毒というよりも腹黒さがすごい

──「等身大グレー」はほかの曲と違って、具体的なポジションや属性を批判しているわけではないのかなと。

いつか　そうですね。白黒付けずに、常にいい流れに身を任せるあざとさを持ったずるい人。そういう人たちの人間性を攻撃してます。

──批判対象が幅広いと共感できるリスナーが多くなるかもしれないですね。ちなみに作り手としては「聴いた人に共感してほしい」みたいな気持ちはあります？

いつか　いや、共感してくれる方がいることはうれしいんですけど、「これに共感してくれ」とは思ってなくて。「私はこう考えています」ってことを表明して、ついでに歌ってるだけなんで。

──自分の中の毒を吐き出すことが目的みたいな？

いつか　普段から常に吐き出してるので、歌にしなくても全然困ってないです。

──ああ、なるほど（笑）。それを考えると、いつかさんがこういう曲を作るモチベーションってなんなんでしょうか。

いつか　なんですかね。癖？ まあ、CDを出させてもらえるようになってからは、自分で意識してそういう曲にしてるとこはありますけど。「ユーモアを交えて毒を吐く」っていうのが私のやりたいスタイルなので。

──それについてはゴンチさんも同じ気持ちですか？

ゴンチ　私は特にそういうことをやりたいとは考えてないです。自分の中に毒はないと思うし（笑）。

いつか　……（驚きの表情）。

ゴンチ　えっ、毒ある？

いつか　毒というよりも腹黒さがすごい。

ゴンチ　まあ腹黒さはありますけど、毒とはちょっと違うかなと思うんですよね。だから吐き出すようなものは全然ないし。

──吐き出さないから溜まっていって腹黒くなるのかもしれないですね（笑）。

ゴンチ　それはあるかも（笑）。

唯一このアルバムの救いどころ

──続いての曲は「ベルサッサ」。このタイトルは「終業ベルがなると同時に帰宅する人」っていう意味なんですね。

いつか　これ、こないだのナタリーの取材でおかざき真里さんと対談させていただいたときに（参照：Charisma.com「OLest」特集 Charisma.com×おかざき真里対談）、おかざき先生から「ベルサッサ」って言葉が出たのを聞いて、いい言葉だなと思って題材にしたんですよ。

──あ、そうなんですか！ あの対談が作品作りのきっかけになったというのは、企画した側としてはとてもうれしいです。これは誰かを攻撃するわけではなく、日常をある種のファンタジーのように描いている曲なので、そういう意味ではほかの曲とテイストが違いますよね。

いつか　そうですね。単純に「終業時間になったらさっさと帰りたい」ってことを歌ってる曲なので。これはトラックが先にあって、最初に聴いたときに「このカッコいいトラックを絶対曲として完成させたい」と思ったんですよ。でも今までのやり方でラップするとなんかトラックが映えなくて、歌を多めにすることにしたんです。

ゴンチ　今回のアルバムは全体的にすごく攻撃的で、救いがないじゃないですか。そんな中で「ベルサッサ」だけが毒舌じゃなくて、これが唯一このアルバムの救いどころなのかなって。

いつか　救いはないよ（笑）。

──ちなみにお2人はベルサッサするほうですか？

いつか　ムダな残業はしたくないので、できればベルサッサしたいですけど、あくまで自分のペースで、やらなきゃいけないときは残って仕事してました。私はまず「今日はこの仕事とこの仕事があります」というのを整理して、一番スピーディに終わるやりかたを組み立ててから仕事に取り掛かります。

ゴンチ　私は「この期日までに出さなきゃいけない」っていう仕事をギリギリまで溜め込んでしまうタイプですね。なので、普段は全然残業ないんですけど、ここぞというときばかりは時間をはみ出ても仕事して帰ります。

いつか　それは単に自分の尻拭いでしょ。無駄に残業代が出て、会社的にも迷惑だよ（笑）。

ゴンチ　うち残業代出ないんで大丈夫。ただ、みんなからちょっとバカにされるけど（笑）。