ナタリー PowerPush - CHEESE CAKE

福岡在住4人組がメジャーデビュー「閃光ライオット」受賞からの奮戦を語る

2009年の「閃光ライオット」で準グランプリを獲得した福岡県春日市出身の4人組バンド、CHEESE CAKE。2月27日にシングル「哀しみのブランコ」で念願のメジャーデビューを果たす彼らだが、「閃光ライオット」からの3年強の空白が物語るように、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。それでもバンドをあきらめなかった4人。その音楽に賭ける強い思いは、表向きはどこまでもさわやかでありながら、聴き込むほど随所に並々ならぬこだわりを感じさせる楽曲に表れている。出会いから現在までをメンバー全員に語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一

フワッと始まったバンドだった

2013年2月10日に行われたイベント「閃光ライオット感謝祭!! 第2弾」でのライブの模様。

──メンバーみんな小中と同じ学校に通っていたんですよね?

岩淵紗貴(通称:ポチ / Vo, G) そうですね。当時は男2人は男同士で、女2人は女同士で仲よくしていて、この4人でよく一緒に遊んでいたわけではないんですけど。

一瀬貴之(通称:イッチー / G) ただ、この4人は中学のときに通っていた塾も一緒だったんですね。で、高校はそれぞれ別の学校に進学したんですけど、高校1年の夏休みに塾の同窓会みたいな集まりがあったんです。そのときにチーズケーキを食べながらなんとなく「みんなでバンドでもやりたいね」っていう話になって。

──それでバンド名がCHEESE CAKEなんだ(笑)。

一瀬 そうなんです(笑)。みんな中学まではリスナー専門でバンドはやってなかったんですけど。

金山尚右(通称:ゴン / Dr) で、最初は高校になって僕とイッチーが一緒にアコギを買って。2人で弾き語りをしていて遊んでいたんですね。

一瀬 それがバンドを始める3~4カ月前で。そこに女子2人が乗っかってくる形でバンドが始まったんです。

──パートはすんなり決まったんですか?

一瀬 ボーカル以外はわりとすんなり決まりましたね。最初ポチはギターをやりたいと言っていて。でも、歌わせてみたら「いい声してるじゃん!」ってなって、そのままボーカル&ギターになってもらったんです。

岩淵 そうなんですよね。もともとYUIさんに憧れていたから、いつかギターを持って歌いたいという願望はあったんですけど。最初は漠然と「ギターをやりたい」としか言ってなくて。ホント、それくらいフワッと始まったバンドだったんですよね。

──そういう始まりだとなかなかバンドが形にならないよね?

一瀬 そうですね。最初はやっぱり何かのコピーをしようってなったんですけど、ぜんぜんうまくいかなくて。じゃあ自分たちがそのときできる範囲のことだけをやろうってなって、いきなりオリジナルを作り始めたんです。それがバンドを始めて1年弱で。そこからだんだんバンドが楽しくなっていきましたね。

伝わりやすくて深みがある曲を作りたい

──曲はすぐにできたんですか?

一瀬 わりとすぐにできました。「Puzzle」とか「強がり虫」とか、今でもライブでやっている曲が早い段階でできて。それが今の悩みでもあるんですけど。

──なんで?

左から岩淵紗貴(ポチ / Vo, G)、一瀬貴之(イッチー / G)。

一瀬 昔の曲ばかりに頼っていてはダメだなって。最初は何も考えないで曲ができていたところがあったんですけど、考えすぎるとなかなか曲ができない感じがあって。今はその狭間で悩んでるところがありますね。

岩淵 もともと曲を作るペースが遅いんですよね。少しでも納得いかないところがあったら表に出したくないから、ボツにする曲も多いんです。だから、今ある曲はホントにどれも大事な曲ですごく思い入れがあって。

──なるほどね。1曲1曲大切に作りながらバンドを成長させていったと。

一瀬 そうですね。高校のときはみんな学校がバラバラだったので、週末のスタジオセッションがすごく楽しみだったんです。で、春休みと夏休みと冬休みにライブがあって、そこに向けていい曲を作っていくというのがモチベーションでした。

──曲作りをする岩淵さんと一瀬くんの理想の音楽像ってどういうものですか?

一瀬 それは最初からずっと変わらないんですけど。歌詞もメロディも目線が高くなくて誰にでも伝わりやすく、さらにそこに深みがあるもの。僕がわかりやすい部分を担っていて、ポチが深さを担っていると思ってます。

岩淵 深いというか、楽しいことをそのままストレートに楽しいって表現するのがちょっと恥ずかしくて。私はスピッツがすごく好きなんですね。

──それは曲を聴いていてすごく伝わってくる。

岩淵 私の勝手なイメージなんですけど、草野マサムネさんが書く曲って、恋愛の歌も、モヤモヤした気持ちを描いた歌も、伝わりやすいのにすごく独特な印象があって。メロディは普遍的なんだけど中毒性があるし、歌詞も誰もが使っている言葉と言葉をくっつけることで新鮮な意味を持たせていると思うんですよね。誰もが共感できるような表面的な内容とは別に、その裏には多くの人が気づかないような深い意味も忍び込ませているなって。そこがすごいなと思うんです。私も誰にでも伝わるけど、それとは別に自分個人では別の意味も隠し持っているような曲を作りたいと思うんです。

LIVE INFORMATION
  • Music Climbers vol.2
    2013年3月20日(水・祝)
    福岡県 福岡DRUM Be-1
  • Beat Happening! CHEESE CAKEレコ発編!
    「哀しみのブランコでスタート」

    2013年4月5日(金)
    東京都 渋谷LUSH
CHEESE CAKE(ちーずけーき)

福岡県春日市で同じ小学校と中学校に通っていた岩淵紗貴(ポチ / Vo, G)、一瀬貴之(イッチー / G)、田村三果(アネキ / B)、金山尚右(ゴン / Dr)の4人が2006年に結成したロックバンド。オリジナル曲の制作やライブ活動を経て、2008年6月に初の自主制作音源「CHEESE CAKE」をリリース。同年8月には初の主催イベントを開催し、爽やかさとせつなさが融合した独特のサウンドで注目を集める。この年はさまざまなコンテストに出場し、多数の賞を受賞した。2009年3月からは全国規模での活動を展開し、同年8月に行われた「閃光ライオット2009」で準グランプリを受賞する。同年10月、初のシングル「強がり虫*寝グセ」をリリース。その後はライブ活動と並行して腰を据えた楽曲制作を続け、SMEレコーズからのメジャーデビューも決定。2013年2月27日発売のシングル「哀しみのブランコ」でメジャーデビューを果たす。