「え、何言ってるの?」「もう1回言ってくれる?」
──その後はミニアルバム「Awa Come」、そして3人体制最後のアルバム「YOU MORE」へと続きます。
菊池 「Awa Come」は個人的にも大好きな作品ですね。「地元の徳島でアルバムを1枚作る」という明確なコンセプトがあって。徳島のスタジオで、ほぼメンバーとエンジニアさんだけでレコーディングしたんです。収録曲の「ここだけの話」のミュージックビデオもオール徳島ロケなんですが、何回観ても素晴らしいんですよね。徳島の太陽の光、空気の匂いまでがちゃんと映し込まれていて。続く「YOU MORE」のときは、まず、メンバーが「シングルを切りたくない」と言い出したんです。実際、シングルは1枚も出さずに、いきなりアルバムをリリースしたんですよね。当時としてはかなり無謀なやり方だったし、僕自身もかなり悩みました。メンバー、マネージメントを含めて何回もミーティングして、「そのやり方だと、こういうセールスの結果になることが予想されます。それでもやりますか?」というところまで話したのですが、やっぱりメンバーの意志が固くて。ただ、レコーディングはすごく風通しがよかったんですよね。
古賀 「YOU MORE」のレコーディングエンジニアは上條雄次さんだったんですが、ほとんどの曲をアナログテープで録って。このアルバム以外でもチャットモンチーはけっこうな頻度でアナログテープを使っていたんですが、それも財産ですよね。
──2011年9月に高橋久美子さんがバンドを脱退し、橋本さんと福岡さんの2人体制に。ライブで福岡さんがドラムを叩いてる姿を初めて観たときは本当に驚きました。
菊池 3ピースから2ピースになって、まず、ライブの形を作ったんですよ。2人体制になったチャットモンチーの本格的なお披露目は2011年11月の「求愛ツアー」だったんですが、約3カ月かけて、試行錯誤を重ねながらライブの準備をしました(参照:新編成チャットモンチー、工夫しながら2人きりでライブ敢行)。最初にあっこが「私がドラマーになってドラムを叩く」と言ったときは、「え、何言ってるの?」という感じでしたけど(笑)。
古賀 そうですよね(笑)。僕も「もう1回言ってくれる?」って聞き直しましたから。
菊池 「3カ月、毎日練習すれば何とかなると思う」って言ってたんですが、僕らとしてはその言葉を信じるしかなかった、彼女に賭けるしかなかったですからね。実際、あっこはライブまでの期間、ドラムのことだけを考えていたと思います。そのぶん、絵莉子は曲作りをがんばって。役割分担がしっかりできていたし、2人で助け合っていた印象ですね。
古賀 あっこさんのドラムもよかったんですよね。決してうまくはないけど、しっかり歌に寄り添っているし、グルーヴがあるドラムを叩いていて。ベースにも独特なグルーヴがありますけど、「別の楽器になっても、自分のノリを出せる人なんだな」と驚きました。
誰もやったことがないことを切り開いている感覚
菊池 ツアーが終わってから5thアルバム「変身」の音源制作に入ったんですが、そこでも試行錯誤の連続でした。ベースがないので、当然、音が薄くなる。それをどうするか?というところから始まって……このときはBOSSのLoop Stationを多用してたんですよね。
古賀 実験の日々でしたね。どうすればLoop Stationをいい音で録れるか、その音をどうやって取り込むか。Loop Stationがクリック代わりでした。なので、「変身」ではまったくクリックは使ってなかったと思います。まず、2人で一緒にリズムを録って、そのテイクに合わせて歌って。あと、このときのエンジニアは僕を入れて7人いたんです。
菊池 メンバーが気になってたエンジニアさん、「この人と一緒にやってみたい」というプロデューサーさんをお呼びして。全体をまとめてくれたのが古賀さんだったのですが、レコーディングのセオリーにないことばかりやってたから、説明するのが大変だった記憶があります(笑)。
古賀 「今回はクリックを使ってません」という説明から始まって(笑)。絵莉子さんのアンプの使い方も変わっていて、一番多いときで5台のアンプを同時に鳴らしていたんですが、それも普通じゃないですからね。参加したエンジニアの方はほとんどが知り合いだったから、「これはこういうことで……」とずっと話し合っていました。
菊池 大体、2ピースバンドのレコーディングを経験している方なんて、ほぼいないですから。
古賀 確かに。オクターバーというエフェクターを使って、ギターでベースの様な低音を作ったりもしてたんですよ。それはライブのPAチームの方も苦労したみたいです。オクターバーを使うと、どうしても時間のズレが出て、遅れてしまうので。その解消方法をみんなで考えたり……。ただ、あとにも先にも、あれほど面白いレコーディングはなかったですね。
菊池 特にこの時期は、誰もやったことがないことをイチから切り開いている感覚がありました。大変だったけど刺激的だったし、今思い出しても楽しかったですね。
チャットモンチーとは違う血を欲してた
──そして2015年リリースの「共鳴」、恒岡章さん、下村亮介さん、世武裕子さん、北野愛子さんさんがレコーディングに参加しました。
菊池 しばらく休みの期間があって、「次はどうしようか?」という話をしました。「変身」で2ピースの形は突き詰めた。次のステージに行くために、チャットモンチーとは違う血を欲してたと言うか、「自分たち以外のミュージシャンの力を借りてみたい」ということになったんですよね。彼女たちはサポートという言い方は好きじゃなくて、サポート以上にもっと深く入り込んでほしいと思っていた。だから恒岡さん、下村さんとやるときは“男陣”、世武さん、北野さんが参加したときは“乙女団”という名前を付けて、曲を作る段階から一緒にスタジオに入っていたんです。
古賀 僕はプリプロのお手伝いをさせてもらったんですが、レコーディングには関わってなくて。このときはどんな感じだったんですか?
菊池 男陣との制作初期は、かなり葛藤があったみたいです。絵莉子とあっこはもっと意見を言ってもらいたかったんだけど、恒岡さん、下村さんには彼女たちが作った曲に対するリスペクトも多分にあって。どこまで口を出していいのか、手を加えていいのか、そのあたりのコミュニケーションや擦り合わせに苦労していました。もともとチャットモンチーは、メンバーの“あ・うん”の呼吸で成り立っていたと言うか、以心伝心みたいなところも強くあったので、言葉を使って自分たちや曲を細かく説明するのが大変だったんじゃないかなと思います。
古賀 しかもセルフプロデュースですからね。
菊池 ええ。でも、乙女団になると、なぜか会話がなくても曲が成立しちゃうんですよね。ずっとにぎやかで、演奏よりもおしゃべりしてる時間のほうが長いくらいだったんですけど(笑)、いざ始まると2、3回でベストテイクが録れちゃう。その違いは面白かったです。
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最後は2人が納得できる作品を
- チャットモンチー「BEST MONCHY 1 -Listening-」
- 2018年10月31日発売 / Ki/oon Music
-
完全生産限定盤 [CD3枚組]
3996円 / KSCL-30067~70 -
期間生産限定通常盤
[CD2枚組]
3456円 / KSCL-30071~3
- 収録曲
-
DISC 1 [2005-2011]
- ハナノユメ
- サラバ青春
- 恋の煙
- 恋愛スピリッツ
- 東京ハチミツオーケストラ
- シャングリラ
- 女子たちに明日はない
- バスロマンス
- とび魚のバタフライ
- 世界が終わる夜に
- 橙
- 親知らず
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
- 風吹けば恋
- 染まるよ
- Last Love Letter
- 8cmのピンヒール
- ここだけの話
- バースデーケーキの上を歩いて帰った
DISC 2 [2012-2018]
- 満月に吠えろ
- テルマエ・ロマン
- ハテナ
- きらきらひかれ
- コンビニエンスハネムーン
- 変身
- こころとあたま
- いたちごっこ
- ときめき
- 隣の女
- きみがその気なら
- majority blues
- 消えない星
- Magical Fiction
- I Laugh You
- たったさっきから3000年までの話
Disc 3 Remixies & Rare Tracks(※完全生産限定盤のみ)
- Shangrila(Takkyu Ishino Remix)
- あいまいな感情(Dub Mix)
- 変身(GLIDER MIX)by group_inou
- Last Love Letter(Koji Nakamura Remix)
- やさしさ -seb remix-
- 砂鉄(golmol Remix)
- 恋の煙(同期ver.)with 小出祐介(Base Ball Bear)
- お調子者
- マイネオムーン イズ ヒア
- 夢心地
- BETSUBARA
- 息子(Cover)
- かわいいひと(Cover)
- きっきょん
- とまらん
- チャットモンチー「BEST MONCHY 2 -Viewing-」
- 2018年12月26日発売 / Ki/oon Music
-
完全生産限定盤
[Blu-ray2枚組]
5940円 / KSXL-265~7 -
完全生産限定盤 [DVD4枚組]
5400円 / KSBL-6317~21
- Blu-ray収録内容
-
DISC 1 Music Video [2005-2018]
- ハナノユメ
- 恋の煙
- 恋愛スピリッツ
- シャングリラ
- 女子たちに明日はない
- とび魚のバタフライ
- 世界が終わる夜に
- 橙
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
- 風吹けば恋
- 染まるよ
- Last Love Letter
- バスロマンス
- 春夏秋
- three sheep
- ここだけの話
- バースデーケーキの上を歩いて帰った
- 満月に吠えろ
- テルマエ・ロマン
- ハテナ
- きらきらひかれ
- コンビニエンスハネムーン
- こころとあたま
- いたちごっこ
- ときめき
- 隣の女
- きみがその気なら
- majority blues
- 消えない星
- Magical Fiction
- たったさっきから3000年までの話
DISC 2 Live [2005-2018]
※下記日程の公演から楽曲をセレクトして収録
- 2005
徳島・徳島JITTERBUG(2005.10.15) - 2006
東京・新宿LOFT(2006.04.01) 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO(2007.07.02) - 2007
東京・日比谷野外大音楽堂(2007.07.07@) - 2008
東京・日本武道館(2008.04.01) - 2009
東京・Zepp Tokyo(2009.07.05) - 2010
東京・Billboard Live TOKYO(2010.11.23) - 2011
大阪・Zepp Osaka(2011.06.18)
東京・中野サンプラザ(2011.06.22)
徳島・徳島club GRINDHOUSE(2011.09.29) - 2012
東京・西早稲田AVACO Creative Studio(2012.08.28) - 2013
東京・Zepp DiverCity(2013.01.14) - 2015
東京・Zepp Tokyo(2015.07.01)
東京・日本武道館(2015.11.11) - 2016
徳島・アスティとくしま(2016.02.28) - 2017
東京・EX THEATER ROPPONGI(2017.07.09) - 2018
東京・渋谷WWW X(2018.06.25)
徳島・アスティとくしま(2018.07.21)
徳島・アスティとくしま(2018.07.22)
- DVD収録内容
-
DISC 1 Music Video [2005-2011]
- ハナノユメ
- 恋の煙
- 恋愛スピリッツ
- シャングリラ
- 女子たちに明日はない
- とび魚のバタフライ
- 世界が終わる夜に
- 橙
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
- 風吹けば恋
- 染まるよ
- Last Love Letter
- バスロマンス
- 春夏秋
- three sheep
- ここだけの話
- バースデーケーキの上を歩いて帰った
DISC 2 Music Video [2012-2018]
- 満月に吠えろ
- テルマエ・ロマン
- ハテナ
- きらきらひかれ
- コンビニエンスハネムーン
- こころとあたま
- いたちごっこ
- ときめき
- 隣の女
- きみがその気なら
- majority blues
- 消えない星
- Magical Fiction
- たったさっきから3000年までの話
DISC 3 Live [2005-2011]
※下記日程の公演から楽曲をセレクトして収録
- 2005
徳島・徳島JITTERBUG(2005.10.15) - 2006
東京・新宿LOFT(2006.04.01)
東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO(2007.07.02) - 2007
東京・日比谷野外大音楽堂(2007.07.07@) - 2008
東京・日本武道館(2008.04.01) - 2009
東京・Zepp Tokyo(2009.07.05) - 2010
東京・Billboard Live TOKYO(2010.11.23) - 2011
大阪・Zepp Osaka(2011.06.18)
東京・中野サンプラザ(2011.06.22)
徳島・徳島club GRINDHOUSE(2011.09.29)
- 2012
東京・西早稲田AVACO Creative Studio(2012.08.28) - 2013
東京・Zepp DiverCity(2013.01.14) - 2015
東京・Zepp Tokyo(2015.07.01) 東京・日本武道館(2015.11.11) - 2016
徳島・アスティとくしま(2016.02.28) - 2017
東京・EX THEATER ROPPONGI(2017.07.09) - 2018
東京・渋谷WWW X(2018.06.25)
徳島・アスティとくしま(2018.07.21)
徳島・アスティとくしま(2018.07.22)
DISC 4 Live [2012-2018]
※下記日程の公演から楽曲をセレクトして収録
- チャットモンチー「CHATMONCHY LAST ONEMAN LIVE ~I Love CHATMONCHY~」
- 2018年10月24日発売 / Ki/oon Music
-
[Blu-ray]
5724円 / KSXL-271 -
[DVD]
5184円 / KSBL-6325
- 収録内容
-
- Opening~CHATMONCHY MECHA
- たったさっきから3000年までの話
- the key
- 裸足の街のスター
- 砂鉄
- クッキング・ララ feat. DJみそしるとMCごはん
- MC
- 惚たる蛍
- 染まるよ
- チャットモンチー 2005~2018 ヒストリー映像
- majority blues
- ウィークエンドのまぼろし
- 例えば、
- MC
- 東京ハチミツオーケストラ
- さよならGood bye
- どなる、でんわ、どしゃぶり
- Last Love Letter
- 真夜中遊園地
- ハナノユメ
- Encore
- シャングリラ
- 風吹けば恋
- MC
- サラバ青春
- Ending
- チャットモンチー
- 2000年4月、橋本絵莉子を中心に徳島で結成。2002年3月、橋本の高校の同級生だった福岡晃子が、翌2004年4月に福岡の大学でサークルの先輩だった高橋久美子が加入し、以降はこの3人体制で地元徳島を中心に活動する。2005年11月、ミニアルバム「chatmonchy has come」でメジャーデビュー。2006年1月には初のフルアルバム「耳鳴り」をリリースした。2008年春、初の東京・日本武道館ワンマンライブを2日間にわたって開催。その後も精力的な活動を繰り広げるが、2011年9月の徳島でのライブを最後に高橋が脱退。その後は橋本と福岡の2人体制で活動を継続する。2012年2月には初のベストアルバム「チャットモンチー BEST ~2005-2011~」を、同年10月にはフルアルバム「変身」をリリース。2015年11月に日本武道館公演「チャットモンチーのすごい10周年 in 日本武道館!!!!」を開催した。2016年2月には地元徳島にて2DAYSイベント「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2016~みな、おいでなしてよ!~」を行った。2017年11月に活動を完結させることを発表。2018年6月にラストアルバム「誕生」をリリースし、7月に最後のワンマンライブを日本武道館にて実施。7月21、22日に地元徳島で開催した「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018 ~みな、おいでなしてよ!~」をもって活動を完結させた。