ナタリー PowerPush - CHEESE CAKE

福岡在住4人組がメジャーデビュー「閃光ライオット」受賞からの奮戦を語る

“妄想恋愛”から生まれたカップリング曲

──今の岩淵さんはこんなに天真爛漫な感じだから、暗かった時期が想像できないな。

田村 高校のときはけっこう暗かったですね。私とポチは住んでるマンションが同じなんですけど、ピンポーンって鳴ってドアを開けたら、ポチが泣いていて。「どうした?」って聞いたら「どうしていいかわからんくなった!」って(笑)。

岩淵紗貴(ポチ / Vo, G)

岩淵 今でもすぐに泣きますけどね。ダメなときも泣いて、うれしいときも泣いて(笑)。でも、昔よりは好きなものは好きって素直に言えるようになったので。そっちのほうが人間として面白いと思うんですよね。それでいろんな人とつながりを持てたら楽しいし。前は恋愛の曲が書けなかったんですけど、性格的に吹っ切れてからは恋愛の曲も書けるようになって。

一瀬 「哀しみのブランコ」のカップリングになっている「ふわりと浮かぶ夜の月まで」はポチが書いた新しめの恋愛の曲ですね。

──この曲はどういうモードで書いたんですか?

岩淵 恋愛の曲を書くときは妄想が多いですね。少女マンガが好きなんですけど、例えば「このシーン、ヤバい!」と思った描写を自分の中で発展させていったり。「ふわりと~」の歌詞もかなり妄想していて。私、フジファブリックが大好きなんですけど。山内総一郎さんをギタリストとしてすごく尊敬していて、「山内さんと恋愛したらどうなるんだろう?」って勝手な妄想を広げていって(笑)。

──あはははは(笑)。

岩淵 で、この曲は夜中に作っていて、そのときちょうど満月がきれいな日だったんですよね。「ふわりと浮かぶ夜の月まで あと少しで届きそうだったよ」というフレーズは、自分たちが置かれている現状と重ねて。デビューできるのか、できないのか、山内さんと同じ場所まで行けるのかっていう(笑)。

バンドのひとつのテーマは「ツヨガリズム」

──順番は前後しますけど「哀しみのブランコ」も最近作った曲なんですか?

一瀬 これはそれこそ3年前くらい、プレハブ小屋で曲作りしていたときにできた曲ですね。歌詞に出てくる女の子の宙ぶらりんな気持ち——好きな人に自分の気持ちを気付いてほしいけど、気付かなくてもいいと思ったり、好きと伝えたいけど、強がって伝えられない感じがすごくCHEESE CAKEらしいなと思って。それでデビューシングルになりました。

──そういう意味ではこのシングルに収録されている3曲って、すべて揺れる気持ちを表現していますよね。

一瀬 そう、どれもフワフワしているんです。「ツヨガリズム」というのがバンドのひとつのテーマで。素直になれない人を応援したいという気持ちが根底にあるんですよね。

岩淵 カッコ悪いけど、カッコいい人になりたいと思っている。でも、やっぱりダサいみたいな。自分たちもそういうタイプだと思うし。

──サウンドはフォーキーな歌を大切にしているアレンジだけど、イントロから随所に現れるメインのギターフレーズには浮遊感を出すためにディレイやリバーブを深くかけていて。時にギターがシンセのような役割も果たしているんですけど。こういう音響的なアプローチにも強いこだわりを感じる。

一瀬 そこはかなり意識していて。周りの人に「ギターロックでは他のバンドに勝てないよ」って言われていた時期があって。「シンセを入れたほうがいいよ」とか。ギタリスト的にはそういう意見が悔しくて、いかにギターで空間を広げられるか研究するようになったんです。そこから宅録を本気でやり始めて、ギターにディレイやリバーブをかけたり、音をどんどん加工するようになっていったんですよね。例えば3曲目「Thank you」のサビはギターを4本重ねていて。それをパッと聴かせたときに「シンセが入ってるよね」って言わせたらこっちの勝ちだなと思って。

──それもこの3年強の成果なんだね。

一瀬 はい、そうですね。この3年で普通のギターロックじゃ勝てないと思ったときにどうするかをすごく考えました。

──一瀬くん、かなり野心家なんだね。

田村 そう、この人すごい野心家なんですよ。

一瀬 負けるのが大嫌いなんで。

LIVE INFORMATION
  • Music Climbers vol.2
    2013年3月20日(水・祝)
    福岡県 福岡DRUM Be-1
  • Beat Happening! CHEESE CAKEレコ発編!
    「哀しみのブランコでスタート」

    2013年4月5日(金)
    東京都 渋谷LUSH
CHEESE CAKE(ちーずけーき)

福岡県春日市で同じ小学校と中学校に通っていた岩淵紗貴(ポチ / Vo, G)、一瀬貴之(イッチー / G)、田村三果(アネキ / B)、金山尚右(ゴン / Dr)の4人が2006年に結成したロックバンド。オリジナル曲の制作やライブ活動を経て、2008年6月に初の自主制作音源「CHEESE CAKE」をリリース。同年8月には初の主催イベントを開催し、爽やかさとせつなさが融合した独特のサウンドで注目を集める。この年はさまざまなコンテストに出場し、多数の賞を受賞した。2009年3月からは全国規模での活動を展開し、同年8月に行われた「閃光ライオット2009」で準グランプリを受賞する。同年10月、初のシングル「強がり虫*寝グセ」をリリース。その後はライブ活動と並行して腰を据えた楽曲制作を続け、SMEレコーズからのメジャーデビューも決定。2013年2月27日発売のシングル「哀しみのブランコ」でメジャーデビューを果たす。