ナタリー PowerPush - チャットモンチー
しなやかな「変身」の道のりを振り返る
新生チャットモンチーのニューアルバム「変身」が完成した。今年2月の「満月に吠えろ」から矢継ぎ早に5枚のシングルをリリースし、常に新たなバンド像を更新。ライブでも生まれたばかりの新曲を積極的に披露し、そこで感じ取った手応えをレコーディングと次の楽曲制作にフィードバックしてきた。その結晶の連なりとして、本作には自由で快活な遊び心とクリエイティビティに貫かれた全12曲が収められている。ツーピースバンドになってから、1年弱。なぜチャットモンチーはここまで鮮やかで感動的な変身を遂げることができたのか。橋本絵莉子と福岡晃子にじっくり語ってもらった。
取材・文 / 三宅正一(ONBU)
間違いなく今のチャットにしか作れないアルバム
──ツーピースバンドになってから1年弱、本当に鮮やかで感動的な変身を遂げたと思います。新生チャットの最初の集大成とも言うべきアルバムが完成した手応えはどうですか?
橋本絵莉子 ライブでやってきた曲がいっぱい入っているから、ホンマに「今」っていう感じのアルバムができたなって思います。
福岡晃子 絵莉子が言うように、常に現在進行で曲を作ってきて。曲ができたらすぐライブでやってレコーディングする、という流れを半年くらい繰り返してきたんです。だから常に「実験して結果を出す」という感じがあったし、バリエーションに富んだ曲がたくさんできたから、アルバムが完成するギリギリまで「ちゃんとまとまるかな?」という不安もあったんです。でも、改めて聴くと1曲1曲が強い存在感のある、間違いなく今のチャットにしか作れないアルバムができたなという実感がありますね。
──どんどん創作欲もアイデアも湧いてきたし、自然とバリエーションのある曲が生まれていった感じですか?
福岡 そうですね。でも、「あえて」という部分もありました。あえてもっと踏み込んでいくというか。だからこそ、シングルでゴッチさん(後藤正文 / ASIAN KUNG-FU GENERATION)や(奥田)民生さんにプロデュースをお願いすることにもなったし。アルバム曲(「初日の出」「ウタタネ」)でジム・オルークにエンジニアをお願いしたのもそうで。自分たちが面白そうと思うことに、まだ見えてないところに積極的に飛び込んでいったという感覚がありますね。
全く新しいバンドに生まれ変わらなければ意味がない
──新曲をすぐにライブで披露していってどんなことを感じましたか?
福岡 新しいチャットをまずはライブで見せていくことで、いろんなことを受け入れることができたんですよね。ライブでやって燃えるということを大事にして、レコーディングではその燃える気持ちをしっかり形にしていくっていう。お客さんの中にはスリーピースのチャットがすごく好きだった人もいて。私たちもスリーピース時代のチャットも絶対的にカッコいいと思っているけど、ツーピースになって全く新しいバンドに生まれ変わろうと思ったし、そうしなきゃ意味がないと思っていたので。曲作りとライブを重ねることで、生まれ変われるという手応えも感じました。そういう私たちを見て、今のほうが良いと言ってくれる人もいれば、よくわからないという顔をしてる人もいて(笑)。人それぞれの気持ちを理解したいし、それをずっと覚えておこうと思って。でも、予想以上に良い反応があったので、勢いに乗ることができましたね。
橋本 うん、そうね。
福岡 あとはライブでやることで、これはライブでしか映えないなとか、これは音源にしてもいけるなという判断ができたのも良かったですね。
──ライブではやったけど、このアルバムには入っていない曲もあるし。
福岡 そう、いくつかありますね。絵莉子も歌詞があればガンガン曲を作れる感じだったし。
- ニューアルバム「変身」 / 2012年10月10日発売 / Ki/oon Music
- ニューアルバム「変身」
- ニューアルバム「変身」初回限定盤 [CD+DVD] 3500円 / KSCL-2150~2151
- ニューアルバム「変身」通常盤 [CD] 3059円 / KSCL-2152
CD収録曲
- 変身
- ハテナ
- テルマエ・ロマン
- 少女E
- コンビニエンスハネムーン
- Yes or No or Love
- 初日の出
- 歩くオブジェ
- きらきらひかれ
- ふたり、人生、自由ヶ丘
- ウタタネ
- 満月に吠えろ
DVD収録内容
- きらきらひかれ [Studio Live]
- 初日の出 [Studio Live]
- コンビニエンスハネムーン [Studio Live]
- Yes or No or Love [Studio Live]
- ウタタネ [Studio Live]
チャットモンチー
2000年4月、橋本絵莉子を中心に徳島で結成。2002年3月、橋本の高校の同級生だった福岡晃子が、翌2004年4月に福岡の大学でサークルの先輩だった高橋久美子が加入し、以降はこの3人体制で地元徳島を中心に活動を展開する。2005年11月、ミニアルバム「chatmonchy has come」で、Ki/oon Musicよりメジャーデビューを果たす。2006年春には初の全国ツアー「smoke on the ご当地'06」を開催し、同年1月には初のフルアルバム「耳鳴り」をリリース。この作品はオリコンウィークリーチャート10位を記録した。2008年春、初の日本武道館ワンマンライブを2日間にわたって開催。チケットは2日間とも完売し、大成功を収めた。その後も精力的な活動を繰り広げるが、2011年9月29日の地元・徳島でのライブを最後に高橋が脱退。その後は橋本と福岡の2人体制で活動を継続し、同年11月からは対バンツアー「チャットモンチーの求愛ツアー」を行う。2012年2月には初のベストアルバム「チャットモンチー BEST ~2005-2011~」をリリース。その後、7カ月間で計5枚のシングルを次々と発表。同年10月、2人体制となって初のフルアルバム「変身」を発売する。