ナタリー PowerPush - チャットモンチー

「なんでもやりたい」今を象徴する 新曲&アートワークを語る

モジモジくんをやりたかったけど止められた

──ニューシングル「ハテナ」のアートワークは、アーティスト写真を野村浩司さん、ジャケット写真を関信行さんが撮影し、ビデオクリップを清水康彦監督が手がけています。それぞれのテーマを教えてください。

アーティスト写真撮影時の様子。

福岡 まずジャケット写真は、えっちゃんが人文字をしたいというアイデアを出したんです。

橋本 最初は全身タイツで、モジモジくんみたいなことをしたかったんですけど、みんなに止められて(笑)。でも、結果的にカジュアルですごくかわいいジャケットになりました。

福岡 えっちゃんのアイデアは、いつもちょっと行き過ぎてるんですよね(笑)。ただ、面白いのは確かなので、うまく活かしていくという感じで。モジモジ君はホントにずっとやりたがってたよね?

橋本 うん、そうね(笑)。

福岡 そこはとんねるずに任せておこうよっていう(笑)。

──アー写は「?」のオブジェとロケーションを幻想的にするライティングが印象的です。撮影にお邪魔しましたが、すごく楽しそうでした。

橋本 野村さんが用意してくれたオブジェの存在感とライティングの効果で、私たちが何をしてもカッコいい写真になるとわかっていたので。オブジェの前でいろんなポーズを試しました。

──ポーズ案も、現場のノリで2人からどんどん出ていましたね。

アーティスト写真撮影時の様子。

福岡 撮影はいつもその場のノリを重視していますね。アー写は観る人に引っかかりを残すものにしたいので。それを意識しながら。

──ビデオクリップはどんな仕上がりになっているんですか?

福岡 ビデオクリップはひたすらカッコいい感じです。「チャット史上いちばんカッコいいビデオクリップを撮ってください」と監督にお願いして。

橋本 今回のビデオクリップはほぼ演奏シーンですね。「宇宙の中でひとつになる」というテーマのもと、暗闇の中でカッコよく演奏している感じです。

福岡 演奏シーンを見せたいというえっちゃんの強いこだわりがあって。サウンド的にも、この曲のビデオクリップはストレートにやったほうがいいと思ったし。清水監督はずっとチャットのビデオクリップを撮ってくれているので、安心してお任せしました。清水さんはめちゃくちゃロックな人で、いつも誰よりも必死になって、汗ダラダラかきながら撮影に臨んでくれるんですよ(笑)。その一方で、映像には繊細な面もあって。面白い人です。

「ハテナ」はポジティブなワクワク感を前に出したかった

──ここからは、楽曲について話を聞かせてください。まずシンプルに感想を言わせてもらうと、めちゃくちゃカッコいいです、この曲。

2人 ありがとうございます。

──この「ハテナ」という曲はどういう流れの中で生まれたんですか?

橋本 この曲もいつもどおり歌詞からできて。歌詞を書き始めたのは、スリーピース時代の最後のツアー「YOU MORE 前線」を回っているときでした。ツアー中に「八朔の雪 —みをつくし料理帖」(高田郁著)という江戸時代の料理人を描いた本を読んでいて。そこで「はてなの飯」という、今で言うお任せメニューのような料理が登場するんですね。「?」という記号はよく目にするけど、言葉として「はてな」という単語を見たときに新鮮な引っかかりを感じて。生活している中でたくさんの疑問を抱くけど、答えが出ないことってよくあるじゃないですか。じゃあ、それをテーマに曲を書いてみようと思って。

──この曲のテーマって、自分たちが音楽を鳴らす理由とか、その衝動の根源に触れにいくような感触があって。橋本さんが自分のソングライティングの核心に迫るような歌詞だなと思いました。

橋本 テーマがテーマだけに本質と向き合う感じになったというか、「こうだから、こうなった」という過程がない歌詞になりましたね。答えのない疑問について歌詞を書いていること自体が「こうなんです」という主張というか(笑)。最終的に歌詞を完成させたのはツーピースになりたての頃で。サウンドも含めて、2人のポジティブなワクワク感を前に出したかったんです。

──つい深読みしてしまうんですけど、この曲の歌詞は高橋さんの脱退を受けて書いた部分もあるんですか?

橋本 いや、それは関係なかったですね。ツアー中って、ずっと自宅から離れてホテル暮らしになるから、普段の生活とはかけ離れた発想になるんですよね。

──哲学的なモードになったり?

アーティスト写真撮影時の様子。

橋本 そうそう。普段よりもいろんなことを思ったり、考えたりする。いつもは暮らしの中で歌詞のテーマを見つけることが多いんですけど、この曲はすごくツアー中な感じが出ましたね(笑)。「ハテナに答えなんてない」というフレーズがありますけど、歌詞の着地はあくまで陽の感じを出すことを意識して。

──サウンドのイメージは?

橋本 ギターがジャキッと鳴っていて、攻撃的で、というイメージがすぐに浮かびましたね。聴いてくれる人たちがちょっと心配になるくらい攻撃的にしたかった。

──アグレッシブなストロークとビートで転がしていく、ここまでシンプルなロック感が前に出るのもツーピースならではだと思います。

橋本 スリーピースの頃はストレートなサウンドを避けていたところもあって。ベースがあるとギターなしでもコード感を出せるじゃないですか。だから、今まではどこかで複雑にしようという意識が働いていたところもあったんですけど。でも、今はギター1本とドラムだけやし、コード感も自分で出さなきゃいけない。それを意識したら自然とこういうサウンドになって。録るときは細かいことは気にせずに「思いっきり鳴らしてやれ!」という感じで弾きましたね。

ニューシングル「ハテナ / 夢みたいだ」2012年5月2日発売 1020円(税込)Ki/oon Music KSCL-2010

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CD収録曲
  1. ハテナ
  2. 夢みたいだ
チャットモンチー

2000年4月、橋本絵莉子(G, Vo)を中心に徳島で結成。2002年3月、橋本の高校の同級生だった福岡晃子(B, Cho)が、翌2004年4月に福岡の大学でのサークルの先輩にあたる高橋久美子(Dr, Cho)が加入し、以降はこの3人体制で地元徳島を中心に活動を展開する。2005年11月、ミニアルバム「chatmonchy has come」で、Ki/oon Recordsよりメジャーデビューを果たす。2006年春には初の全国ツアー「smoke on the ご当地'06」を開催し、同年1月には初のフルアルバム「耳鳴り」をリリース。この作品はオリコンウィークリーチャート10位を記録した。2008年春、初の日本武道館ワンマンライブを2日間にわたって開催。チケットは2日間とも完売し、大成功を収めた。その後も精力的な活動を繰り広げるが、2011年9月29日の地元・徳島でのライブを最後に高橋が脱退。その後は橋本と福岡の2人体制で活動を継続し、同年11月からは対バンツアー「チャットモンチーの求愛ツアー♡」を行う。2012年2月には初のベストアルバム「チャットモンチー BEST ~2005-2011~」をリリースした。5月2日、新体制では3枚目のシングルとなる「ハテナ / 夢みたいだ」を発表。