ナタリー PowerPush - チャットモンチー
「新しい未来」を突き進む2人が語るこれまでとこれから
昨年9月29日、バンドの地元である徳島でのライブをもってドラムの高橋久美子が脱退。橋本絵莉子と福岡晃子の2人体制になったチャットモンチーはしかし、最高に自由でタフな精神性で音楽を楽しんでいる。それは、新生チャットモンチーの第一声として連続リリースされる2枚のニューシングル「満月に吠えろ」と「テルマエ・ロマン」から、まざまざと感じられる。
ベーシストだった福岡がドラマーに転身したのは多くの人を驚かせもしたが、2人になったことをハンデとして背負うのではく、2人だからこそ何ができるかを想像し、豊かなアイデアと音楽愛を楽曲に注ぎ込む。この2枚のニューシングルは、そんな2人の決意に一切の淀みがないことを証明している。また、スリーピース時代のチャットモンチーを総括するベストアルバム「チャットモンチー BEST ~2005-2011~」もリリースされる。高橋の脱退からニューシングルに至るまでの経緯と思いを、2人にたっぷり語ってもらった。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) インタビュー撮影 / 中西求
ボーカルが1人いれば、あとはどんな楽器をやってもいい
──僕は年末の「COUNTDOWN JAPAN 11/12」で新生チャットモンチーのライブを初めて観ることができて。
福岡晃子 ライブが終わったあとずっと「感動した!」って言ってくれてましたよね(笑)。
──うん(笑)。新曲はベースレスだけではなく、ギターレスの曲もあったり、橋本さんはループステーションを使ってその場でギターを録音・再生して、最後にはハンドマイクで歌ってみせて。2人の音楽に対する気概がひしひしと伝わってきて、すごく感動的なライブでした。
福岡 ありがとうございます。今、強く思っているのは、バンドってボーカルが1人いれば、あとのメンバーはどんな楽器をやってもいいんだなということで。そういう発想で面白いと思ったことは、どんどん挑戦していきたいですね。ただ、チャットモンチーの核にあるのはこれからも歌だし、そこは変えたくないと思ってます。
──2枚の最新シングルからも、歌の美学を貫こうとしているのはすごく伝わってきます。
橋本絵莉子 新曲でも、メロディにちゃんと歌詞が乗っていて、歌いたいことを歌うというバンドの核は残したいと最初から思っていましたね。
福岡 ツーピースになって勢いでごまかすこともできると思うんですけど、やっぱりチャットは歌モノでいきたいんですよね。サウンド的にはこれまで以上にポップになってもいいし、異様な感じになってもいいと思うんですけど、ちゃんと歌を聴かせるバンドでいる姿勢はブレたくないですね。
最初から最後まで3人であることを崩さなかった
──スリーピース時代のチャットを総括するベストアルバムの話から聞かせてください。まさにこのタイミングだからこそリリースできるベストアルバムだと思います。
福岡 本当にそうだと思います。リスナーもベストアルバムのリリースを望んでるんじゃないかと思ったし、私たちにとってもひとつの区切りとして、すごく前向きな気持ちでリリースできるベストアルバムですね。
──改めて、スリーピースのチャットが残してきた曲たちに対してどんな思いがありますか?
福岡 ずっとスリーピースバンドであることを追求してきたなって。自分たちもそれがカッコいいと思っていたし、醍醐味でもありました。あとは、シンプルにいい曲を作ってきたなと思います。バンド活動をしていく中で、悔しい思いや悲しい思いもしてきましたけど、それがないと生まれなかった曲もあって。自分たちが感じてきたことをちゃんと曲にしてきたし、二度とやりたくないって思う曲なんて1曲もないから。
──確かにチャットモンチーは、一貫してリアルでビビッドな感情や感覚を音楽に昇華してきたと思うし、2人になってもそこは変わらないと思います。
橋本 そうですね。曲に嘘は書けないし、これからも書きたくないから。私もこのベストアルバムを聴いて、最初から最後まで3人であることを崩さなかったんだなって思いました。3人でしか見えない景色がそのまま曲になってるなって。
福岡 今はバンドが三角じゃなくなったことの勢いがバーン!って爆発してる感じなんですけど(笑)。
橋本 そうね(笑)。
CD 収録曲
- ハナノユメ
- 恋の煙
- 恋愛スピリッツ
- 東京ハチミツオーケストラ
- シャングリラ
- 女子たちに明日はない
- とび魚のバタフライ
- 世界が終わる夜に
- 橙
- 親知らず
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
- 風吹けば恋
- 染まるよ
- Last Love Letter
- 8cmのピンヒール
- ここだけの話
- バースデーケーキの上を歩いて帰った
初回限定盤 LiveDVD収録曲
- DEMO、恋はサーカス
- さいた
- メッセージ
- ひとりだけ
- とび魚のバタフライ
- 恋愛スピリッツ
- 長い目で見て
- シャングリラ
- 風吹けば恋
- ここだけの話 (Acoustic Ver.)
- 染まるよ (Acoustic Ver.)
- 真夜中遊園地
- Last Love Letter
- 拳銃
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
- 親知らず
- ハナノユメ
チャットモンチー(ちゃっともんちー)
2000年4月、橋本絵莉子(G, Vo)を中心に徳島で結成。2002年3月、橋本の高校の同級生だった福岡晃子(B, Cho)が、翌2004年4月に福岡の大学でのサークルの先輩にあたる高橋久美子(Dr, Cho)が加入し、以降はこの3人体制で地元徳島を中心に活動を展開する。同年6月にリリースした自主制作音源「チャットモンチーになりたい」が大きな話題を呼び、音楽専門誌などで大きく取り上げられるようになる。2005年11月、ミニアルバム「chatmonchy has come」で、Ki/oon Recordsよりメジャーデビューを果たす。2006年春には初の全国ツアー「smoke on the ご当地'06」を開催し、その人気を全国区へと拡大する。同年1月には初のフルアルバム「耳鳴り」をリリースし、オリコンウィークリーチャート10位を記録した。2008年春、初の日本武道館ワンマンライブを2日間にわたって開催。チケットは2日間とも完売し、大成功を収めた。その後も精力的な活動を繰り広げるが、2011年9月29日の地元・徳島でのライブを最後に高橋が脱退。その後は橋本と福岡の2人体制で活動を継続し、同年11月からは対バンツアー「チャットモンチーの求愛ツアー♡」を実施した。2012年2月1日より、3週連続でシングル「満月に吠えろ」「テルマエ・ロマン」、初のベストアルバム「チャットモンチー BEST ~2005-2011~」をリリースする。