chay|20代最後のアルバムで見せるこれまでの集大成

松尾潔×川口大輔“chayらしくない楽曲”で奇跡のリンク

──最初に「これまでの集大成」という発言がありましたけど、サウンド面ではchayさんのアイデンティティがより鮮やかに提示されている印象があって。そこに関しては迷いや焦りが一切ないですよね。

そうですね。私の思うchay像、アイデンティティみたいなものは悔いなく詰め込めたと思います。これまで以上に華やかなアルバムを、どうしても20代のうちに出しておきたい気持ちが強くあったんですよ。この先、30代の自分の音楽がどうなっていくかはまだわからないけど、もっとシンプルな思考になっていく予感がなんとなくあって。だったら20代のうちに思い切りやっておきたいなと思ったんです。なので、サウンドに関しては武部さんとかなり細かくお話をさせていただきました。

──その中で見えていったサウンドの傾向、方向性みたいなものって何かありましたか?

最初に武部さんから提案していただいたのは、これまでのようなガーリーなテイストよりは、もうちょっと大人なキュートさを追求したらどうかということで。そこは私も同じ意見でしたね。これはあとで気付いたことなんですけど、今回の歌詞には“恋”というワードが全然出てこないんですよ。年齢を重ねたことで、“恋”ではなく“愛”を描くようになってきたんだと思うんです。そういった変化を今回はサウンド面でもしっかり表現できた気がしますね。

──先行配信されていた「砂漠の花」はかなり大人なラブソングになっていますもんね。作詞を松尾潔さん、作曲・アレンジを川口大輔さんが手がけた曲です。

大人な雰囲気ですよね。私は松尾さんと川口さんがタッグを組んだ楽曲が大好きだったんです。なので今回、念願叶ってご一緒できたことがすごくうれしくて。この曲は「Lavender」というアルバムタイトルが決まる前にいただいたものなんですけど、歌詞の中には「愛とは許すこと」というラインがあって。

──あ! ラベンダーの花言葉とリンクするんですね。

そうなんです! そこがつながった瞬間、鳥肌が立ちました。しかも川口さんは「chayらしくない楽曲にしたい」とおっしゃってくださっていて、その言葉通りのめちゃくちゃ新鮮なサウンドに仕上げてくださったんです。いい意味で予想を大きく裏切ってくださったので、歌うのもすごく楽しかったです。

──フューチャーベースを盛り込んだ打ち込みのサウンドに乗るchayさんの歌声は本当に新鮮ですよね。

ここまで打ち込みの曲を歌うのは初めてだったので、難しさもあったんですけどね。語尾に吐息を混ぜないようにするとか、松尾さんと川口さんには細かく歌い方のディレクションをしていただきました。結果これまでとは違った雰囲気で言葉が伝わる歌になったんじゃないかなと思います。この曲のメロディは全体的に声の高低差があまりないんですけど、それにも関わらずしっかりキャッチーに聴き手の耳に残るものになっているという驚きもありました。そういった部分は自分での曲作りに生かせる学びになったと思います。

「To Shining Shining Days」はアルバムのテーマを象徴する曲

──chayさんはシンガーソングライターではありますけど、さまざまなクリエイターとのコラボも積極的に行うことで、表現の幅を広げているところがありますよね。

そうですね。曲によって「これは自分で書こう」「これは共作をしよう」「これは歌詞も曲も委ねよう」という判断を迷いなくやっています。例えば何度もご一緒している多保(孝一)さんが書いてくださった「小さな手」はすごく壮大なメロディだったので、「これは具体的な実体験を乗せたり、私個人の領域で歌う曲にしたくないな」と思って作詞をjamさんにお願いしたりとか。あとは「砂漠の花」と同様に、もともとファンだったということでお願いしたのが「To Shining Shining Days」です。

──尾崎亜美さんが作詞作曲を手がけた曲ですよね。

chay

はい。尾崎さんとは現場でご一緒する機会も多く、ご縁を感じているところもあったのでうれしかったです。今の自分がどんな状況で、どんなことを思っているかをお話しさせてもらったうえで書いていただいたので、まさにアルバムのテーマを象徴する曲になりました。1曲目にするか迷ったぐらい大好きな曲です。

──冒頭のスキャットがいい雰囲気です。

あそこいいですよね! もともと尾崎さんにいただいた音源ではシンセでメロが入っていたんですよ。でもアレンジをする際に、それを何の楽器に置き換えるべきなのかですごく悩んで。武部さんとアレンジャーの宗本(康兵)さんと一緒にいろいろ考えた末に行きついたのが、私がスキャットしてみるっていうアイデアだったんです。結果、それがすごくハマったんですよね。尾崎さんにもきっとビックリしてもらえる仕上がりになったと思います。ちなみに私の両親も尾崎さんの大ファンなので、いい親孝行にもなりました(笑)。