ナタリー PowerPush - チャットモンチー
「新しい未来」を突き進む2人が語るこれまでとこれから
相手がえっちゃんひとりだから合わせられる
──福岡さんがドラムの練習を始めたのはいつ頃だったんですか?
福岡 ツアーが終わって、7月中旬くらいからですね。1日3時間のドラムレッスンを週に3回くらいやりつつ、同時にえっちゃんと一緒にスタジオにも入り始めたので、結果的に週に5回は叩いてました。
──しかし、ドラムを体得するまでのスピードがすごいですよね。
福岡 いろんな人にそう言ってもらえるんですけど、自分ではわからないんですよね。レッスン中は何回か泣きそうになりましたけど、先生になぐさめてもらって(笑)。でも、ドラムを覚えるのを楽しみたかったし、実際にすごく楽しくもあったから。自分がここでがんばれば、この先のチャットにいいことが待っているのは明らかだったし。ただ、私がドラムを合わせられるのは、相手がえっちゃんひとりだからなんですよ。これがほかにメンバーが2~3人いたりしたら、ドラマーとしての資質が相当問われるから。私は、えっちゃんに合わせることは得意なので。ほかの誰かだったらこんなにうまくはいっていないと思います。
──でも、かなりカッコいいドラムを叩いてると思う。
橋本 うん、私もすごくカッコいいドラムだなって思います。
──技巧的な部分を超えた、パンクドラマーのようなカッコよさがあるなって。
福岡 確かに気持ちはパンクです(笑)。
悲しみに寄りすぎない強い歌詞
──「満月に吠えろ」は2人でスタジオに入るようになって早い段階でできた曲ですか?
橋本 そうですね。わりと早い段階でできましたね。
福岡 「満月に吠えろ」というタイトルは、2人になるってなったときにすぐに浮かんでいて。これをサビにしたいとも思っていました。でも、最初はドラムのレッスンに必死だったから、しばらく歌詞に手をつけてなかったんです。そこから新曲を作ろうってなったときに改めて形にして。
──この曲の歌詞は、まさに決意表明ですよね。
福岡 「満月に吠えろ」はまさに2人体制になったことについての歌詞なんです。泣きたいとか、悲しいとか、そんなことは表現したくなかったから。でも、ちゃんとただならぬ思いもしたよ、ということをカッコよく表現したくて。
──サビの「この歌をとめるな」というフレーズが強く響いてきます。
福岡 ここまでリアルタイムの自分を歌詞にするのは、今まであまりやったことがなくて。これまで私が書いてきた歌詞というのは、風化しつつある気持ちを、美的な表現やカジュアルな言葉に変換するようなものが多かったんです。でも、今はこういうリアルタイムの感情や決意を歌にできてこそミュージシャンだって思うんですよね。だから、「書いたれ!」って気持ちで書きました。悲しみに寄りすぎない、強い歌詞が書けたと思います。
──力強く前に開けてもいますしね。
福岡 この歌詞をえっちゃんに渡したら、絶対に風通しのいい決意の曲にしてくれると思ってましたね。
橋本 この歌詞を読んで「早く形にしたい!」って思ったんです。すぐにメロディをつけて、あっこちゃんに「こんなんできた!」ってスタジオで歌って聴かせて、「ええな!」って盛り上がってアレンジしていきました。
ドラムセットはえっちゃんと割り勘で買ったんです
──そしてサウンド面では、2人体制になったチャットの原点となるような、ミニマルなロックが鳴っていますね。アレンジ面で意識したことは?
橋本 ライブでループステーションを使うことを想定していたので、ずっと同じコードで進んでいけるようなアレンジにすることを心がけました。ライブで演奏するときはその場でギターをループさせてしまえば、ギターを弾かなくてもよくなるので、踊ってしまえと思って(笑)。
福岡 振り付けも考えてね(笑)。
──そんなところにも今のチャットの自由度が表れていますね。
橋本 ツーピースというだけでバンドとして尖った感じが出るから、何をしてもいいという発想になれるんです。
──今のチャットにとって、ループステーションは大きな存在ですね。
橋本 すごく大切です。ないと困る(笑)。ちょうど最新版のループステーションが発売されたばかりだったんですよ。だから、私たちは時代に呼ばれたツーピースやなって思ってます(笑)。
福岡 たまにデカいこと言うなあ(笑)。それだけノってるってことだよね。
橋本 ノってるよ!(笑)
──福岡さんは、ドラマーとしての初レコーディングになったわけですが、どうでしたか?
福岡 自分がドラムをレコーディングすることが、なんだかおかしかったです(笑)。スタッフがドラムセットを組んでくれて「今日からこれを使ってレコーディングするのか!」みたいな(笑)。ドラムセットはえっちゃんと割り勘で買ったんです。だからすごく愛着があって。なるべくほかのドラムは使わずに、このドラムの音を大事にしようと思ってます。レコーディングのときに自分が叩くドラムの音を初めて客観的に聞いたんですけど、ちゃんと割り勘したいい音が鳴ってるって思いました(笑)。
橋本 あはははは(笑)。うん、鳴ってるよ。
福岡 なるべく大きく叩こうと思って。そうすれば2人の楽しいモードをちゃんと音に込められると思ったし。今はえっちゃんの歌に合っている、大きくて楽しいドラムを叩くことが一番だと思ってます。
CD 収録曲
- ハナノユメ
- 恋の煙
- 恋愛スピリッツ
- 東京ハチミツオーケストラ
- シャングリラ
- 女子たちに明日はない
- とび魚のバタフライ
- 世界が終わる夜に
- 橙
- 親知らず
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
- 風吹けば恋
- 染まるよ
- Last Love Letter
- 8cmのピンヒール
- ここだけの話
- バースデーケーキの上を歩いて帰った
初回限定盤 LiveDVD収録曲
- DEMO、恋はサーカス
- さいた
- メッセージ
- ひとりだけ
- とび魚のバタフライ
- 恋愛スピリッツ
- 長い目で見て
- シャングリラ
- 風吹けば恋
- ここだけの話 (Acoustic Ver.)
- 染まるよ (Acoustic Ver.)
- 真夜中遊園地
- Last Love Letter
- 拳銃
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
- 親知らず
- ハナノユメ
チャットモンチー(ちゃっともんちー)
2000年4月、橋本絵莉子(G, Vo)を中心に徳島で結成。2002年3月、橋本の高校の同級生だった福岡晃子(B, Cho)が、翌2004年4月に福岡の大学でのサークルの先輩にあたる高橋久美子(Dr, Cho)が加入し、以降はこの3人体制で地元徳島を中心に活動を展開する。同年6月にリリースした自主制作音源「チャットモンチーになりたい」が大きな話題を呼び、音楽専門誌などで大きく取り上げられるようになる。2005年11月、ミニアルバム「chatmonchy has come」で、Ki/oon Recordsよりメジャーデビューを果たす。2006年春には初の全国ツアー「smoke on the ご当地'06」を開催し、その人気を全国区へと拡大する。同年1月には初のフルアルバム「耳鳴り」をリリースし、オリコンウィークリーチャート10位を記録した。2008年春、初の日本武道館ワンマンライブを2日間にわたって開催。チケットは2日間とも完売し、大成功を収めた。その後も精力的な活動を繰り広げるが、2011年9月29日の地元・徳島でのライブを最後に高橋が脱退。その後は橋本と福岡の2人体制で活動を継続し、同年11月からは対バンツアー「チャットモンチーの求愛ツアー♡」を実施した。2012年2月1日より、3週連続でシングル「満月に吠えろ」「テルマエ・ロマン」、初のベストアルバム「チャットモンチー BEST ~2005-2011~」をリリースする。