音楽ナタリー Power Push - Charisma.com×おかざき真里
元OLマンガ家と現役OLアーティストによる“最上級のOL談義”
Charisma.comがメジャーデビューミニアルバム「OLest」をリリースした。
メンバーであるいつか(MC)とゴンチ(DJ)は共に音楽活動を続けながら、並行してOLとしても働いている。その経験の中で生まれた喜怒哀楽の感情を楽曲に注ぎ込むスタイルで、彼女たちは圧倒的なリアルを描き、多くの女性たちの共感を呼んでいる。本作はそんな彼女たちの持ち味を最上級(OL+est)に詰め込んだ意欲作だ。
今回音楽ナタリーではCharisma.comのメジャー進出を記念して対談を企画した。その相手に選ばれたのは、過去に広告代理店で11年間勤めていた経歴を持つマンガ家のおかざき真里。ドラマ化もされた大ヒット作「サプリ」をはじめ、多数のOLマンガを手がける元OLマンガ家と現役OLアーティストによる“最上級のOL談義”をお届けする。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 笹森健一
怒りだけを原動力にして描いてたら精神的に消耗する
──かつてOLだったおかざき真里先生と、現在OLとしても働いているCharisma.comの対談ということなので、まずは“OLはつらいよ”的なテーマでスタートしたいなと思っているのですが。
いつか(MC) “つらいよ”かあ。まあでもそう見えてしまいますよね。私の曲はだいたい怒ってますから(笑)。
おかざき真里 あははは(笑)。アルバムを聴かせていただきましたけど、あれは怒ってるという解釈でいいんですね。ラップだから怒ってるふうに聞こえちゃうのかなと思ったんですけど。
いつか はい、たいてい怒ってます。
おかざき でもね、曲を聴いて思いました。私もOL時代はいろいろ怒ってたなあって。「サプリ」という作品も、第1話はその怒りを基に描きましたし。ただ、連載を続けるには、そういう怒りだけを原動力にして描いてたら精神的に消耗するなって思ったんですよ。だから怒りは封印することにしたんですけど。
いつか そうなんですよ! 怒ってるだけだと消耗しますよね。だから今後は怒るような出来事があったとしても、客観的に見ればすべてギャグだよねっていう落としどころで曲を作っていきたいなとは思っていて。
おかざき へえ。じゃ、ここからはコミカルな感じになっていくんですかね。
いつか そうなればいいかなと。とは言え、それをちょっと意識して作ったのに今回もコレですからね(笑)。次も怪しいですけど。
──働いている上でどんなことで怒りを覚えることが多いですか?
いつか 会社には自分と考え方の違う方がいっぱいいますからね。そこでのやり取りが一番の原因になってると思います。気持ち的な許容範囲は広くなってきてるけど、逆に「ここはこうでなくちゃいけない」みたいな自分の中でのルールみたいなものが固まっているところもあったりして。そこから外れたことをされるとついイラッとしてしまうという。そういうことはやめたいんですけどねえ。「サプリ」を読んでいても、上司とかクライアントの言動にかなりイライラしました(笑)。自分の気持ちとリンクしてツラくなるところもありましたし。
おかざき あははは(笑)。すみません。
会社のラジオから流れてくると下向いちゃう
──ゴンチさんはどんなことで怒ります?
ゴンチ(DJ) 私、普段全然怒らないんですよ。だからこの場にいていいのかわからないんですけど(笑)。ちょっとイラッとすることがあったとしても、「ほかの人から自分もそう思われてたらどうしよう」とかすぐ考えちゃうから怒れないっていう。
いつか 性格的に私とまったく正反対ですからね。怒りの感情があまり生まれないところはちょっとうらやましくも思いますけど。
ゴンチ あ、でも私も「サプリ」を読ませていただいて、グサッとくるところはたくさんありました。失敗を気にしすぎるとそれが人生にも染み出るとか、ネガティブは人に対して失礼だとか。私、けっこうネガティブ思考なんですよ。
おかざき 怒らないけどネガティブなんだ(笑)。
いつか 「サプリ」にはOLとして刺さるセリフは多いですよね。すごくリアルだから。
おかざき 実際にOLをしていたので、リアリティを持って描くことは意識してましたね。例えば1人で残業をしてたら仲間がわーっと応援に来てくれるとか、そんなことって普通ないよなって思ってたから(笑)。
いつか 確かに実際にはあんまりないですよね、そういうことって。
おかざき そう。だからそういうことは描かないようにしようって。ただね、私は「サプリ」をOL辞めてから描いたんですよ。真っただ中にいる状況だと、客観的に描けないタイプなので。でもCharisma.comはOLをやりつつああいう曲が作れているでしょ。それって本当にすごいことだなあって思うんですよね。
いつか 怒りのネタが誰だか会社の人にバレてしまうのが大変ですけどね。私の場合、もはやただの悪口だから(笑)、会社のラジオから流れてきたりすると下向いちゃいますね。必死に「違いますよ、これ違いますよ!」とか言いますけど、どう考えてもわかるだろうっていう。
おかざき あははは(笑)。「サプリ」ですら、連載終了後に「あれ私のことでしょ?」とか「あれ僕のことですよね?」とか言われましたよ。「はい、すいません」みたいな(笑)。やっぱりモデルにする人はいますから。そこはしょうがない。
ゴンチ 私は自分たちの曲を聴いていて、「これは私のことを歌われてるのかもしれないな」って思いながら聴いたりすることが多々あります。
いつか 違うけどね(笑)。
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- メージャーデニューミニアルバム「OLest」/ 2015年7月8日発売 / 2160円 / Warner Music Japan / WPCL-12163
- メージャーデニューミニアルバム「OLest」
収録曲
- やれよ。
- お局ロック
- マメマメBOYがさつGIRL
- アラサードリーミン
- ダリぃだらりん
- こんがらガール
- 超絶に胸が痛んでいるあなたの上司
- 黄昏各位
Charisma.com(カリスマドットコム)
普段は雑貨メーカーの事務をしているいつか(MC)と、普段は精密機器メーカーの事務をしているゴンチ(DJ)による、2011年に結成された女性2人組エレクトロラップユニット。YouTubeに投稿した動画がきっかけとなり、卓越したラップスキルと毒気の強いリリックで話題を呼ぶ。2013年7月に初の音源となるミニアルバム「アイアイシンドローム」をリリースすると、同作は「iTunes BEST OF 2013」に選出され、また「CDショップ大賞2014」の関東ブロック賞を受賞。LOUIS VUITTON主催の特別展のレセプションパーティに唯一の日本人アーティストとしてホログラムで出演したり、PARCOのバレンタインキャンペーンのメインビジュアルに起用されたりと幅広い活動を展開する。2015年2月には、映画「死んだ目をした少年」の主題歌として書き下ろした「とんがりヤング」を配信リリース。同年7月にワーナーミュージックよりメジャーデビューし、OLをテーマにしたミニアルバム「OLest」を発表した。
おかざき真里(オカザキマリ)
6月15日長野県生まれ。高校在学中より「ファンロード」にイラストやマンガを投稿。圧倒的な画力でアマチュアでありながらファンが付くほどの人気を得た。多摩美術大学を卒業したのち、広告代理店の博報堂に入社。デザイナー、CMプランナーとしてキャリアを積みながら1994年に「ぶ~け」にて「バスルーム寓話」でデビュー。寡作ながら印象的な短編作品を多く発表した。1997年、オカザキマリ名義で歌人の枡野浩一とコラボレーションした「てのりくじら」「ドレミふぁんくしょんドロップ」(ともに実業之日本社)を刊行。2000年、結婚を機に博報堂を退職し、「ビジネスジャンプ」に一色伸幸原作で「彼女が死んじゃった。」を連載。2004年にテレビドラマ化もされ人気を集めた。その他の代表作に広告代理店での経験を基に描いたラブストーリー「サプリ」がある。こちらも2006年に伊東美咲、亀梨和也主演でテレビドラマ化もされている。2007年には「渋谷区円山町」が榮倉奈々、EXILE MAKIDAIこと眞木大輔の主演で映画化。2010年から2014年まで、病院での医療事務として働きつつネイルサロンを経営する女性を主人公にした「&―アンド―」を「フィール・ヤング」で描き、現在は最澄と空海の生き様をマンガにした「阿・吽」を「月刊!スピリッツ」にて連載している。