちゃい頃からピアノをずっとやっていたし、母は小学校の教員をしていて、2人ともピアノが弾けたんです。父と兄はフルートをやっていたし、その流れで僕も中学と高校では6年間ブラスバンド部に所属して、クラシックやったり、ビッグバンドやったり、マーチングやったり、いろんなジャンルの音楽をやってました。幼少期も、おじいちゃんやおばあちゃんと車に乗ってることが多くて、「青い山脈」とか「リンゴの歌」とか、戦後の曲をずーっと聴きながら育ちました。だから音楽がずっと周りにあったんですね。で、中学2年のときに華原朋美さんの「I'm proud」をピアノで弾いてみたら、弾けたんですよ(笑)。「あ、なんだ、簡単だな」と思って。

──急に弾けたのは、それまでピアノに親しんでいたことがあるんですか?

小学校の頃にちょっとだけ習ってたことがあるんですけど、譜面を読むのがほんと苦手で(笑)。でも先生が弾いてるのを見て弾けるようになっちゃいました。譜面を見ないと先生に怒られるんで、ずっと見るフリをしていましたけど(笑)。

──フリだけ(笑)。

それで中2のときに、ブラスバンド部で同じチューバだった友達を小馬鹿にする曲を、その本人と一緒に作りはじめて(笑)。そのときにベースを押さえながら「耳コピって簡単にできるんだな」と思って作ったのが最初の作曲ですね。それから頭に出てくるメロディを「こんな曲あったらいいな」みたいに、どんどん作っていって。そのうちDTMを覚えて、頭の中に蓄積してた曲をコンピュータにも蓄積していくようになって。で、ブラスバンドも……チューバって♪ブッ・ブッ・ブッ・ブッて、白玉(=単音)しかないパートなんですよ(笑)。それでヒマだったんで、「ここでトランペットで、ここでピッコロが入るのか」ってずっと聴いてて、そういうのを思い出しながらヘッドアレンジをしていました。

──じゃあ譜面は苦手だけど、作曲は10代の頃から手がけていたと。

そうなんですよ。ヘンな話、ピアノの譜面は今でも読めないし、書けないです(笑)。小学校の先生になろうと思ってたので、全教科できなくちゃならないから、高校の後半に譜面を読むことをまた習ったんですけど、そのときもほとんど読めるようになんなくて(笑)。だから曲作りは、なんとなくそういうふうに始まっていきましたね。で、頭の中で鳴ってるなんでもないものが実際に耳に聴こえるものになる、それを友達が聴いてくれるっていうことがすごい楽しくて。「あ、僕しかできない!」みたいな気持ちもあって、作曲を始めたんです。

いろいろ聴いて、いろいろ作りたい

──作曲を始めた当初はどんな曲を作っていたんですか?

CDにはなってないけど、そのころ作った曲で今ライブで歌ってる曲もありますよ。当時はポップスを耳コピしていたので、もろ小室哲哉さんみたいな曲とかありました(笑)。PUFFYみたいな曲とか……あとはバラードが多かったですね。ジャガジャガ弾くのは面倒くさかったので。それから歌うほうも、なんとなく好きで歌っていたものの延長でやっていました。で、高校のときに、先輩の影響もあってスケボーを始めたんですよ。

──急にアクティブになりますね(笑)。

そうなんですよ(笑)。その影響でパンク、ミクスチャー、ハードコアとかを聴き始めて。当時Hi-STANDARDとかがグーンと伸びて、フェスがドーン! と増えた時期だったんですよ。国内だと山嵐とか、スカもやってたのでKEMURIとか。

──えっ、スカもやってたんですか?

ブラスバンド部だったんで、スカバンドのトロンボーンをやってたんです。それから僕もバンドを持っていて、その頃はLINKIN PARKみたいなバンドのボーカルをやってたんです。その流れで、友達との付き合いができて、ラップもちょびっとかじったり、あとはトラックメーカーをやったり。ポップスをA→B→Cと構成して作るよりも、ループ音楽にメロディを乗っけたほうが作るのが早かったんです。それでノリで作って友達に歌ってもらったり、自分でやったりしてました。だから「好きな曲は?」とか「好きなアーティストは?」と言われると困っちゃうんですよねぇ。その時期時期で好きなものを聴いて、飽きたら違うのを、って感じで……(笑)。「いろいろ聴いて、いろいろ作りたい」っていうふうにやってきた感じですね。

──それで今度はポップスを作ってみたり、とか?

そうなんですよ。最終的に行き着いたのがポップスだったんです。その当時、アイドルの曲のコンペに初めて応募したんですけど、「どんなことしてんのかな?」と思って、その人のCDを全部聴きあさって……カルチャーショックでしたね! それこそアンダーグラウンドな音楽やってた頃は「アイドルなんて!」とか小バカにしていたんだけど、「あ、こんなふうに曲を作るってすごいことなんだな!」って目覚めたところがありました。

ニューシングル「ちいさなうた」 / 2011年6月29日発売 / gr8! records

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 1500円(税込) / SRCL-7668~9 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 1000円(税込) / SRCL-7670 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. ちいさなうた
  2. おやすみのくも
  3. ちいさなうた(インスト)
  4. おやすみのくも(インスト)
DVD収録曲
  1. ちいさなうた(ミュージックビデオ)
CHI-MEY(ちーみー)

アーティスト写真

8月19日生まれの男性シンガーソングライター。学生時代より、さまざまなジャンルで音楽活動を展開する。バンドやクラブでのライブ活動を経て、ソロアーティストに移行し、同時に他アーティストへの楽曲提供も開始する。2008年には自身が展開する架空のテーマパーク・ジェイムランドを舞台にした初のソロミニアルバム「WELCOME TO J'AIMELAND」をリリース。2010年10月、NHK「みんなのうた」にも起用されたシングル「フレ!フレ!大丈夫!」でメジャーデビューを果たした。リリースと並行して、幼稚園やショッピングセンターなどで子供向けのライブを精力的に行っている。また、他アーティストへの楽曲提供やテレビ番組テーマ曲の作曲なども多数手がけており、新進気鋭の作曲家としても大きな注目を集めている。