誰かの心のよりどころになれたら
──「肯定してあげられるような」とか「たった1人に対して」というのがダイレクトに伝わってきたのが私は「You」だったんですけど、いかがですか?
「You」は完全に自分の体験からできた曲です。私は小さいときからいつもつらいときや悲しいとき、もうダメだと思ったときに音楽に救われてきたんですけど、ここ1年くらいは自分を肯定してくれる曲に救われることがけっこうあって。自分もそういう曲を書いてみたいなって思って、この曲に挑戦しました。
──「君は君のままでいいよ」とか、全体的に優しく包み込むような言葉が並んでいますね。
前は「こういう考え方って素敵じゃない? みんなそっちに行こうよ!」みたいな引っ張っていく感じに惹かれた時期もあったんですけど、今はそれぞれの考え方で正解だし、どんな人も肯定してあげたいんです。だからそういうメッセージを私が伝えることで、誰かの心のよりどころになれたらうれしいです。
──8thシングル「それでしあわせ」(2015年5月発売)のとき、「“幸せ”について今までにないくらい考えた」という話をされていたのですが、当時からすべてを肯定することの大切さにも気付いていた?
そうですね。「それでしあわせ」は“幸せ”について深く考えるいい機会になったんですけど、幸せは誰かが決めるものではないし、正解があるわけでもない。誰かに「かわいそう」とか「不幸だ」って言われても自分が幸せだったら幸せだし、どんなあなたも素敵なんだよっていうのは、そのときからずっと思い続けていることです。
歌謡テイストを2017年バージョンにアップデート
──「Don't Let Me Down」は、1人ひとりの胸に突き刺さるような剥き出しのフレーズが印象的です。夢を追うことをあきらめてしまった人はハッとさせられる内容なんじゃないかと。
歌詞を書くとき、以前はきれいな言葉で素敵に仕上げることを意識していましたが、今は人に知られたくないことや自分の弱い部分、ダメな部分もどんどんさらけ出していこうと思っています。この曲はまさにそうで、今夢を追ってる人、すでに夢をあきらめてしまった人……いろんな夢を抱いたことのある人に向けて、自分の経験も織り交ぜながら書いてみました。
──サビの1行目にある「Don't Let Me Down 幼い僕を」という歌詞にはかなりギクッとしました。幼い頃の自分に「がっかりさせないで」って言われる未来にはしたくないですよね。
うれしい! まさにそういう気持ちで書きました。私自身もずっと歌手を目指してきたけど、自己嫌悪に陥るときや、がんばれない時期があって、そんなときに「昔の私が見たらがっかりするぞ」って思いながら自分を奮い立たせてきました。
──じゃあ今は幼い頃の自分に恥じない自分でいられている?
いられて…………ない(笑)。
──えっ! 歌手の夢を叶えたのに?
デビューできたとはいえ、まだまだって思うことがいっぱいあるので……これからもがんばります(笑)。
──ところで、chayさんといえば6thシングル「あなたに恋をしてみました」(2015年2月発売)からスタートしたレトロな歌謡テイストがサウンドの1つの軸になっていますよね。今回の新曲でいうと「真夏の惑星」や「恋はアバンチュール」がその路線です。
60'sや70'sをイメージしたサウンドやアレンジ、そして歌謡テイストのメロディはずっと大事にしていきたいと思っています。世代問わず楽しんでいただける楽曲を目指しているので、その要素はこれからも突き詰めていきたいです。ただ今回のアルバムを作るにあたって、それらを2017年バージョンにアップデートしたいねって話は(プロデューサーの)多保(孝一)さんとの共通認識の中ですごくありました。例えば「真夏の惑星」は最初、歌謡曲テイストな懐かしいサウンドだったんですけど、多保さんが私と同い年のYaffleさんにアレンジを頼んでくださって、トロピカルハウスのテイストを取り入れて今っぽさも加わったサウンドになりました。
──いろんな楽器が使用された、懐かしさと新しさがブレンドされたアレンジだなと思いました。
メロディは昭和テイストだけどサウンドはどこか今っぽい……という、また新しい楽曲ができたなって思ってます。「恋はアバンチュール」も同じくYaffleさんのアレンジで、かなり素敵にアップデートしていただきました。
名曲カバーを歌い続ける理由
──アルバムのラスト2曲には、吉田拓郎さんの「結婚しようよ」のカバーと「あなたに恋をしてみました(Wedding ver.)」が収録されています。10曲目の「You」で一旦きれいに締まった感じがあって、さらにもうひと盛り上がり……といった素敵な曲順ですね。
ありがとうございます。最後は幸せな2曲が続くようにしました。ラスト2曲はボーナストラックみたいに聴いてもらってもうれしいです。
──「結婚しようよ」はどんな経緯でカバーすることになったんですか?
吉田拓郎さんのトリビュートアルバムが6月7日に発売されたんですけど、私もこの曲で参加させていただきました(参照:吉田拓郎の古希祝いトリビュートに民生、ミセス、鬼束、ポルノ、THE ALFEEら)。自分で言うのもなんなんですけど、本当にいい仕上がりになったので今回のアルバムにも収録させてもらいました。この曲の歌詞って、表現や言葉1つひとつから当時の時代感が伝わってくるんですよね。とてもピュアな気持ちで相手を思う純愛ソングで、私も自然と微笑みながら歌ってました。
──シングルのカップリングでは毎回カバー曲に挑戦されていますが、その試みは今後も続けていく?
はい。今作には荒井由実さんの「12月の雨」のカバーも収録しているんですけど、これからも私が素敵な名曲を歌うことで、同世代やさらに下の世代にその魅力を伝えていけたらと思っています。昭和と平和の架け橋じゃないですけど、そういう存在になれるよう、この先もカバーはどんどん歌っていきたいです。
──「あなたに恋をしてみました(Wedding ver.)」はどんな仕上がりになっているんですか?
最近、結婚式でこの曲を流してくれる人が多いって話も耳にしていたので、アルバムの発売が6月ということで、ジューンブライドを意識したウエディングバージョンにしてみました。仕上がりの雰囲気はだいぶBPMを落としたバラードで、オルガンや弦楽器の音が効いたかわいらしいアレンジです。原曲より1音1音が長くて歌うのが難しかったんですけど、幸せな花嫁さんをイメージしながら歌いました。
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五感で楽しんでもらえる自信作
- chay「chayTEA」
- 2017年6月14日発売 / Warner Music Japan
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初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / WPZL-31310~1 -
通常盤 [CD]
3240円 / WPCL-12645
- CD収録曲
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- 恋のはじまりはいつも突然に
- 真夏の惑星
- それでしあわせ
- 12月の雨
- Be OK!
- 恋はアバンチュール
- 運命のアイラブユー
- 好きで好きで好きすぎて
- Kiss me
- 笑顔のグラデーション
- Don't Let Me Down
- You
- 結婚しようよ
- あなたに恋をしてみました(Wedding ver.)
- 初回限定盤DVD
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- 弾き語りライブ「chay's room」vol3~5からカバー曲を含む厳選したパフォーマンスを収録
- chay Tour 2017“chayTEA”
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- 2017年8月1日(火)宮城県 Rensa
- 2017年8月4日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2017年8月5日(土)福岡県 BEAT STATION
- 2017年8月9日(水)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2017年8月10日(木)大阪府 BIGCAT
- 2017年8月19日(土)東京都 昭和女子大学人見記念講堂
- chay(チャイ)
- 1990年生まれの女性シンガーソングライター。小学生の頃からピアノで曲を作り、大学に入学すると同時にギターを始めて路上ライブなどの活動をする。2012年10月にロッテ「ガーナミルクチョコレート」のCMソング「はじめての気持ち」でワーナーミュージック・ジャパンよりCDデビュー。2013年10月から2014年3月までフジテレビ系「テラスハウス」にレギュラー出演し話題になる。2014年5月から雑誌「CanCam」の専属モデルとしての活動もスタート。2015年2月にフジテレビ系月9ドラマ「デート~恋とはどんなものかしら~」の主題歌シングル「あなたに恋をしてみました」、同年10月に筒美京平作品のオマージュを散りばめたシングル「好きで好きで好きすぎて」をリリースした。2016年にはシングル「それでしあわせ」「運命のアイラブユー」を発表。人気ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」のオープニングテーマに、荒井由実の名曲「12月の雨」のカバーが採用された。2017年6月に2ndアルバム「chayTEA」を発表。8月にはアルバムを携えた全国ツアーを行う。