ナタリー PowerPush - チャットモンチー
バンドの進化を示す傑作が完成 3rdアルバム「告白」を語る
沖縄だからどさくさにまぎれて言っちゃえ、みたいな曲
──やっぱり前はちょっと突っ張ってた感じありました?
福岡 うん。それがかっこいいもんだって思ってましたからね。でもいろんな人がそうじゃないって気づかせてくれたし、私たちもチャットモンチーを好きな人とうち解けるのが好きだから(笑)。
──あのね、自分のことを好きな人を好きになるってすごく大事なことだと思うんですよ。
福岡 そうですよね。
──それが人間関係の一番の基本っていうか。愛されている人ってみんなそうですね。
福岡 ですよね。その中でチャットモンチーを好きでいてくれるのに、私たちと若干考え方が違ったりする人がいることにも気づいてきて、だったら、愛を持って一緒に組み立て直そうよって。そういうのもこの何年間かでだんだんできるようになってきたっていうか。
──なるほどね。それと多少関係あるのか、福岡さんの曲で「長い目で見て」って曲。これは誰に向けてる曲なんですか?
福岡 えっと、レコード会社(笑)とか、事務所とか。ふふふ。
──ああ。いろいろ言われるんですか?
福岡 いや、別に直接的に言われたわけじゃないんですけど、こう、チャットモンチーって外枠ががっちりしてるんです。なので、もうちょっと広々とした景色をみんな見ようよ、みたいな。さっきの話にもつながるんですけど、チャットモンチーはこうじゃないと、みたいなのがスタッフさんからもあるし、好きだからこそいろんなチャットモンチー像をみんなが持ってるので、なんかその、意気込みがすごかったりして。私たちが逆にビックリするくらい。
──熱く語られちゃったり。
福岡 そういうのがあったから、そういうのも面白く言えればいいなと思って。この曲と、7曲目の「ハイビスカスは冬に咲く」は沖縄で作った曲なんですよ。沖縄だから言っちゃえ、みたいな感じです。どさくさにまぎれて(笑)。
私たちが100%って思うことが100%だから
──誰でも自分の好きな人にはこうあってほしいっていう理想像は持っていると思うんです。で、それに応じて変われる人もいるし、束縛だなあと思う人もいるだろうけど、どっちに近いですか?
福岡 ごく身近な人の意見がすごく大事なときもあるんですよ。でも、私たちは発信者だから、やっぱり私たちが100%って思うことが100%であって、その人たちが基準ではないですね。大事なところと、そうじゃないところをちゃんとわかるようになってきて、チャットモンチーを愛してもらうためにはこっちのほうがいいって、今はちゃんと言えるようになったかなって。
──例えばね、ライブで今日は自分たちとしては全然デキがよくなかったと思ってても、最高だったって言われたり、その逆のこともあると思うんだけど。自分たちが思ってることと周りが思うことが食い違う。それは受け入れられるようになりました?
福岡 はい、なりました。もし自分が今日のライブ全然よくなかったって思って、スタッフにもそう言われても、お客さんに「すっごいよかった」って言われたら一番よかったって思いますね。お客さんが全てだから。スタッフに向けてライブしてるわけじゃないから、お客さんによくないって思われるのが一番ダメ。悪かったところはたいがい自分で全部わかってるから、それをスタッフに確認して、次に生かす。そのギャップは常にお客さんにとっていいほうであってほしいと思いますね。
ほめられたほうが伸びるタイプだと思う
──橋本さんはいかがですか。この5年で自分の何が変わりましたか?
橋本 うーん……私はあんまり変わってない気がして(笑)。高校のときからあんまり変わってないんですよね。バンドやりはじめたときからあんまり変わってないなあって思います。
──あんまり周りに左右されない感じ?
橋本 いや、なんか言われたりするとめっちゃ傷付くんですけど。非難されたりとか否定されたらすっごい腹立って、なんで? とか思って、すごいしょげたりするのはずっと変わらないんですね。前に一度だけ「2ちゃんねる」を見たことがあるんですけど、すっごい悔しくて一晩眠れなくて。ほんっとにやめてやろうかって思うくらいのことを普通に書いてるんですよね。そういう人が生きとるっていう時点で(笑)、もう、この世界はなんだろう!?とか思って(笑)。で、そのときあっこちゃん(福岡)が教えてくれたんかな。発信する側は受け取る側の声を聞いてはならないっていうのを。そっか、と思って。そっから完璧にシャットアウトするようになったんですよ。外野の声というのを。聞き入れるのは周りの声だけにして、あとライブのお客さんとかファンレターとか。
──まあ有名になるとあることないこと言われますからね。今回2人のプロデューサーとやってみて、どうでした?
福岡 淳治さんは、やっぱり4人目のメンバーっていう感じですね。一緒に「アレンジ、こうしたほうがいいよ」とかサクサクとやってくれて。で、私らも「いや、こっちがいいよ」っつって、けっこう意見を言い合うっていう感じで。ほんとメンバーみたいな感じです。それで、亀田さんは顧問の先生みたいな感じですかね。3人でやってるのを横から「うんうん」って見ててくれて。で、「ここどう思いますか?」って相談したところを、「うん、今の感じでいんじゃない?」とか「こうしたら?」とかちょっとアドバイスくれて、で、ホントに私たちのことを尊重してくれる方だったので。「私たちはこっちがいいと思います」って言うと「うんうん、だったらそうしよう」っていう感じで、ほめて伸ばすじゃないけど、バンドのいいところを伸ばしてくれる方だなって思いました。
──叩かれると伸びないほうですか?
福岡 うん(笑)。いや、そんなこともないですけど、でもほめられたほうが伸びるタイプだと思います。
まだまだやりたいことがある
──チャットモンチーのいいとこってどこだと思います?
福岡 やっぱり、スリーピースで、3つの音を大事に作っていくところ……その3人が並列に立っているところだと思います。ギターがいて、その後ろでリズム隊がいるっていうのではなくて、リズム隊だけでも歌を乗せられるぐらいまでアレンジを詰めていってギター乗せるとか、なんか、やっぱり3つの音が並列におるところじゃないかなと思いますけど。
──逆に、もし今自分たちに足りないものがあるとしたら何だと思います?
橋本 (楽器の)スキル。ミスりたくないっていうだけの話ですけど……(笑)。
高橋 (笑)ああ、でもそれはあるなあ。なんか頭の中で描いていることをさらっとできないっていうか。基礎が追いついてないってことなんです、イメージに。まずは基礎固めをした上でのアレンジじゃないですか。だけどアレンジが先にあって、このアレンジはどうやって叩くんかな、みたいな感じになってるから、私の場合。そこで、その思い付いたフレーズをむっちゃ練習して「おっしゃ」みたいな感じだから。大抵の人って持ち幅の中でアレンジを考えると思うんですけど、自分たちはその持ち幅が足りないのに、けっこう面白いのをやりたい癖があるから。考えたフレーズが、自分には叩けないとか。
──それだけに2人のプロデューサーとやって、そのあとセルフでやったのは勉強になったんじゃないですか。
福岡 うん、淳治さんと学んだことは、レコーディングでしかできないきらきらしたものを柔軟に取り入れること。で、亀田さんは実際のレコーディングまでにアレンジをがっちり固める。本当に両方のいいところをとらせてもらって。アレンジの時点でがっちり固めるけど、当日のひらめきも大事にしようみたいな。そしたらすごくスムーズにいって。
──今後もセルフプロデュースで?
福岡 やっていきたいですね。もちろんまだやりたいこといっぱいあるし、いっしょにやってみたいプロデューサーさんもいっぱいいるし、いろいろ挑戦しつつ、そこでセルフでやりたいって思う時期にしたいなと思いますね。
CD収録曲
- 8cmのピンヒール
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉(Album Mix)
- 海から出た魚
- 染まるよ
- CAT WALK
- 余談
- ハイビスカスは冬に咲く
- あいまいな感情
- 長い目で見て
- LOVE is SOUP
- 風吹けば恋
- Last Love Letter(Album ver.)
- やさしさ
チャットモンチー
橋本絵莉子(G&Vo)、福岡晃子(B&Cho)、高橋久美子(Dr&Cho)の3人による徳島出身のロックバンド。デビュー前から“未完の大器”として音専誌で大々的に紹介され、2005年11月にミニアルバム「chatmonchy has come」で即ブレイク。J-POP/洋楽ギターロックの良質な部分を、ガーリーかつ豊かな感性で表現する世界観が幅広いリスナーを魅了し続けている。